言葉がキャッチャーな人たち2021

To My Mother

日夜ネット世間に現れるクリエイティブな日本語を鑑賞するシリーズ、今回のテーマは「キャッチャー」です。

はっきり言って、デイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがる人のために、その手の話をする気満々なのです。

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報知新聞社 阿部慎之助(読売ジャイアンツ) 2020年 カレンダー

キャッチャーがどこで生まれたか?

ある日こんなツイートが目に止まって読みました。

J-POPが新聞を殺した - 森の掟
この20年で新聞の発行部数は3分の2になった。いろんな要因があるなかで、主犯格はJ-POPだと思う。J-POPが発するメッセージの問題についてちゃんと考えてみたい。

J-POPが新聞を殺した – 森の掟(2021/04/04付)

目を引いたタイトルは落語のまくらみたいなもので、趣旨は「みんな紙の新聞読もうよ」ぐらいに理解しました。

それはそれとして、日本語公安警察(私のことです)がマークしたのはこの部分。

だけど、あまりにも言葉としてキャッチャーすぎるために、

言葉としてキャッチャーすぎる?

ただしこのケースは変換ミスだったようです。同じアカウントを探すと、つまらない用例もありました。

華麗にスルーされたキャッチャー

記事URLをシェアしているツイートのうち、この前後を引用しているものをいくつか見ました。一例です。

ここのくだりをピックアップしたツイートはどれも、私が読み取る限りみんな「なるほどそうだ」「まったくだ」と我が意を得たり的ニュアンスでした。キャッチャー完全スルー。

この一方で、下の記述に対しては

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「稲葉浩志」と複数ツッコミが入っていたのとは好対照です。

おー、みんな言葉がキャッチャーでいいんだ~。と感慨を覚えたのでした。

要約:Executive Summary

  1. ネット世間には、言葉がキャッチャーな人たちがいます。
  2. 変換ミスかもしれませんし、本当にキャッチャーかもしれません。
  3. なんでキャッチャーかというと、語彙が飽和してしまって、キャッチーを受け入れる余力が残されていないのだと考えます。
  4. 人の能力は有限です。語彙力もまた有限です。

キャッチャーの誕生

キャッチャーのことは2009年のQA掲示板に載っていました。遅くとも2000年代後半にはキャッチされていたと言えます。

「ポップでキャッチャーな」のキャッチャーの意味を教えてください
最近」「ポップでキャッチャーな曲」等と聞いたり、読んだりする事があります。ポップはなんとなく分かるのですが、キャッチャーの意味が分かりません。どういった感じのことでしょうか?教えてください。よろし... - その他(音楽・ダンス・舞台芸能)...

「ポップでキャッチャーな」のキャッチャーの意味を教えてください|教えて!goo(2009/01/03付)

余談ですが、Google Docsを使っていると「キャッチャー」のところに修正候補が出てきました。

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今どきはこんな校正支援までしてくれるんですね。

チャー?チー?

2010年付の質問からです。

キャッチーなメロディー?キャッチャーなメロディー? – チャーとチーってどっちが正しいんですか?|Yahoo!知恵袋(2010/09/06付)

今日「この曲すごくキャッチャーだよ」っていったら「野球かよ!それを言うならキャッチーだろ」と言われました。

そりゃ言われますね。ついていた回答も、想像の範囲どおりの内容でした。

そこからの「質問者からのお礼コメント」欄で

そうでしかた^^
5年間ずっと勘違いしてました。

と、さらにひとボケ加える、時代を先取りしたテクニックもあったり。いろいろ先駆的な書き込みでした。

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ちゃ~

キャッチャーの半信半疑を楽しむ

キャッチャーを味わうアカウントもありました。

いいですね。ただ、「誤字」と安易にジャッジするのはどうかなと思います。

たしかにスマホの予測変換なら間違ってキャッチャーを選ぶこともあるでしょうし、

みたいに自分で返信を入れていたら、変換ミスによる誤字だったのはわかります。

けれどいろいろ見ていると、どうもミスばかりでもないような感触があるのです。

たとえばこちらのキャッチャーは、

「出塁率」比喩からの流れを意識したものにも見えますし、

上の用例の場合、キャッチャーのまま文意も通じます。「読者を捕まえるもの」の意味に使ってるようにも読めるからです。

さらには

みたいに、キャッチャーだけを使っていたアカウントだと、正直よくわからないんですよね。

ほかにも、botアカウントがこんなキャッチャーも発信していて、

出典探したら、本当にキャッチャーだったりして。(強調引用者)

-先ほどアルバムを作る際楽曲のストックをしないとおっしゃっていましたが、capsule名義ではなくても他のプロデュース作品においてもそのようなスタンスなんでしょうか?

中田「そうですね。ほんと、基本的にストックを持たないんですよね。(略)プロデュースすることになったアーティストを見て、“今、このアーティストにとってどんな作品がいいかな?”というところから始めようと思うと、ストックからっていう風にはならないと思うし。ただ単にキャッチャーでポップ、そんで派手、みたいな曲を提供しようとするならそれで出来るのかもしれないけれど、やっぱり、聴く人にとって今面白いと思ってもらえることをやりたいから。」

出典:中田ヤスタカ(capsule) Interview part1|HMV&BOOKS onlineニュース(2007/12/05付)

こういった向きには、たとえば村上春樹さんが翻訳したサリンジャーのベストセラー小説も、キャッチャーな作品なのかもしれませんね。キャッチャーだけに。

つづく

2021年1-3月版・ポップでキャッチャーなタイムライン【Tweetまとめ】
Twitter世間には「人目をひくさま。印象的で記憶に残りやすいさま。」(広辞苑 第七版)を、「キャッチャー」と書く人がいます。 2021年1月から3月までのツイートから、ポップでキャッチャーなものを集めてみました。

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