Twitterのタイムラインに、こんなツイートがやって来ました。
https://t.co/60gD1rwX4D
この抜粋記事じゃぁワシの真意が誤解ばかりやんかぁ♪( ´θ`)
ワシが言いたいのはプレーヤーの意見や立場、プロスポーツの意義をもっと反映して欲しかったということでっせ〜\(//∇//)\
当然私もコロナ渦の早々の沈静化を願っております。— 岩本 勉 (@gun18gun18) March 9, 2020
「コロナ渦」の早々の沈静化を願っております。――だそうです。
はじめて見るクリエイティブな日本語でした。その発想はなかったです。
旧型日本語の場合:禍(か)
別の文脈からですが、私のような守旧派を代弁するようなツイートがありました。
新型コロナうず?渦じゃなくて禍ではないの?
— 慈永祐士 (@jiei_yushi) March 8, 2020
同感です。こういうときはふつう、というか私なら、災難を意味する「禍」(か)を使います。
「コロナ禍」(か)です。
保守的で面白みのない「コロナ禍」ではなく、コロナ「渦」という新しい日本語の存在が観察できました。
コロナウイルスよりも私にはこちらの新型の方がよほど興味深いので、調べてみました。
結論:「新型コロナ渦」いいじゃないか
先に結論を簡単に述べます。「コロナ渦」、いいんじゃないですか。ありです。
新型コロナにも役立つ、「渦」の基礎知識
「新型コロナ渦」を調べるにあたり、まずは「渦」の基本的な情報を共有します。
「渦」の読み方
「渦」の読みかた(訓読み)は「うず」です。音読みだと「か」です。たとえば「渦中の人」は「かちゅうのひと」と読みます。
「コロナ渦」には、「渦」を音読み・訓読みする両方のパターンがあるみたいです。すなわち、
- 「禍」と同じく「コロナか」と読むらしきパターンと
- 訓読みで「コロナうず」と読むらしきパターンです。
五七五の定型になったツイートから読みといてみましょう。
音の数から判断すれば、
コロナ渦に赤子の笑ふ梅の花
— 砂布巾 (@9B55984666) March 8, 2020
この用例はコロナ「か」ですし、
大阪に行けば安全コロナ渦#川柳
— 鴨々川 (@iipdsdg6jsgfjxb) February 27, 2020
こちらは「うず」と読ませたいようです。
亜種:コロナ鍋
少し違う角度からは
コロナなんとかという漢字が読めなくてコロナ鍋とかコロナ渦みたいな感じで読み流している。調べるのも面倒なのでコロナ鍋。
— 灼熱計画 (@fun_run_san) March 6, 2020
コロナなんとかという漢字が読めなければ、それもありです。
コロナ渦………コロナ鍋って見間違えちゃったじゃん(;´Д`)
— あざみ (@hoyahhoo) March 8, 2020
体操のオリンピック選手並みにひねりが利いた見間違え方に感服します。
「渦」の意味
「渦」は表意文字である漢字の1つです。「渦」という文字には、どんな意味があるのでしょうか。
こんなとき本当に助かるのは、白川静先生の『字統』です。
さっそく『字統』をひもときますと、「咼(か)」の部分について、次のように説明していました。
渦のところを見ますと
咼にくぼんだもの、めぐるものの意がある。水がうずをなしてめぐることを渦旋(略)という。
だそうです。
他の、ほにゃらら+「咼」たち
一方、禍については
咼は人の死骨に対して呪詛して祈る意の字で、禍はその声義を承ける字である。咼を含む古い字形には(略)もあり、みな残骨を用いる呪儀であろう。
としています。
ついでに他の「咼」を持つ字たちも挙げておきます。
過の場合
咼は死者の残骨に対して祈る呪儀を示す字。
鍋の場合
咼には円くして中央のくぼんだ形の意がある。
窩の場合
一般人はあまり言いませんが、わきの下のくぼんだところを「腋窩(えきか)」といいます。その窩です。
咼は死者の残骨の象に従う字である。(略)小さな穴やくぼみをいう。
以上を総合すると、白川先生は「咼」のパーツについて
- 死者の骨に行う呪術的儀式
- くぼんだ形。そのくぼみ
この別々の意味が統合されてきたというよりは、前者から後者の意味が分かれていったとの解釈を取っているようです。
「新型コロナ渦」のタイムライン:2020年1~3月
世間の動きともからめながら、「新型コロナ渦」の発生と流行の様子を、2020年冒頭から2か月半ばかりの範囲で記録しておきます。
2020年1月
日本国内で新型コロナウイルス関連の肺炎患者の第1例が確認されたのが、1月15日でした。
1月14日、(略)武漢市の滞在歴がある肺炎の患者が報告されました。(略)当該患者の検体を国立感染症研究所(村山庁舎)で検査したところ、昨日(1月15日)20時45分頃に新型コロナウイルス陽性の結果が得られました。新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生が国内で確認されたのは初めてです。
出典:新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(1例目)|厚生労働省(2020/01/16付)
この時点で「コロナ渦」はまだほとんど観測できず、Twitter世間に現れるのは下旬になってからです。少ない用例からいくつか。
東電福島第一原発事故の放射線に起因する死者はゼロ
誰も死んでない武漢コロナウィルスは既に17人も死者出して確定している
同列にされて良いはずがない
福島県の風評被害を実害であるウィルス渦と同一視するのか?厳重に抗議する
今すぐ該当ツィートを削除しなさい— Hideta福島(被災地復興に一票) (@HidetaFukushima) January 23, 2020
コロナウイルス渦は収束が見えているから相場を叩いているとの見方も然り。みんな安く買いたいわけだよね。わかっているのはコロナ関連でどんぶらこは出来ないから逃げ足は早くね。
— 八丁堀。 (@8choubori) January 29, 2020
新型コロナウイルス渦に飲まれた湖北省の事情をより詳しく知るべく、いま湖北省の恐竜について調べている
— 安田峰俊|『もっとさいはての中国』好評発売中 (@YSD0118) January 31, 2020
昨日、自民のお姉ちゃんが「このコロナ渦に乗じて憲法改正や!」って絶叫してたよね。何でアイツらって皆目ん玉が濁っとるんやろ?(´Д`) #ss954
— ろひさまらむにく (@919154541270) January 31, 2020
ちょうどこの時期、コロナの名を冠したホテルからの、こんなツイートもバズっておりました。
コロナウイルスが憎い… pic.twitter.com/RceVIpFzZk
— 大阪コロナホテル【公式】 (@CORONAHOTELJP) January 27, 2020
2020年2月
2月に入った当初も、コロナ渦の発生はまだ散発的でした。
blockchain動向リサーチで、明日は飛行機✈️始発で大阪。
国際線ビルで始発待ち。コロナ渦?故にか、人少なくて快適 pic.twitter.com/UvdPzTKIK5— yatabekaeru (@yatabekaeru) January 31, 2020
今日見た動画で、コロナウィルス渦の現状をネットに公開した人のところへ逮捕しにやってきた機関の連中もこういう格好してたように見えたけど、武装もしてたのかもな。
— M・M (@cordu2020) February 2, 2020
2月3日以降を、月曜日~日曜日の7日ずつで第x週に区切ります。
2月第1週(2/3~2/9):ダイヤモンド・プリンセスに脚光
横浜港に、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が到着したのが2月3日のことでした。
参考:横浜港に寄港したクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について|厚生労働省(2020/02/05付)
流行発信源であった中国の話題も残る中、このあたりから、国内のコロナ渦への懸念もいくらかは見て取れます。
米山さんは医師でもいらっしゃるので今回の新種コロナウイルス渦で注目していますが、この半月、見込みを遥か覆す流行の展開です。コロナウイルスにとどまらず日本の防疫体制はこれでいいのでしょうか?
— 湯浅喜代司 (@kiyoshiuasa) February 3, 2020
この事件(新コロナウィルス渦)
中国共産党支配+ウイグル弾圧体制の
崩壊の序章
となっているのかも https://t.co/pHUgQ3BH89— ぽっとマン (@CastleKfc037aa) February 4, 2020
4年前の2月『今月いっぱいで一生会えなくなるかも』
昨年の2月『このまま一生会えなくなるかも』
それに比べれば今年の2月はまだマシ。
いつになるかは分からんがコロナ渦が去れば必ず会えるんだから。
ただ、卒業を控えているメンバーを推してるみなさんは不安とは思うが。— кคzยรค(かずさ) (@39Kazusa) February 4, 2020
昨日、横浜港から外海に出航していった新型コロナ渦に巻き込まれたダイヤモンドプリンセス。
持病持ちの乗客の薬が切れた、と言うニュースには他人事ではないな…と思ってしまえる— とうふう@増える兎達と白狐のフレンドシップ (@winter_fuchs) February 5, 2020
2月第2週(2/10~2/16):COVID-19の命名
BBCニュースの記事によれば、新型ウイルスが引き起こす疾病について、WHOが「COVID-19」と命名したのが、2月11日のことでした。
出典:新型ウイルスの病気、正式名称は「COVID-19」 WHOが命名|BBCニュース(2020/02/12)
「COVID-19」というのは、厳密にはウイルスではなくて病気の名前なんですね。これは勉強になりました。
じゃあウイルスは何て呼ぶのかってことなんですが、同記事によると
一方、この新型ウイルス自体の名前は、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって「SARS-CoV-2」と名付けられている。
だそうで、リンク先
Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus: The species and its viruses – a statement of the Coronavirus Study Group|biorxiv.org(2020/02/11付)
を確認したら、
the CSG formally (略)designates it as severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2).
だいたいそんなことが書いてありました。
大河内清次「名前は付いている事が大切だ」
シン・ゴジラ(2016)シーン#128より
2月第3週(2/17~2/23):国内の流行スタート
2月17日といえば、厚生労働省が出している報道発表資料の「◆国民の皆様へのメッセージ」から
新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。
の文言が消えたので、よく記憶に残っています。ついこんなスライドまで作ってしまいました。
新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について
流行を認めていない方(令和2年2月14日版):
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09531.html
「認めていないのをやめる」という回りくどい方法で流行を認めた方(令和2年2月17日版):
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09571.html
なので私の中では、この週から国内での流行スタートです。
2月21日(金)Webメディアに登場
こちらが、日本語のWebメディアから採集できた最初期の「新型コロナ渦」です。
「在宅勤務に切り替え」がごく一部にしか広がらない根本原因 新型コロナ渦でも「通勤地獄」は不変 https://t.co/UXowRhnmAG
— PRESIDENT Online (@Pre_Online) February 21, 2020
2月第4週(2/24~3/1)
メディアで見覚えのあるアカウントからも「コロナ渦」の発信が観察できました。
新型コロナ渦があろうとあるまいと、2020年東京五輪は、私にとって7年前のブエノスアイレスにおける一夜の興奮のみを以てすべて完了している。
— 古谷経衡@長編小説【愛国商売】(小学館)発売中! (@aniotahosyu) February 25, 2020
世間のコロナ渦とは離れた話題ですが……。もうすぐ発売の集英社『Kotoba」の表紙が上がってきました!これはすごい。DIOです。https://t.co/6f1EyKEeu3 DIOが表紙の雑誌に載るなんて、とてもとても嬉しい。
あっちなみに、僕はジョーカーについてのエッセイを書いています。https://t.co/KGUrDHMnoM pic.twitter.com/BESAuyg3BN— 石戸諭 (@satoruishido) February 27, 2020
同時期に一般人にもかなり広がってきていました。紹介は略します。日付指定して各自検索してみてください。
2月29日(土)東京マラソン開催前日
「一般参加なし」という形でしたが、3/1に東京マラソンが開催されました。その前日「コロナ渦での実施」とデイリースポーツが報じました。
東京マラソン、明日号砲 コロナ渦での実施に批判の声も「できる限りのことやった」/スポーツ/デイリースポーツ online https://t.co/9rH3Li5gtb #五輪 #東京 #オリンピック #DailySports
— デイリースポーツ (@Daily_Online) February 29, 2020
2020年3月←今ココ
このあたりからは、恐らくは誰が判断しても「コロナ渦」の流行が明らかです。
3月第1週(3/2~3/8)
複数のメディアで「新型コロナ渦」記事が書かれます。
【コラム】新型コロナ渦が引き起こすファッション業界「5月危機」(有料会員限定記事)https://t.co/ua7rpr86KS
— WWD JAPAN (@wwd_jp) March 4, 2020
新型コロナ渦、松井市長「すべての商品に軽減税率適用、減税を」 https://t.co/YIoX0ksFeb
— 産経ニュースWEST (@SankeiNews_WEST) March 5, 2020
上の記事は、一般人アカウントにも多く言及されていました。
ほかにもネット検索結果から、
アマ8冠・中垣龍汰朗と松本圭佑 B級合格!異例のプロテスト 新型コロナ渦|デイリースポーツオンライン(2020/03/04付)
マスク姿でも晴れやか 「忘れられない卒業式」 新型コロナ渦 時間短縮、在校生出席なく 山口・大殿中 /山口(会員限定有料記事)|毎日新聞(2020/03/08付)
といった新型コロナ渦記事が収集できました。
3月第2週(3/9~)
「コロナ渦」対「コロナ禍」on 3月9日(月)
目の子勘定ではありますが、Tweet検索結果からカウントした結果です。
- 「コロナ渦」「コロナウイルス渦」は、日本時間3月9日0:00~24:00の24時間で、計56件ありました。
- 一方「コロナ禍」「コロナウイルス禍」は、時間帯によるでしょうが、3月9日朝の90分間だけで同数の56件をカウントできました。
「コロナ渦」はここまで順調に勢力を伸ばしてきているとはいえ、それでも「コロナ禍」と比べると、推計で12~16倍の勢力差があります。比べてしまうと「コロナ渦」はまだまだ弱小です。
徹底机上討論!「コロナ渦」問題を考える
さて、
性格が悪いのでたまに見る「コロナ渦」という言葉をこれ本来「コロナ禍」と表記されるべきアレなのでは?って思いながら見ている(確認はしてない)
— さなだ (@s_takuro) March 3, 2020
と思われてもいるように、「コロナ渦」という言葉は「コロナ禍」と表記されるべきなのでしょうか? 必ずしも私はそうは思いません。むしろ反対です。
なぜなら、「渦」って混乱とか不安とかに対しても比喩的に使いますし、
森会長は先月21日日本中が新型コロナ渦に巻き込まれ、苦境にあえいでいる最中で「私はマスクをしないで最後まで頑張ろうと思っているんですが・・・」
↑
ちょっと信じられないよね、この方。選手なら対策が話し合われてるのか、準備されてるのか不安になるわ‼️ https://t.co/gynOtS2sDd— エルモ (@eru345) March 5, 2020
と、この用例はコロナ「渦」ですが、巻き込まれるのは、渦でも禍(わざわい)でも、どちらでも全然いいからです。
エレキのギターが「エレキギター」なのですから、コロナの渦が「コロナ渦」で何の支障がありましょう。
「コロナ」そもそも論
それに、そもそも論から考えてみても、コロナは「渦」で全然いいのです。これらのツイートが思い出させてくれました。
https://t.co/v3KiLUI8Oa
「コロナ渦」って天文学用語っぽい。— ClaraKeene (@clarakeene) March 5, 2020
そもそもcoronaとは太陽の周りの火の渦のことで、coronaといえばvirusという訳ではない。ヒマワリの花はcoronaとも呼ばれる。ちなみにコロナウイルスの形態が火の渦が舞う太陽のような形だから、それにちなんで名付けられている。 https://t.co/PJLTsQL8H0
— 鷲宮ほうき (@houki38) January 27, 2020
そうですこれがコロナです。
Image by Danehrr22 from Pixabay
lexico.com>coronaによれば、コロナは、「花輪(リース)」や「王冠(クラウン)」を意味するラテン語が元といいます。
コロナ禍に負けるな!コロナ渦
実は、ここまでに紹介したいくつかの「コロナ渦」記事は、既にコロナ渦ではありません。
2/29付で東京マラソンの開催を報じたデイリースポーツの記事も、3/5付で松井一郎さんのコメントを報じた産経WESTの記事も、現在はどちらも「コロナ禍」になっています(3/11確認)。
残念なことです。
為にするもの言いをすれば、既得権益層の「コロナ禍」勢力に乗っ取られてしまいました。もっと悪くいえば、記事の改ざんです。実につまらない。
一般人のみならずメディア関係者の皆さまも、コロナ禍からの圧力に負けず、コロナ渦を貫いていってほしいです。
当ブログはこれからも新型コロナ渦を応援します。
こちらからは以上です。
コメント