「新型コロナ渦」な人たち2020【Tweetまとめ+】

Twitterのタイムラインに、こんなツイートがやって来ました。

「コロナ渦」の早々の沈静化を願っております。――だそうです。

はじめて見るクリエイティブな日本語でした。その発想はなかったです。

旧型日本語の場合:禍(か)

別の文脈からですが、私のような守旧派を代弁するようなツイートがありました。

同感です。こういうときはふつう、というか私なら、災難を意味する「禍」(か)を使います。

「コロナ禍」(か)です。

保守的で面白みのない「コロナ禍」ではなく、コロナ「渦」という新しい日本語の存在が観察できました。

コロナウイルスよりも私にはこちらの新型の方がよほど興味深いので、調べてみました。

結論:「新型コロナ渦」いいじゃないか

先に結論を簡単に述べます。「コロナ渦」、いいんじゃないですか。ありです。

新型コロナにも役立つ、「渦」の基礎知識

「新型コロナ渦」を調べるにあたり、まずは「渦」の基本的な情報を共有します。

「渦」の読み方

「渦」の読みかた(訓読み)は「うず」です。音読みだと「か」です。たとえば「渦中の人」は「かちゅうのひと」と読みます。

「コロナ渦」には、「渦」を音読み・訓読みする両方のパターンがあるみたいです。すなわち、

  • 「禍」と同じく「コロナ」と読むらしきパターンと
  • 訓読みで「コロナうず」と読むらしきパターンです。

五七五の定型になったツイートから読みといてみましょう。

音の数から判断すれば、

この用例はコロナ「か」ですし、

こちらは「うず」と読ませたいようです。

亜種:コロナ鍋

少し違う角度からは

コロナなんとかという漢字が読めなければ、それもありです。

体操のオリンピック選手並みにひねりが利いた見間違え方に感服します。

「渦」の意味

「渦」は表意文字である漢字の1つです。「渦」という文字には、どんな意味があるのでしょうか。

こんなとき本当に助かるのは、白川静先生の『字統』です。

さっそく『字統』をひもときますと、「咼(か)」の部分について、次のように説明していました。

のところを見ますと

咼にくぼんだもの、めぐるものの意がある。水がうずをなしてめぐることを渦旋(略)という。

だそうです。

他の、ほにゃらら+「咼」たち

一方、については

咼は人の死骨に対して呪詛して祈る意の字で、禍はその声義を承ける字である。咼を含む古い字形には(略)もあり、みな残骨を用いる呪儀であろう。

としています。

ついでに他の「咼」を持つ字たちも挙げておきます。

の場合

咼は死者の残骨に対して祈る呪儀を示す字。

の場合

咼には円くして中央のくぼんだ形の意がある。

の場合

一般人はあまり言いませんが、わきの下のくぼんだところを「腋窩(えきか)」といいます。その窩です。

咼は死者の残骨の象に従う字である。(略)小さな穴やくぼみをいう。

以上を総合すると、白川先生は「咼」のパーツについて

  1. 死者の骨に行う呪術的儀式
  2. くぼんだ形。そのくぼみ

この別々の意味が統合されてきたというよりは、前者から後者の意味が分かれていったとの解釈を取っているようです。

「新型コロナ渦」のタイムライン:2020年1~3月

世間の動きともからめながら、「新型コロナ渦」の発生と流行の様子を、2020年冒頭から2か月半ばかりの範囲で記録しておきます。

2020年1月

日本国内で新型コロナウイルス関連の肺炎患者の第1例が確認されたのが、1月15日でした。

1月14日、(略)武漢市の滞在歴がある肺炎の患者が報告されました。(略)当該患者の検体を国立感染症研究所(村山庁舎)で検査したところ、昨日(1月15日)20時45分頃に新型コロナウイルス陽性の結果が得られました。新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生が国内で確認されたのは初めてです。

出典:新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(1例目)|厚生労働省(2020/01/16付)

この時点で「コロナ渦」はまだほとんど観測できず、Twitter世間に現れるのは下旬になってからです。少ない用例からいくつか。

ちょうどこの時期、コロナの名を冠したホテルからの、こんなツイートもバズっておりました。

2020年2月

2月に入った当初も、コロナ渦の発生はまだ散発的でした。

2月3日以降を、月曜日~日曜日の7日ずつで第x週に区切ります。

2月第1週(2/3~2/9):ダイヤモンド・プリンセスに脚光

横浜港に、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が到着したのが2月3日のことでした。

参考:横浜港に寄港したクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について|厚生労働省(2020/02/05付)

流行発信源であった中国の話題も残る中、このあたりから、国内のコロナ渦への懸念もいくらかは見て取れます。

2月第2週(2/10~2/16):COVID-19の命名

BBCニュースの記事によれば、新型ウイルスが引き起こす疾病について、WHOが「COVID-19」と命名したのが、2月11日のことでした。

新型ウイルスの病気、正式名称は「COVID-19」 WHOが命名 - BBCニュース
世界保健機関(WHO)は11日、中国を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を「COVID-19」に決定したと発表した。

出典:新型ウイルスの病気、正式名称は「COVID-19」 WHOが命名|BBCニュース(2020/02/12)

「COVID-19」というのは、厳密にはウイルスではなくて病気の名前なんですね。これは勉強になりました。

じゃあウイルスは何て呼ぶのかってことなんですが、同記事によると

一方、この新型ウイルス自体の名前は、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって「SARS-CoV-2」と名付けられている。

だそうで、リンク先

Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus: The species and its viruses – a statement of the Coronavirus Study Group|biorxiv.org(2020/02/11付)

を確認したら、

the CSG formally (略)designates it as severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2).

だいたいそんなことが書いてありました。

大河内清次「名前は付いている事が大切だ」
シン・ゴジラ(2016)シーン#128より

2月第3週(2/17~2/23):国内の流行スタート

2月17日といえば、厚生労働省が出している報道発表資料の「◆国民の皆様へのメッセージ」から

新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。

の文言が消えたので、よく記憶に残っています。ついこんなスライドまで作ってしまいました。

2020-02-19_2337

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について

流行を認めていない方(令和2年2月14日版):
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09531.html

「認めていないのをやめる」という回りくどい方法で流行を認めた方(令和2年2月17日版):
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09571.html

なので私の中では、この週から国内での流行スタートです。

2月21日(金)Webメディアに登場

こちらが、日本語のWebメディアから採集できた最初期の「新型コロナ渦」です。

「在宅勤務に切り替え」がごく一部にしか広がらない根本原因 新型コロナ渦でも「通勤地獄」は不変
「日本はのんびりしていますね。マスクをしている人は多いですが、普段通り通勤して。シンガポールとは緊張感が違います」新型コロナウイルスの感染が日本でも広がりを見せる中、2月中旬にシンガポールから一時帰…

2月第4週(2/24~3/1)

メディアで見覚えのあるアカウントからも「コロナ渦」の発信が観察できました。

同時期に一般人にもかなり広がってきていました。紹介は略します。日付指定して各自検索してみてください。

2月29日(土)東京マラソン開催前日

「一般参加なし」という形でしたが、3/1に東京マラソンが開催されました。その前日「コロナ渦での実施」とデイリースポーツが報じました。

2020年3月←今ココ

このあたりからは、恐らくは誰が判断しても「コロナ渦」の流行が明らかです。

3月第1週(3/2~3/8)

複数のメディアで「新型コロナ渦」記事が書かれます。

上の記事は、一般人アカウントにも多く言及されていました。

ほかにもネット検索結果から、

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アマ8冠・中垣龍汰朗と松本圭佑 B級合格!異例のプロテスト 新型コロナ渦/デイリースポーツ online
アマチュアボクシング8冠の中垣龍汰朗(20)と18年全日本選手権バンタム級準優勝の松本圭佑(20)=ともに大橋=が4日、横浜市内の所属ジムでB級プロテストを受験し、合格した。中垣はスーパーフライ級、松本はスーパーバンタム級で、ともに5月28...

アマ8冠・中垣龍汰朗と松本圭佑 B級合格!異例のプロテスト 新型コロナ渦|デイリースポーツオンライン(2020/03/04付)

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| 毎日新聞

マスク姿でも晴れやか 「忘れられない卒業式」 新型コロナ渦 時間短縮、在校生出席なく 山口・大殿中 /山口(会員限定有料記事)|毎日新聞(2020/03/08付)

といった新型コロナ渦記事が収集できました。

3月第2週(3/9~)

「コロナ渦」対「コロナ禍」on 3月9日(月)

目の子勘定ではありますが、Tweet検索結果からカウントした結果です。

  • 「コロナ渦」「コロナウイルス渦」は、日本時間3月9日0:00~24:00の24時間で、計56件ありました。
  • 一方「コロナ禍」「コロナウイルス禍」は、時間帯によるでしょうが、3月9日朝の90分間だけで同数の56件をカウントできました。

「コロナ渦」はここまで順調に勢力を伸ばしてきているとはいえ、それでも「コロナ禍」と比べると、推計で12~16倍の勢力差があります。比べてしまうと「コロナ渦」はまだまだ弱小です。

徹底机上討論!「コロナ渦」問題を考える

さて、

と思われてもいるように、「コロナ渦」という言葉は「コロナ禍」と表記されるべきなのでしょうか? 必ずしも私はそうは思いません。むしろ反対です。

なぜなら、「渦」って混乱とか不安とかに対しても比喩的に使いますし、

と、この用例はコロナ「渦」ですが、巻き込まれるのは、渦でも禍(わざわい)でも、どちらでも全然いいからです。

エレキのギターが「エレキギター」なのですから、コロナの渦が「コロナ渦」で何の支障がありましょう。

「コロナ」そもそも論

それに、そもそも論から考えてみても、コロナは「渦」で全然いいのです。これらのツイートが思い出させてくれました。

そうですこれがコロナです。

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Image by Danehrr22 from Pixabay

lexico.com>coronaによれば、コロナは、「花輪(リース)」や「王冠(クラウン)」を意味するラテン語が元といいます。

コロナ禍に負けるな!コロナ渦

実は、ここまでに紹介したいくつかの「コロナ渦」記事は、既にコロナ渦ではありません。

2/29付で東京マラソンの開催を報じたデイリースポーツの記事も、3/5付で松井一郎さんのコメントを報じた産経WESTの記事も、現在はどちらも「コロナ禍」になっています(3/11確認)。

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残念なことです。

為にするもの言いをすれば、既得権益層の「コロナ禍」勢力に乗っ取られてしまいました。もっと悪くいえば、記事の改ざんです。実につまらない。

一般人のみならずメディア関係者の皆さまも、コロナ禍からの圧力に負けず、コロナ渦を貫いていってほしいです。

当ブログはこれからも新型コロナ渦を応援します。

こちらからは以上です。

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