日本語表現にみる「恋」と「愛」の物性の違い

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こんにちは。

物質的な表現に注目し、日本語話者が「恋」と「愛」をそれぞれどうとらえているかを探ります。

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共通点:基本的に液体

恋も愛も、基本的には液体のようです。

ともに、「溺れ」たり「流され」たりできることから、それがわかります。

特に愛の方は、続く動詞に、漢字にすると「さんずい」の付くものを多く接続できます。具体例は後述します。

相違点:コントロールできるかできないか

恋と愛との違いは、「コントロールの可否」に集約されそうです。コントロールできないのが恋、できるのが愛です。

語句のつながり(コロケーション)を観察することで、恋がコントロールできない理由と、恋と愛との違いが見えてきます。

考察:なぜ恋はコントロールできないか?

なぜ恋はコントロールできないか。その理由は、次のような恋の特性にあると考えられます。

特性1.自分の外部にある存在で、しかも自分より大きい

恋は自分の外部にある存在です。そもそも外部になければ、恋に「溺れる」ことはできません。

しかも、恋は自分よりも大きい存在でもあります。人は、海や川、プールあるいはお風呂で溺れることはできても、コップ一杯の水で溺れることは難しいです。

ここまでは「恋」「愛」とも共通する話でしたが、「恋に落ちる」という言い方から、外部にありしかも自分より大きいという恋の特性が、よりはっきりとわかります。

特性2.意志が介在しない―「恋に落ちる」

第2の特性は、恋には意志が介在しないことです。

「恋に落ちる」という言い方があります。「落ちる」というのは、自らの意志による行為ではありません。意志に反しているニュアンスすらあります。

川であれ海であれ恋であれ、自らの意志でそこへ入るのであれば、「飛び込む」という言い方になるはずです。

「恋に落ちる」を考える

端的に、落ちるのは「恋」であり、「愛」ではないことを確認しておきます。

「恋に落ちる」は、ごくありふれた表現です。

「愛に落ちる」は、ないとは言いませんが、「恋」ほど多用はされません。使う場合は、「不倫の愛に落ちる」のように「よくないとされる領域に踏み入る」文脈での用例が多いように思います。

「恋に落ちる」が「愛に落ちる」よりも多用されるのは、価値中立的であることと、何より「意志が介在しない」という恋の特性をよく反映しているゆえに思えます。

動詞「落ちる」における落下物体と場所との大小関係

「(物体)が(場所)に落ちる」というとき、両者の大小関係を不等式で表すと、

(物体)≦(場所)

という関係にあります。

説明のため(場所)を「顔」とし、「顔に落ちる」の例文を作ることにします。いろんなものを顔に落としてみましょう。

(物体)<(場所)パターン

  • 雨粒が顔に落ちる

自然です。

(物体)>(場所)パターン

  • 天井が顔に落ちる
  • 巨大隕石が顔に落ちる

どこか不自然です。

(物体)≒(場所)パターン

自然さが保てる両者の大小関係としては、

  • 猫が顔に落ちる
  • たらいが顔に落ちる

ぐらいが、ぎりぎりのラインと言えそうです。

小まとめ

つまり、人が「恋に落ちる」ことができるのは、恋が外部にあり、自分よりも大きいからです。

また、恋に「落ちる」としているのは、意志が介在していない(または、していると認めたくない)ためです。

特性3.人体に有害なレベルで高温

恋は人体に有害なレベルで高温です。

身を焦がされたり、焼かれたりします。ひどい場合は、身が溶けることもあります。

恋に長時間曝されることは危険だと言えます。

付記:コントロールできないゆえに、酔う

コントロールができないゆえに、恋には酔います。

お酒に酔う酔わないは、体質や依存の問題もあって一概に言えませんけれども、乗り物については、自動車にしても船にしても、自分で運転・操縦する場合は、酔いにくいです。

観察:愛はその反対。コントロールできる

愛は、一部で恋と共通する性質もありますが、「恋」の部分で述べたものと反対の特性を多く持ち合わせています。

簡単に言えば、恋と違ってコントロールできるのが愛です。

特性1.自分の内部にある

恋も愛も基本的には液体ですが、外部にある恋とは違い、愛は自分の内部にあります。

愛は「湧き」「注ぎ」「満たし」、「溢れ」させることができるからです。

特性2.扱う際に意志が介在する

「湧く」を除けば、愛を「注ぎ」「満たし」「溢れ」させるとき、そこには行為者の意志が介在すると言えます。

また、いずれも対象が存在する行為でもあります。対象の側から言えば、愛が注がれ、満たされ、溢れる。となります。

そして対象そのものについても、すべてのケースがそうとは限りませんが、自己の意志により決定できることが多そうです。

特性3.適温である

「熱い愛」というものも世の中にはありますが、一般に、愛を注がれ、愛に満たされ溢れる環境下にあっても、そのことで人体に害は出ません。むしろたいていの場合で有益です。

人が恋に包まれると、ホイル焼きのように身が焼け焦げそうですが、愛に包まれても、そうはなりません。

愛の温度は、人肌か、それより若干高い目程度なのだと思われます。

まとめ:恋と愛の特性の違い

まとめます。

恋と愛は、基本的にどちらも液体だが、次の点が違う。

コントロールできない。「落ちる」「酔う」

  1. 外部にあり、自らよりも大きい
  2. 意志が介在しない(できない)
  3. 人体に有害なレベルで高温

コントロールできる。「注ぐ」「満ちる」

  1. 自身の内部に存在する
  2. 意志的に扱える
  3. 適温
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