「コンテンツ内容」と「SEO対策」からの日本語論

こんにちは。

はじめに

この記事で進めるのはWebサイトの構築や運営の話ではなく、日本語の話です。

要約:Executive Summary

「コンテンツ内容」と「SEO対策」は、どちらも頭の悪い日本語です。重ねなくていいものを重ねているからです。

しかしよくよく検討してみると、日本語が外来語を受け入れる際の伝統に、極めて忠実に則っていることがわかります。日本語の中で生きる者として、その点が愛らしくも思えます。

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エキセントリックな重言

「コンテンツ内容」と「SEO対策」は、どちらも重言(重ね言葉・二重表現)です。

「コンテンツ」と「内容」、「SEO」と「対策」同士、それぞれ(部分的に)意味が重複しています。

いずれも「エキセントリック少年ボウイ」(1997)の「少年ボウイ」と同じつくりです。

エキセントリックな重言です。

重言であることの確認

両者のエキセントリックな重言ぶりを確認しておきましょう。

コンテンツ内容

コンテンツ(contents)とは内容・中身を意味する英単語です。

たとえば、英語で「カバンの中身を見せてください」というとき、contentsを使って

Could you show me the contents of your bag?

ぐらいに言えます。カバンの中身もコンテンツのうちです。

余録:名詞の数という英語の厄介な概念

もうひとつコンテンツには厄介な話があります。それはカナ書きの「コンテンツ」を英語にすると、だいたいが単数のthe contentになることです。

そうなる理由を簡単に言えば、日本語でいう「コンテンツ」は、たいていがそのままでは数えられないからです。これもまた考察を深めるに値する事柄ですが、ここではその事実を指摘するにとどめておきます。

SEO対策

SEOとは

Search 検索
Engine エンジン
Optimization 最適化

の頭文字を取った略語です。

ですからSEOというのは、個別具体的なもろもろの対策・施策を、全部ひっくるめて総称した言葉にほかなりません。

お利口ではない

「コンテンツ内容」も「SEO対策」も、あまりお利口な言い方ではありません。一部で意味がかぶっています。本当なら「コンテンツ」「SEO」だけで十分です。漢字の付け足しはいりません。

だが愛らしい

ですが日本語の伝統に照らすと、両者は極めて忠実に、その伝統に則ってこしらえられた言葉だということがわかります。語句としては新しいのに、そこは全然新しくありません。愛らしくさえ思えてきます。

受け入れの伝統

どんな伝統かというと、外来語を受け入れるにあたっての、こういう伝統です。

『翻訳語成立事情』(柳父章, 1982)から引用します。※下線は引用者

私たちの国は、一貫して翻訳受け入れ国であった。翻訳されるべき先進文明のことばには、必ず「穏[おだやか]なる日本語」で表現できない意味がある。重要なことばほどそうである。(p.36)

…長い間の私たちの伝統で、むずかしそうな漢字には、よくは分からないが、何か重要な意味があるのだ、と読者の側でもまた受け取ってくれるのである。(p.36)

「これが日本語だ!」100選に必ずやランクインするであろう、重要な指摘です。

その伝統が、むずかしそうな「漢字」に対してのみならず、コンテンツやSEOといった「横文字」にも拡張され適用されています。

見るとよくは分からないが、何だか重要な意味がありそうに思います。STAP細胞はあります(たぶんウソ)。

カセット効果

これを柳父さんは「カセット効果」と名づけています。

カセット cassette とは小さな宝石箱のことで、中味が何かは分からなくても、人を魅惑し、惹きつけるものである。(p.37)

「社会」も「個人」も、かつてこの「カセット効果」をもつことばであったし、程度の差こそあれ、今日の私たちにとってもそうだ、と私は考えている。(p.37)

そして「カセット効果」もまた、両者に対して同じく発揮されていると言えるのではないでしょうか。

「コンテンツ」「SEO」という名のカセット(入れ物)が作られています。

表音文字ゆえの合わせ技か

ただし、カタカナやアルファベットで表される「横文字ことば」に対し、漢字と同じように「よくは分からないが、何か重要な意味があるのだ」と思っても、それが表意文字ではないために、その意味を想像することは漢字と比べものにならないほど困難です。

そこでどうするか。

その答えとして、「コンテンツ内容」「SEO対策」というように、まだわかりよい漢字熟語と並べ置かれている結果となっているのではなかろうか。と、そのように考えています。

ちょうど、「少年ボウイ」「犬ドッグ」「鳥バード」「エテモンキー」の例と同じです。

カッティングエッジな方面へおねがい

「コンテンツ内容」「SEO対策」とは、ざっくりそんな来歴を持つ言葉であるわけです。

IT業界の先端で日夜時代を切り拓いているような方面では、「コンテンツ内容」「SEO対策」が頭悪くてアホっぽいと思われる向きもあるやもしれません。

ですが、そういう事情がありますんで、どうか許してやってください。

こちらからは以上です。

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