今年の新語2022「ではない」8選【選評】

三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」 に便乗して、今年の新語2022「ではない」8語を選びました。

ラインナップは次のとおりです。

  1. 感じ
  2. 日和る
  3. 芯を食う
  4. 追い
  5. すぎる
  6. 悪目立ち
  7. 切り抜き
  8. 散らかす

どれも2021年末改訂の『三省堂国語辞典』第8版(以下、『三国8』)に入っています。すなわち、「今後の辞書に採録されてもおかしくない」(「今年の新語」とは? )段階を過ぎてしまったワードたちです。

これら「ではない」たちは、「選べなかった今年の新語2022」とも言えます。

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以下、個々の選評を述べてまいります。「今年の新語」として生を享けられなかったワードたちの供養も兼ねています。

大賞「感じ」

こういう「感じ」を、オフラインでめちゃくちゃ聞きました。ここ1,2年で『試験に出る英単語』(古いな)並みに、「弊社の会話に出る日本語」の地位を確立してきた印象があります。

『三国8』には、「感じ」の⑤に

発言をぼかして言うことば。「もう行く―ですか〔=行きますか〕」

と加わっていました。素晴らしい。敵ながらあっぱれ!(敵ではない)

「感じ」の来歴は未調査ですが、ショップ接客用語から育ってきたんですかね。「今日は見るだけの感じですか?」みたいな。

第2位「日和る」

4月1日に成年年齢が18歳に引き下げとなりまして、前後の時期に政府広報動画をよく見かけました。

政府広報×東京リベンジャーズ「成年年齢引下げ」キャンペーンページについて | 政府広報オンライン
成年年齢が2022年4月から20歳から18歳に引き下げられました。成年になると何が変わるのか、新成人が注意しなければならないことなどご紹介します。

成年年齢の引下げ TVCM「新成人たちよ、未来をつくれ。」篇(30秒)|政府インターネットテレビ(2022/01/07付)

今年の新語警察が引っかかったのは、このくだり。

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大人になんの

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ひよってるやついる?

これ、私の知らない「日和る」でした。学生運動あがり(ウソです)には、結局は長いものに巻かれる的な末路が「日和る」なので。

調べてみるとフィーチャーされているアニメ「東京リベンジャーズ」にもあるセリフらしいんですが。

私の知らなかった「日和る」については、2009年時点でYahoo!知恵袋に質問されていて、いちおうの答えも出ていました。

「ヒヨった」ってどういう意味ですか?|Yahoo!知恵袋(2009/03/27付)

そこからの全く勝手な想像ですけれど、チキンとひよこの連想ゲームもあったのでしょうか。チキン=弱虫、チキる=おじけづく、なので。

偶然にも、若者言葉が旧来のワードをうまいことオーバーライドした事例と言えそうです。

『三国8』で「日和る」を引いたら

②びびる。「人が多くて―」〔一九九〇年代後半からの用法〕

と、既にこの意味が載っていて、もっとびびりました。

さて、feat. 東京リベンジャーズ動画の「日和る」は解決しましたが、続く「いねえよな?」にはモヤついたままです。なんでしょうねこの、うっすら同調を強いる気持ち悪さ。けれどもそういう方面の議論はネット上にはあまり見あたりませんでした。

いまの人はいまの人なりの窮屈さを抱えているのだなと、雑駁な感想です。

第3位「芯を食う」

前半の記述精度に疑問符の付くツイートを記念して第3位です。

疑問符が付いたのは、「お笑い芸人が使って普及、定着」「野球で」の2点です。こちらのツイートがほぼ代弁してくれていました。

私自身の「芯を食う」初認知は、水曜日のダウンタウンの「出産の痛み 未だ芯食った喩え出ていない説」(2014/04/23 OA)でした。ある意味「ニアミス」ですが、お笑い芸人が使った例ではありません。

目下の見解は、先掲のツイート主と同様に「芯を食う、ゴルフ界から波及した説」です。野球業界、テレビ業界のどちらも、ゴルフ業界と隣り合っていると言えますし。

ともあれ、『三国8』に「芯を食う」への言及が加わったのは事実です。なので今年の新語「ではない」です。

由来に関する調査データは自説不利です。ネット検索で得られた最も古い用例は、野球業界のものでした。

ふだんのバッティングのときはボテボテしか打てなくても、バントのときは、なぜかシンを食っちゃったりする。

江本孟紀『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(1982)

『三国8』の「芯を食う」も、バットの芯に関する説明に続いて出てきてました。野球由来と見ているのでしょうか。

けれど「野球由来」と結論づけるには、違和感が残ります。なぜなら、ワードの流通量と調和していないからです。野球界発祥ならもっと野球での用例がほしいのに、ゴルフより全然少ないし。

80年代初期までのゴルフ本をあさって(どこで?)芯を食った用法を見つけないと。

第4位「追い」

ある日嫁とぼーっとテレビを見ていると、グルメコーナーで「追いスイーツ」と言ってました。

嫁が「この追いナントカって今年の新語にならない?」と聞いてきたので、第4位です。

既に『三国8』に

調味料などを、あとからさらに加えること。

とする「追い」がありますので、「ではない」でした。にしてもこの「追い」、英語で言えば「some more なんとか」ぐらいのニュアンスを表せる、使い勝手のいいワードになってきた感があります。

私自身の知る料理界最古の「追い」である、ミツカンの「追いがつおつゆ」を調べてみると、ブランド誕生は1992年でした(ロングセラー商品+おすすめレシピ による)。

ちなみに「追い鰹」は『三国』第七版にもありました。それより前は知らん。

第5位「すぎる」

「!」マークの豆知識も付いた詳細な解説が『三国8』に載っていますので「ではない」です。

世間のいろんな「過ぎる」にフォーカスした、なるみ・岡村の過ぎるTV(朝日放送テレビ)の放送開始も、2013年10月のことでした。

第6位「悪目立ち」

最近よく聞くなと『三国8』を引いたらもうありました。即却下となったので、第6位です。

Twitterで用例検索をしていると、「悪目立ち」が忌むべき事態としてとらえられていることを強く感じます。これもまた、いまの人なりの窮屈さを感じるワードでもあります。

第7位「切り抜き」

『三国8』では、切り抜きの用例に「動画の―」が加わりました。

日本語世界のペーパーレス進展を記念して、第7位です。

第8位「散らかす」

1年ほど前に、篤志家諸兄のご協力のもと、2015-2021年の「じゃないほうの新語」を選定したことがあります。

辞書沼渋滞マシマシ!「じゃないほう」の新語2015-2021【選評】
2015~2021年にふさわしいリアルガチ度の高い新語を選び直す。名づけて「新語補完計画」、より平たく言えば「究極の後出しじゃんけん」によって選出したトップ10がこちらです。

この際、新語性が不十分だったために選からもれたのが「散らかす」でした。

『三国8』の「散らかす」には、大区分の「二」として

〔俗・方〕さんざんに…する。「ほめ―・笑い―」

とする解説が加わりました。行き届いてますね。

『三国8』は、改訂での追記を含めた「散らかす」の解説が全部で5行なのに対し、新規項目「はげ散らかす」にそれを上回る6行を費やしているところが好きです。

そんなところです。

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