こんにちは。
出典マニアが、ひどい曲解野郎に成り下がる記事です。
要約:Executive Summary
いろんなところで話題に上るテレビ番組の視聴率。しかし、こんな「闇」がありました。
0)基礎知識
まずはこれをふまえておきます。
テレビ番組の視聴率のデータは、株式会社ビデオリサーチ(以下、VRの略表記を併用します)が調査集計し、契約先の関係各企業へと提供しているものです。
よって、われわれがふだん見聞きしている視聴率データの「出典」をたどると、すべて「ビデオリサーチ調べ」に帰着します。
現代日本において統計的に信頼に足る「視聴率データ」は、その1種類しかありません。
1)視聴率データは「見るだけ」?
この視聴率データについて、どうやらVRは
「一般人が使うな。発表されたものを見るだけにしろ」
というスタンスでいるようです。
Webサイトで公表されていた視聴率データの転載に関して、問い合わせ窓口の同社「コーポレートコミュニケーション室」に照会してみた結果からの理解です。
2)回答の要旨 ―(株)ビデオリサーチ・コーポレートコミュニケーション室
回答をいただいた内容から要旨をまとめました。文責は当方にあります。
- 自社のWebサイトで公表している視聴率データの転載・加工は承諾していない。見るだけにしてほしい。
- そもそもテレビ視聴率データは、契約を結んだ法人に対して提供しているものであり、個人は提供対象ではない。
- また、契約先の法人に対しても、提供したデータの転載は原則として認めていない。転載する際にはビデオリサーチの承諾が必要である。
- ただし広報の目的で、提供先(テレビ・新聞社等のマスコミ)に視聴率の発表を依頼するケースもある。
- 自社Webサイトに載せている視聴率データも、広報の意味で公開している。
- くり返すと、ビデオリサーチにとって個人は契約相手ではなく、Webサイトで公表しているデータの転載・加工についても承諾していない。
とのことでした。
3)驚いた。
驚きました。モノクロ時代の考え方です。
とんだ闇社会です。
ヘンなの。
ここがヘン
公表しているデータを「パクるな」ならわかります。
しかし、「使うな」はヘンです。
パート1.「視聴率データの転載」問い合わせに至るまで
問い合わせに至るまでの経緯を順を追って書きます。
「昼間自宅で、パソコンを使って書き物をしていた」というところがスタートです。
単に視聴率まわりにとどまらず、放送業界・新聞業界のいろいろざわつくポイントも、一緒にしれっと記します。
でもって、ざわついた数だけ「カイジ」っぽく各ヘッダ要素に「ざわ‥」を連ねていきます。
逆境無頼カイジ オリジナル・サウンドトラック(2008)
では、さっそく冒頭から放り込みます。
1) ざわ‥ ざわ‥
USTREAMのライブストリーミングで、「時事芸人」プチ鹿島さんが出演されているYBS山梨放送のラジオ「火曜キックス」を聴いていました。
サッカーワールドカップ開催に乗っかっての「にわか通ぶれるフレーズ」の特集が面白そうだったからです。
※画像は、YBS山梨放送「火曜キックス」ライブストリーミング|ustream.tv より
- ドイツはいい準備をしてくる(してきた)
- 遠藤、よく見えてるね
が気に入っています。
2) ざわ‥ ざわ‥
ラジオ放送のなかで、鹿島さんがスポーツ紙の記事に触れていました。こちらです。
ザック日本は紅白に負ける!?意外な視聴率|nikkansports.com(2014/06/17付)
この記事の文面から取って話されていたのは、だいたい次のあたりでした。
サッカーW杯1次リーグ、日本対コートジボワール(NHK総合、午前9時~正午)の平均視聴率は、関東地区46・6%、関西地区45・0%(いずれも後半)だったことが16日、ビデオリサーチの調べで分かった。
W杯中継でこれまでの平均視聴率の最高は、02年日韓共催大会での日本対ロシアの、66・1%。
これまで日本がサッカーW杯に出場した過去4大会の年は、W杯日本戦がテレビ番組年間視聴率1位を獲得してきた。
W杯サッカー日本戦がNHK紅白歌合戦に初めて劣り、年間視聴率1位から陥落する可能性も出てきた。
面白い切り口だなと思い、出典マニアは出典を確かめておきたくなりました。
3)
データは揃っているかしらと、過去のワールドカップ日本戦中継の視聴率データを求めてビデオリサーチのサイトを参照すると、ありました。
過去の視聴率データ > FIFAワールドカップTM >
1998年フランス大会|2002年日韓大会|2006年ドイツ大会|2010年南アフリカ大会|2014年ブラジル大会
4)
「時系列に整理して、いろいろ対比させて見せたら面白くなるかも」と思いました。
5) ざわ‥
ただ、ページには赤字で【禁】無断転載 と書かれ、※転載についてのリンクがつけてあります。
リンク先をのぞくと、
視聴率データをはじめあらゆる当ホームページのデータを 株式会社ビデオリサーチの承諾無く、コピー・加工することを禁止します。
雑誌・新聞等にデータを転載される場合は必ず下記までご相談下さい。
転載に関するお問い合わせ
株式会社 ビデオリサーチ
コーポレートコミュニケーション室
出典:転載について|ビデオリサーチ
http://www.videor.co.jp/reprint.htm
となっていました。
6)
記載されていた直通の番号に問い合わせることにしました。
集計結果:5ざわ‥
ここまでのざわ‥を集計しておきましょう。
合計で、5ざわ‥でした。
あるいは、5ざわちんでも可です。単位としてほぼ等価です。
ざわちん Make Magic(2014)
同じくざわざわきます。
ブログ企画に関して補足説明
僕の企画したプランは、「データの加工」という形での「著作物の改変」です。
しかし加工しようとする対象が、誰でも入手できる公開データですから、法令および出典マニアの仕事の流儀に則って使用する範囲において、著作権者の承諾を得る必要はないと考えられます。
ただ、コンプライアンス面のリスクを低減させておく目的で、承諾を得ておくことも有用です。そうすれば、加工データの公開後に関係各所ともめるケースも生じにくいでしょう。
というところで、問い合わせ窓口に照会したのは、「安全サイドに倒す」形でリスクをつぶしておく趣旨がもっぱらでした。あとは転載に関するポリシーも聞いておきたかったのもあります。
パート2.出典マニア、ビデオリサーチに質問【補完記録】
冒頭の要旨を補完する格好で、出典マニアとVRの窓口担当者とのやり取りを記しておきます。
一問一答形式の記述で進めます。同じく文責は当方にあります。
以下、問→答 のくり返しです。
一問一答:視聴率データの転載について
Q1)御社がWebサイトの過去の視聴率データで公開している歴代の「サッカーワールドカップ日本戦の視聴率」について、時系列の推移を整理して自分のブログで紹介したい。可能か?
A1)「転載は遠慮願っている」
Q2)データの転載(そのまま掲載)でなく、もっとわかりやすく整理して示す形だが?
A2)「個人には承諾できない」
Q3)それはなぜ?
A3)「どこまで拡散されるかが追い切れない。拡散の過程でデータが間違ったりとか、管理責任が負えない」
Q4)ブログ記事で使用したデータについて、
データ出所:2014年ブラジル大会(ビデオリサーチ)
という具合に、出典を明示しても承諾をしないということか?
A4)「視聴率データの転載・引用は承諾していないというのが原則」
Q5)契約している法人の場合でも、転載は承諾しないのか?
A5-1)「同じく、視聴率データの転載は原則として承諾していない」
A5-2)「ただし、企業広報の目的で承諾するケースや、さらにはVRの側からメディアに掲載を依頼するケースはある」
Q6)自社のWebサイトで視聴率データを公開しているのは?
A6)「広報の意味である」
Q7)法人が視聴率データを転載する場合、その都度VRの承諾を得るのか?
A7)「個別に手続きする場合も、契約時に定める場合もある」
Q8-1)ならば具体的に尋ねるが、今日(6/17)付の日刊スポーツのWeb記事のなかでVRのデータが使われているのをどう理解すればいいのか?
A8-1)「日刊スポーツ新聞社はデータ提供契約先である」
Q8-2)つまり、日刊スポーツが“この”記事に視聴率データを“転載”するにあたり、VRとの承諾手続きを取ったわけではないと受け取っていいか?
A8-2)「直接顔を合わせて付き合っている関係であり、個別の承諾は取っていない」
ざわ‥ ざわ‥ざわ‥
もうざわざわきました。
まとめ:課題は「個の力」
もろもろ答えていただきましたが、回答内容を一点に集約すると、
- 個人は、公開しているものを見るだけにしてほしい
という話でした。
スペースができている
しかし答えていただいた担当の方が、遠慮願いたいとする文脈で「転載」と一緒に「引用」まで対象に入れてきたのを、出典マニアは聞き逃しませんでした。
ああ、この人「引用」の意味知らないんだと。
というのも、いわゆる「正当な引用」は、法令上認められているからです。法的根拠として、著作権法(law.e-gov.go.jp)から引用に関する当該の条文を引用します。※下線は引用者
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
公表された著作物は、合法的に引用できますから。どうですかお客さん。
ある意味「遠藤、よく見えてるね」
しかしそこで攻めには転じず、いったんスルーと判断して引き下がっておきました。
ヤットさん並みに、見えてます。
次回予告?:いい準備をして臨む
近いうちに、合法と考えられるマックスのラインまで中盤を押し上げ、「個の力」で仕掛けてみます。
そこまでにいい準備をしておきます。
つづくかつづかないかは、あなた次第です(たぶん)。
ご静聴ありがとうございました。
コメント
通りかかったので一言だけ。
創造性のないただのデータベースは、著作物とはなりません。
著作権法の規定でもそうなっていますし、過去の判例でも創造性のないデータは著作権法の保護の対象にはならないことを明らかにしています。
視聴率のごときただのデータも、著作権の対象とはなりません。
それでも、データベースがなお、民法などによって法的保護の対象となることはありますが(709条)、過去の判例では、商品価値の低い、古いデータなどは、その要保護性が否定されています。
VRは、自社の利益を守るため、法律で禁止されていない行為についても、控えるよう求めるかも知れませんが、必ずしも法的根拠があるとはかぎりません。
データベースといえども、守られるべき利益は守られるべきですが、別にVRが許可しないからと言って、個人がそのHP等においてVRのデータベースを全く使えないというわけではありません。
ご教示ありがとうございます。
今回VRには、根拠のあることをお願いしてほしかったです。