「1・17」を読むとき「てん」を付けないのが「美しい日本」―昭和平成 日付事件史から

こんにちは。

震災の日を前に、マイルールを整理しました。

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※画像は、1.17夕刻黙祷|YouTube(2008/01/17付)より

この記事で言いたいこと

3つあります。

「1・17」を読むとき「てん」を付けるか問題について

「1・17」を読むときに、あいだに「・(てん)」を付けて読む人と読まない人がいます。

僕は読まない方が好きです。

現在、もしかすると「付けて読む」が多数派かもしれませんが、付けるとなんか、プロレスの興行か何かに聞こえます。「1・17後楽園大会」みたいなやつです。

昭和からの伝統を考えれば、付けないのが正統と思うのです。

日付の表記に「・」が付くのはなぜか

思うに、表記での「・」の役割は、それが日付であるとわかりやすくすることです。読まずとも日付とわかるのなら、読まなくていいと思います。

宣言:日付の中の「・」の読み方について

よって、次のようにマイルールを定めます

  • 原則として読まない
  • ただし、月日の切れ目がわかりにくい「mm・d」のパターンだけは「・」を「てん」と読む
    「10・1」なら「じってんいち」

Part 1:「ちょっと待って」へ至るまで

以下、その事情説明です。

「1・17」の例から、日付が日付だけの意味でないとき、かかる日付の表記とその読み方について考えていきます。

きっかけ

RSSを見ているとこんなヘッドラインに目が留まりました。

宝塚プラス:スミレの1・17/1 私はここに残る 街も劇場も、ぐちゃぐちゃになった|mainichi.jp(2014/01/12付)

この見出しが「いってんいちなな」と言っているように「聞こえた」ので、確かめておくことにしました。

表記の用例はあった

「1・17」という表記そのものは、以前からありました。日本語コーパス少納言から、2001年の用例です。

阪神・淡路大震災からまる六年を迎える十七日に兵庫県が予定している「1・17ひょうごメモリアルウォーク」の詳細が九日、固まった。
(『神戸新聞』朝刊 2001/01/10付)

「読まないのが普通」感覚

けれども僕が「1・17」を読むときは、

「いちいちなな」

です。自身の生活圏に限りますが、大半の人もそうであったように記憶しています。

無意識に「読まないのが普通」の感覚でいました。

「・」を読む人

一方で僕は、「1・17」を「いってんいちなな」のように、月日の区切りに「てん」を付けて読む人を知っています。プロレスファンです。

「1・17後楽園大会」「1・17両国決戦」みたいなやつですね。
※ただしこの日の両国決戦は、たぶんプロレスじゃないです。

日付読み方あるある

「日付+煽り文句」=「イベント名称」形式での日付に、「てん」付きがち

雑な一般化ですが、「1・17後楽園大会」みたいに、日付の後ろに何か語句が続き、そのトータルでイベント名を表すパターンだと、「・」を読み飛ばさず「てん」と読むのが本式のようです。

前掲の用例にある「1・17ひょうごメモリアルウォーク」も、この形です。「日付+煽り文句」のイベント名称となっています。

《「てん」付きがち》な2例

だからなのでしょうか、次の2つの動画のいずれでも、「1・17」を「てん」付きで読んでいます。

2011年の例

【SUNTV NEWS】阪神淡路大震災から16年 兵庫県内各地で追悼行事 3|YouTube(2011/01/17付)

その後、人と防災未来センターの河田恵昭(かわたよしあき)センター長が、「震災の教­訓をもっと伝えよう」と「1.17ひょうご安全の日宣言」を朗読。

このニュース原稿(同ページより)の「1.17」の読み方が、「いってんいちなな」でした。(0:38あたり)

2013年の例

ひょうご安全の日のつどい「1.17のつどい」|YouTube・ひょうごチャンネル(2013/01/31付)

同じイベントの、今度は2013年の例です。

1・17は忘れない

という井戸敏三兵庫県知事(ひょうご安全の日推進県民会議議長)による主催者代表挨拶もまた、「いってんいちなな」です。(1:11あたり)

ちょっと待って

それで思ったのです。「バカにしないでよ」と。

いや、ウソです。

本当は「ちょっと待って」と。

(プレイバック)Part 2:昭和平成 日付事件史

なぜ「ちょっと待って」と思ったのでしょう。

つまり、なぜ僕は、日付の中の「・」を「てん」とわざわざ読んでいるのを奇異に感じているのでしょうか。

それは「1・17」なら「書いてあっても読まない」が、自分にとって普通の感覚だからです。

ならば、なぜそれが普通と感じるのか。そこを考えてみました。

昭和の二大「日付事件」(※当社調べ)の先例があったからです。

昭和の二大日付事件とは

山口百恵さん昭和53年の名曲《プレイバック Part 2》にのせて、ふり返っていきましょう。

五・一五(1932) 二・二六(1936)

すなわち、昭和7(1932)年の「五・一五事件」、そして昭和11(1936)年の「二・二六事件」です。

ここで問題にするのは、事件の表記とその読み方です。

表記はいろいろ

これらの事件を表記するパターンとして「・」の有り無しどちらもあります。また「事件」を付けるのが本式なのでしょうけれども、略して付けないこともあります。

想定しうるパターンをすべて示すと、こうなります。

    <漢数字>

  • 五・一五事件 五一五事件 五・一五 五一五
  • 二・二六事件 二二六事件 二・二六 二二六
    <アラビア数字>

  • 5・15事件 515事件 5・15 515
  • 2・26事件 226事件 2・26 226

用例の収集も集計もしていないので定量的なことは言えませんが、概ね、よく使われる順に並んでいるかなという気がします。

読み方はひとつ

しかし日付部分の読み方は、「・」の有無、「事件」の有無、漢数字/アラビア数字の別、いずれにもかかわらず同じです。

「ごいちご」「ににろく」です。

音に近づけて書くと「ごーいちご」「にぃにぃろく」です。

Wikipediaでも

Wikipedia の見出しでも、「五・一五事件」「二・二六事件」と、どちらも表記に「・」が付いていますが、本文中に書かれた読み方を見ると、

五・一五事件(ご-いち-ご じけん)は、

二・二六事件(にいにいろくじけん)は、

と、どちらも「てん」は含まれていません。

身の回りでも

僕の知る限り、この2つに「てん」を付けて読む人はいません。

受け継いだ平成の1・17(1995)

ですから、平成に入っての1・17(1995)も、昭和の例にならって「いちいちなな」と読んでいたのでした。

時報を聞く電話番号と同じであることは、問題ではありません。

パピ、プペポパと、平成のパピプペポは読んでいくわけです。

※ただし平成のパピプペポ(庄司智春)の登場までには、あと10年の時間が必要です。

9・11(2001)の衝撃

ところが平成も2ケタとなって久しく、21世紀に入ったその年、日付事件界をゆるがす一大事変が勃発します。

9・11テロ事件(2001)です。

海外で起こった事件であるにもかかわらず、その衝撃の大きさからでしょうか、「きゅうてんいちいち」と、この表記の「・」を「てん」と読む例が目立ちはじめました。

日付事件界にとっての9・11とは、日付の読み方に「てん」をぶっ込んできた「てんロリスト」にほかならないのす。

だじゃれかよ。

不幸な偶然:3・11(2011)

そして起こったのが、3・11(2011)です。

日付事件界からすれば、奇しくも9・11と日が同じであることで、衝撃が倍加しました。9・11から9年半の時を経て、てんロリスト2機目の旅客機がよりによって最も弱いところに突っ込んできたわけです。

そのためか「3・11」の読まれ方は、僕の観察では「さんてんいちいち」と「てん」付きが主流であり、「さんいちいち」のように「てん」を付けない人の方がかえって珍しいです。

1・17に逆流?

それが「1・17」の読み方にも逆流して影響を与えているように、僕には思えてなりません。

「・」が付いても「てん」と読まない

「五・一五」「二・二六」の昭和ツインタワーが築き上げたこの伝統が、平成のてんロリスト2機の突入により、いまや崩れ落ちようとしています。

これはいかんです。

これはなんとしても、失地回復を図らねばなりません。

おまけ:内閣総理大臣ものまね

(内閣総理大臣 所信表明)

日本は、1・17、3・11と未曾有の災害を経験し、被災地の復興もいまだ道半ばであります。

そして、バブル崩壊以来、20年以上もの間、日本の経済はデフレに苦しみ、国内では日付の「・」を「てん」と読む、てんロリストの危機に、さらされ続けてきました。

この危機に対し、もはや、手をこまぬいている時間はありません。

今こそ、われわれ日本国民は、「五・一五」「二・二六」の由緒正しい読み方にならい、戦前からの美しい伝統、美しい日本を、取り戻さなければなりません。

日本を、取り戻す。

「1・17」「3・11」の「・」を読まない日本を、取り戻す。

※登場する人物はフィクションです

まとめ:プロレスとテロリスト

日付のなかの「・」が「てん」と読まれるようになってきた要因は、僕の見立てではこの2つです。

プロレスとテロリスト

『ハチミツとクローバー』みたいに言うな。

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