『ファクトフルネス』の翻訳ファクトチェック(サンプル版)

人の成果には目もくれず不足にだけ注目する下品な記事です。そのつもりでどうぞ。

電子書籍のサンプル版を使って、『ファクトフルネス』邦訳と原書の情報と見比べてみました。

引用部の下線はすべて引用者によるものです。

書誌情報

訳書は honto電子書籍版、原書はAmazon kindle版のサンプルを使用しました。

この記事でいう「ファクト」は、「原書にどう書いてあるか」を意味します。書かれた事柄自体の当否にはここでは関知しません。そこらで戯れたい方は他をあたってください。

要約:Executive Summary

『ファクトフルネス』は上杉周作さんと関美和さんの共訳で、「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」の翻訳本ができるまで(2018/12/25公開) によると、前半第5章までは上杉さんが担当されたそうです。

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」の翻訳本ができるまで|上杉周作
2019/3/10追記:『ファクトフルネス』へのよくある批判に対するわたしのコメントをこちらに書きました↓ 『ファクトフルネス』批判と知的誠実さ: 7万字の脚注が、たくさん読まれることはないけれどjp.chibicode.com こんにちは...

サンプル版を見比べた結果からは、上杉さんはカンマ(,)とandの読解が苦手とお見受けしました。ハンマーカンマー

冒頭から順に進めます。トピックごとに適当にタイトルを付けました。

はじめに

原書の章タイトルは「AUTHOR’S NOTE」です。ここは特にありません。

「知らなさすぎる」と、知らない+すぎるに「さ」が付いているところに、いまどき感がありました。

イントロダクション

サーカスが好きな理由

原書での見出しタイトルは「Why I Love the Circus」です。

コンプライアンスに配慮した説

訳書

網(安全ネット)の上で宙返りをくり返す綱渡り芸人。

原書

I love to watch (略), or a tightrope walker performing ten flips in the row.

コメント

直訳だと「綱渡り芸人が10回連続で宙返りするのを見るのが大好きだ」ぐらいでしょうか。

「I love to watch」を削って体言止めにし、文章にリズムを出しています。これ自体はいいやり方だと思います。

一方、「綱(安全ネット)の上で」に対応する部分は原文に見当たりません。

元にした版にはあったんでしょうか。それとも「安全に配慮して実施しています」的なコンプライアンスの都合?

ファクトフルな日本語文案

宙返りをくり返す綱渡り芸人。

ありがちな時制の軽視

訳書

わたしは診察の際、必ず患者の職業を尋ねるようにしている。

原書

I would always ask what my patients did for a living,

ファクトフルな日本語文案

―していた。

コメント

小さいことですが、このwouldは、過去の習慣を表しています。なので「していた」です。

日本語表現は英語よりも時制に関してゆるいので、ここの「している」が問題とまでは言えません。ただ読解としては、過去に属する「思い出話」の部類だということで。

述語は2つか1つか、それが問題

訳書

剣飲みの芸はインドで生まれた。一見不可能なことが可能になり得ることや、常識にとらわれない発想の大切さを、古来から人類に教えてくれた

原書

Sword swallowing has always shown that the seemingly impossible can be possible, and inspired humans to think beyond the obvious.

コメント

ある段階で原文から離れてあれこれ推敲しているうちにこうなった、という感じの訳文ですが、has shownと(has) inspiredというニュアンスの違う述語動詞2つを「教えてくれた」1つにまとめるのは、うーんなんだかなです。

読者が100人いたら99人以上は日本語しか読まないでしょうから、それがたぶん正解に近いアプローチなんでしょうけどね。

ファクトフルな日本語文案

剣飲みの芸はいつも、一見あり得ないこともあり得るという証となり、常識にとらわれない発想を人々に促す力となった。


述語動詞2つに沿った文案にしてみました。

「to think beyond the obvious」に対応する「常識にとらわれない発想」は上手い訳なのでそのまま使います。人の成果にタダ乗りです。

ということで次へ。

いつ披露するか、それが問題

先ほどの原文にはなかった、剣飲みの芸が「インドで生まれた」とするファクトは、実は次のこちらの文章に出てきます。

訳書

わたしの国際開発の授業では、たまに講義の締めくくりに剣飲みの芸を披露することがある。

原書

Occasionally I demonstrate this ancient Indian art at the end of one of my lectures on global development.

コメント

2つポイントがあります。

1つめ。

原文の「this ancient Indian art」はもちろん「sword swallowing」のことです。英文に同じ事物がくり返し登場するとき、2度め3度めには表現を変える傾向が強くあります。でも日本語文にそこらの忌避意識がほとんどないのも確かです。翻訳調の文章になるのを嫌って「剣飲みの芸」に戻したのかもしれません。けれど私自身は、このレベルなら「英語出身の日本語」を表に出したい派です。

2つめ。

いつdemonstrateするかという読解ですが、原文「at the end of one of my lectures」のmy lecturesが複数ですから、「複数あるlecturesのうち、その1つのendに」というのが妥当なセンです。このファクトをどう書き表すか、というのがポイントとなります。

訳書ではmy lecturesの総体を「授業」、その1つを「講義」と訳しています。けれど私自身の語感では大小の包含関係が反対か、せいぜい同等に思えます。

ファクトフルな日本語文案

わたしは国際開発の講座で時折、講義の最後にこのインド古来の芸を披露する。


あたりがファクトフルな感じです。

my lecturesの全体を「講座」、そのone ofを「講義」としてみました。「締めくくり」も、lectures全体の終わりに感じる節もあるので、軽めの「最後」に変えています。

クイズに挑戦してみよう

原書では「Test Yourself」です。

無駄にファクトレス

訳書

紙とペンを用意して

原書

Please find a piece of paper and a pencil

ファクトフルな日本語文案

紙と鉛筆を用意して

コメント

自動車を運転していると、右折左折のライン取りが甘くて反対車線に食い込んだりはみ出したりするドライバーに時々遭遇します。そんな印象です。大抵の場合はどうってことないんでしょうが、対向車がいるときなどには重大な事故につながりかねません。その意味では危険な運転です。

ここでpencilとpenを同一視することが「重大な事故につながる」とは思いませんが、ファクトはpencilです。

右左折のたとえを続けると、安全運転のためにも、対向車がいようがいまいが右左折は常に自車線の中で行うクセを身につけておきたいものですね。

科学者と、チンパンジーと、あなた

原書タイトルは「Scientists, Chimpanzees, and You」です。

謎の多い訳語選定

訳書

私は公衆衛生学の教授だが、

原書

I am a global health professor,

ファクトフルな日本語文案

私は国際保健学の教授だが、

コメント

訳書を読んだ時点で引っかかり、原書を参照して納得したところです。「公衆衛生」の講義で世界情勢に関する質問を出すというのが今ひとつピンとこなかったんですが、global healthの講座なら腑に落ちます。

サンプルの範囲では「global health」を全部「公衆衛生(学)」と訳していました。間違っているとまで言えませんけど、global healthは「国際保健」が定番の訳し方みたいです。

一例として紹介しますと、

海外の公衆衛生大学院では,国際保健学はinternationalhealthという名称が使われてきたところ,global healthという,高所得国と低所得国の共通した課題を学びあって相互の改善に活かすマインドの名称,学問に変わりつつある。

出典:国際保健学|研究分野紹介|金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科・医薬保健学域医学類

とあるように、名実ともに新しい学問分野でもあります。原文がpublic healthだったら「公衆衛生」でいいと思うんですがね。

語感の難しさとして両者に差は感じないし、見る限り「国際保健」にして不都合が生じる事情も見つからないしで、訳出にあたってどんな観点で「公衆衛生」にしたかは知りたいところです。

カンマ区切りデータ問題

訳書

貧困、富人口、出生、死亡、教育、保健、ジェンダー、暴力、エネルギー、環境など

原書

about poverty and wealth, population growth, births, deaths, education, health, gender, violence, energy, and the environment

ファクトフルな日本語文案

貧富、人口増加、出生数、死亡数、教育、保健、ジェンダー、暴力、エネルギー、環境など

コメント

3つあります。

  • まず「貧困、富」と2つに分けているのがイケてないです。
    これがCSVデータなら「poverty and wealth」で1つのデータですよね。英文もCSVデータと同じくカンマが区切りの記号ですから。
  • 原文、population growthなので「増加」を足しました。
  • birthsもdeathsも冠詞なしの複数形なので、それぞれ「出生数」「死亡数」としました。「誕生」「死」という抽象レベルの概念ではなく、量を表すものという理解です。

なぜ、チンパンジーに負けてしまうのか

原書見出しタイトルは「Why Don’t We Beat the Chimpanzees?」です。

修飾するのはどの範囲か

訳書

ステージの上からは、国の首脳や国連の元事務総長、国連専門機関の代表、多国籍企業の幹部、テレビで見たことのあるジャーナリストの姿も見えた。

原書

Scanning the room as I stepped onto the stage, I noticed several heads of state and a former secretary-general of the UN. I saw heads of UN organizations, leaders of major multinational companies, and journalists I recognized from TV.

ファクトフルな日本語文案

ステージに上がって会場を見回すと、いくつかの国の首脳らや元国連事務総長がいることに気づいた。テレビで見たことのある、国連専門機関の代表、多国籍企業の幹部、ジャーナリストらの姿も見えた。

コメント

原文末の「I recognized from TV」がどの範囲を修飾するか、なんですが。これもカンマ区切りデータの問題の一種といえます。

訳書の読解は

I saw

  • heads of UN organizations,
  • leaders of major multinational companies,
  • and journalists I recognized from TV.

と「ジャーナリスト」だけにかかっている訳し方です。

けれども、文意を考えるとこうじゃないですかね。

I saw

    • heads of UN organizations,
    • leaders of major multinational companies,
    • and journalists
  • I recognized from TV.

すなわち、カンマ区切りで列挙されているもの全部が被修飾語です。

「代表」にしても「幹部」にしても、単に姿が見えただけでは「人がいる」その見た目から受ける印象以上の情報は書けません。何者かが筆者にわかっているから、どこの誰がしと書けるわけです。

さらに根拠のない印象論ですが、原文の文章の区切りは、

  • 会ったことのある人(首脳と、元事務総長)
  • 直接会ったことはないが、テレビで見て知っている人(代表、幹部、ジャーナリスト)

が基準になっているように見えます。

ドラマチックな本能と、ドラマチックすぎる世界の見方

原書見出しタイトルは「Our Dramatic Instincts and the Overdramatic Worldview」です。

中間層の事実

中間所得層のライフスタイルを書いたくだりからです。

訳書

休みには海外行く。それも難民ではなく、観光客として。

原書

and they want to go abroad on holiday, not as refugees.

ファクトフルな日本語文案

難民とかではなくて、休みには外国へ行きたい。

コメント

abroad = foreign countriesとしたとき、日本は島国なので「海外」でいいですが、他国の場合は陸続きのこともあります。なので「外国」にしました。

行く(go)じゃなく、ファクトは行きたい(want to go)です。

「観光客として」は原文にないですが、いい補足だと思います。

listen=見聞き?

訳書

わたしは何十年も講義やクイズを行い、人々が目の前にある事実を間違って解釈するさまを見聞きしてきた。その経験から言えるのは、(後略)

原書

My experience, over decades of lecturing, and testing, and listening to the ways people misinterpret the facts even when they are right in front of them, finally brought me to see

コメント

途中までの引用ですが、原文が少々読みにくいです。lecturing、testing、listeningの全部がover decades ofにかかるなら、testingの前にandはいりません。実際にはandがあるので、そこから文章の主語が「My experience and listening」の2つあるとも読めます。しかし、ならば「lecturing and testing」となっていてほしいところが「lecturing, and testing」とカンマで区切られてしまっています。どっちつかずのいやらしさがある英文です。

訳と同様に、「My experience」1つが主語でing形の3つ全部がdecades ofに続くと取るとしても、listeningは「見聞き」じゃないですよね。視覚要素はないと思います。

ファクトフルな日本語文案

わたしは何十年も講義やクイズを行い、人々が、事実がたとえ目の前にある時ですらどんなふうに間違った解釈をするかに耳を傾けてきた。その経験から言えるのは、


同じく主語はexperienceの1つと解釈してみました。

ファクトフルネスと、事実に基づく世界の見方

原書見出しタイトルは、「Factfulness and the Fact-Based Worldview」です。

認識の術

訳書

ドラマチックすぎる話を認識する術と、

原書

how to recognize overdramatic stories

ファクトフルな日本語文案

ドラマチックすぎる話の見分け方と、

コメント

「認識」っていうので、それを自身がどう受け止めて消化するかみたいな話に思ってしまいました。

原文のrecognizeとは、

identify from knowledge of appearance or character
(外見や特徴についての知識により特定する)

lexico.com

ですので、それ以前の段階でした。要は「見分け方」ってことです。

サーカス、再び

「Back to the Circus」、この第1パラグラフの読解はことごとく疑問なので、別の記事に分けて特集します。

公開時にはここに告知します。

公開しました。→『ファクトフルネス』共訳者の上杉周作さんと未来完了時制を学ぶ

『ファクトフルネス』共訳者の上杉周作さんと未来完了時制を学ぶ
人の不足だけを取り上げる下品な記事です。そのつもりでどうぞ。前の記事『ファクトフルネス』の翻訳ファクトチェック(サンプル版) で、電子書籍のサンプル版を元に『ファクトフルネス』日本語版の翻訳ファクトチェックをしました。 うち、イントロダクシ...

ということで第2パラグラフから。

are ではなく、can be

訳書

だからわたしは剣を飲む。直感がどれほど現実とかけ離れているかを知ってもらうために。

原書

I swallow the sword because I want the audience to realize how wrong their intuitions can be.

コメント

can beなので、可能性の話です。直感と現実がかけ離れていることが常ではなく、離れていないこともあるし、離れていることもある。そういう趣旨です。

ファクトフルな日本語文案

わたしは剣を飲む。直感がどれほど間違いうるか知ってもらいたいから。

「実現」というテキトー訳

前に続く文からです。

訳書

想像できないことも、ありえないと思うことも、実現できてしまうことを知ってもらうために。

原書

I want them to realize that what I have shown them—both the sword swallowing and the material about the world that came before it—however much it conflicts with their preconceived ideas, however impossible it seems, is true.

ファクトフルな日本語文案

世界に関する教材もそうだし剣飲みの芸もそうだが、どれほど先入観に反していようと、どれほどありえないと思えようと、わたしが示したことは真実だと知ってもらいたいのだ。

コメント

原文ダッシュ部分は同様の情報が続いてくどいからはしょったのかもしれませんのでそこはいいとして。realizeの目的語であるthat節の主述はwhat I have shown them is true(わたしが彼らに示したことは本当だ)なので、「実現できてしまう」という読解はウソです。

第1章 分断本能

THE GAP INSTINCT

不思議なサブタイトル

章のサブタイトルからです。

訳書

教室に潜む魔物を、1枚の紙に封じ込める

原書

Capturing a monster in a classroom using only a piece of paper

ファクトフルな日本語文案

教室にいる魔物を、紙切れ1枚だけでつかまえる。

コメント

「封じ込める」が意味不明です。続きを読んでも、そんな話ではないですし。

すべてはここから始まった

原書見出しタイトルは「Where It All Started」です。

andが苦手?

訳書

ユニセフの年報の表1から表5をコピーしたプリント

原書

copies of tables 1 and 5 from UNICEF’s yearbook.

ファクトフルな日本語文案

表1と表5

コメント

tables 1 and 5なので、著者がコピーして配った表は全部で2つです。5つじゃありません。

訳者の方はandを読むのが苦手みたいです。

著者が使った1995年当時のユニセフの刊行物は確認できなかったので、data.unicef.orgのLevels and Trends in Child Mortality(September 2018)からダウンロードしたドキュメントを元にした推測となりますが、表1が大陸別のサマリーで、表5が各国別のデータ一覧でしょうね。

第1の勘違いを捕まえる

原書見出しタイトルは「Hunting Down the First Mega Misconception」です。

hunt downという句動詞の語釈は

1 to try to find every member of a group(1つのグループの全メンバーを見つけようとすること)

2 to try to find a particular thing or person(ある特定の物事や人物を見つけようとすること)

hunt down|Macmillan dictionary より

なので、日本語なら「探し出す」ニュアンスなんですが、「捕まえる」でもまあいいです。

定冠詞なので

講義の中で学生と議論するくだりからです。

訳書

彼女は大きな紙を使って説明を始める。

原書

She pointed at the big paper in front of her and said,

コメント

日本語訳だけ読んだ時点では「大きな紙」を誤解していました。この女子学生は、新しく紙を取り出してそこに何かいろいろと書き込みながら自説を展開したのかと思いました。でも違いました。

big paperの冠詞がtheであることがポイントです。定冠詞なので、「the big paper」とは読者にとっても既知のものであることを意味します。

で、ここまでに一度は登場した既知のbig paperとは何か?といえば、答えは絞られます。こうでしょうね。

ファクトフルな日本語文案

彼女は手元の大きなプリントを指さして説明した。


はい、講義で著者が配ったハンドアウトのことです。載っているのは「表1と表5」です(しつこい)。

修飾違い

訳書

2人がつくった動くバブルチャートは、はからずも革命的だった。おかげで何百ものデータの動向を表現できるようになり、

原書

Anna and Ola(略)and accidently created a revolutionary way to show hundreds of data trends as animated bubble charts.

コメント

副詞のaccidentlyが修飾するのはcreatedです。なので「はからずも革命的」はミスリードです。

ファクトフルな日本語文案

2人は偶然にも、動くバブルチャートという革命的な手法を生み出した。(後略)

おかしい所を探してみよう

原書見出しタイトルは「What’s wrong with This Picture?」です。

「※ただしイケメンに限る」構文です

訳書

単語自体にあまり意味はない。それぞれの言葉が、人々の頭の中に何らかのイメージを植え付けることがポイントだ。

原書

It doesn’t really matter which terms people use to describe the world, as long as the words create relevant pictures in their heads and mean something with a basis in reality.

コメント

後半がめちゃくちゃです。

原文は、「キュンとする男性の仕草 ※ただしイケメンに限る」と同じロジックで書かれています。そこが全然読めていません。

前半が「キュン」、as long as以降がどんな「イケメン」かを述べていますので、こうですね。

ファクトフルな日本語文案

その言葉が頭の中に的確なイメージを作り出し、現実に根ざした意味を持っている限り、人々が世界を語るのにどんな言葉を使うかはさして問題ではない。

オールです

訳書

ほとんどの国は、「出生率は低く、生存率は高い」ことを示す右上の小さな枠に向かっているか、すでに到達済みだ。

原書

The small box, with few children and high survival, that’s where all countries are heading. And most countries are already there.

コメント

原書のファクトはallです。裏取りした結果「all」が向かってはいなかったと判明して「ほとんど」とした可能性もありますが。

ファクトフルな日本語文案

「出生率は低く、生存率は高い」ことを示す右上の小さな枠、すべての国がそこに向かっており、大半はすでに到達済みだ。

魔物を捕まえる

原書見出しタイトルは「Capturing the Beast」です。

訳しにくい罠

「2段階式の勘違いの罠」と訳されているところからです。

訳書

初めに、いわゆる「低所得国」の生活がどんなものかを人々に想像してもらうことにした。

原書

First, we had people disclose how they imagined life in so-called low-income countries,

ファクトフルな日本語文案

初めに、いわゆる「低所得国」の生活を人々がどう思い描いているかを明るみに出した。

コメント

discloseが抜けています。

ここでいう1つめの「罠」とは、「想像してもらう」ことではなく、その想像が事実とかけ離れていると示すことです。

ただし「罠」がこの文脈の訳語として適切かは難しいところですね。trapは「人々が持つ勘違いをあぶり出すための仕掛け」の比喩として使われているんですけど、「罠」とか「トラップ」となっていると、自分の場合引っかけられる側として発想してしまうので。

  • 勘違い1=低所得国の暮らしはひどい
  • 勘違い2=総人口の半分以上が低所得国にいる

この2つが勘違いだと知らしめるのがtrapの機能ですから、UFOキャッチャーからの連想で「勘違いキャッチャー」なんてどうでしょう。意訳すぎますかね。

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サンプル版からは以上です。

どれほど良質な翻訳書でも、探せばこの程度のいちゃもんは見つかると思います。

これぐらいのことしかできませんが、何か面白そうな翻訳プロジェクトあったらまぜてください。

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