IOC・JOCの定義による「エンブレム」と「ロゴ」の違い

こんにちは。

違いのわからない出典マニアが確認しました。

要約:Executive Summary

IOC・JOCの定義する「エンブレム」と「ロゴ」の違いをひとことで言えば、
「オリンピック・シンボル」の有無にあります。

すなわち、

  • エンブレム:オリンピック・シンボルを含む
  • ロゴ:オリンピック・シンボルを含まない

という違いです。

オリンピック・シンボルとは

いわゆる「五輪のマーク」のことです。

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出典:「大会ブランド保護基準」(PDF)(Ver 1.1 2015 July)|tokyo2020.jp

基本を押さえておくのに好適

この文書の「4.オリンピック・パラリンピックに関する主な知的財産」に、基本的な用語とそれを表す図が一対一対応で載っていました。わかりやすかったです。

2020大会の例でいえば

2020年の東京大会を例として説明してみます。

IOC総会にて2020年夏季大会の開催都市が決定される前、2013年9月までの段階を振り返ります。

くり返しますと、五輪のマークを含まないものが「ロゴ」、含むものが「エンブレム」です。

1.「招致ロゴ」(2011.11~2012.5)

立候補表明時点では、「招致ロゴ」です。

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図:「TOKYO 2020」招致ロゴ

この段階では「APPLICANT CITY」(申請都市)です。

出典:東京2020オリンピック・パラリンピック招致ロゴを発表|joc.or.jp(2011/11/30付)

2.招致エンブレム(2012.5~2013.9)

IOCによる一次審査を通過して開催候補地の1つに選定されると、「candidate city」(立候補都市)となります。立候補都市になると、IOC所定の手続きにより「招致エンブレム」が作れます。

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図:「TOKYO 2020」招致エンブレム

招致ロゴと図柄は同じですが、文言が「CANDIDATE CITY」となっていますね。

で、その下に五輪のマークが加わりました。

出典:新たな招致ロゴに五つの輪 20年五輪目指す東京|joc.or.jp(2012/05/29付)

JOCも案外といい加減だった

後ほど詳しく定義を見ていきますが、オリンピック・シンボルの5つの輪が付いていますので、これは「招致エンブレム」です。

なのにこんな書きぶりです。※下線引用者

2020年夏季五輪招致の第1次選考を通過した東京招致委員会は29日、新たな招致ロゴを発表した。

違います。

日本を象徴するサクラをモチーフにしたこれまでの花輪のデザインはそのままで、国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得て五輪のシンボルである五つの輪が下に加わった

定義からすれば、それはエンブレムです。

文末に(共同)のクレジットが付いていますので、これは共同通信の記事を転載したようです。にしても、JOCのサイト上でも案外と用語法がいい加減なのでした。

ちゃんと使い分けていた組織委サイト

一方、大会組織委員会のサイトでは、使い分けがちゃんとしていました。

東京2020招致エンブレムは、これまでの桜をモチーフとしたロゴに IOC(国際オリンピック委員会)の承認を得て五輪のマークが付けられたものです。

定義による区分に忠実な記述です。

エンブレムは、IOC が立候補都市に対して使用を承認するもので、今後、東京はこれを招致活動で使用することができます。

出典:東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会がスローガン及びポスターを発表!|tokyo2020.jp(2012/05/29付)

きっと運営体制がクソなんだろうと(私に)疑われている組織委員会ですが、本件に限ってはちゃんとしていました。

厳密には「ロゴ」問題

ですから、昨今世間でにぎやかな

  • 自作の盗作だとして、使用差し止めを求めてベルギー・リエージュ劇場ロゴのデザイナーが提訴している件
  • 「まるで喪章」「暗い」などと国内で不人気な件

は、いずれもIOC・JOC的には「エンブレム」問題ではなくて「ロゴ」問題となります。焦点となっているのは、もっぱら「ロゴ」部分だからです。

一般にはどっちでもいい

付け加えておきます。

この記事で述べているのは「IOC・JOC公式としては」という話なので、一般にどう言うかは雰囲気でいいと思います。

私も文脈によっては違う使い方をしそうに思います。

詳細情報

あとは「根拠となる規定」をはじめとする、出典マニアの細かすぎる確認作業です。

根拠となる規定

IOC倫理規程 Ethics 2012年版・英和対訳(PDF)に、「ロゴ、エンブレム」の規定がありました。招致活動に関する行動規範の第4条です(正式な規定文書名は後述)。

申請都市は、オリンピック・シンボルを表示していないロゴを使用することができる。

立候補都市は、オリンピック・シンボルを含むエンブレムを採択することができる。

PDF文書の左側のページに英語原文が書いてありました。※強調・下線は引用者

The Applicant Cities may use a logo, which does not feature the Olympic symbol.
The Candidate Cities may adopt an emblem, which includes the Olympic symbol.

関係代名詞whichの前にカンマ(,)が打ってあるのがポイントです。これは、先行詞の「補足的な説明」にあたる用法です。

ロゴを例に言えば、「ロゴのうち、含まないもの」ではなくて、「ちなみに、ロゴというのは含まないものね」という文脈になります。

「申請都市」「立候補都市」の違いについては、先述の説明のとおりです。

当該規程の長い正式名称

この規定は、

  • 倫理規程及びその他の文書「オリンピック競技大会開催全希望都市に適用される行動規範」(2020 招致手順から適用)

という長い名前をした規程文書の第4条にあります。

第4条(前半)は、こう続きます。

ロゴ及びエンブレムの作成及び使用は、付属資料1に掲げる条件に従うものとする。

ロゴとエンブレムの「仕様書」

この付属資料1というのが、「ロゴとエンブレムの作成と使用に関する規程」です。

読むと、ロゴとエンブレムはそれぞれこう作ることになっていました。

エンブレムの構成

「ロゴとエンブレムの作成と使用に関する規程」1.2のe)からです。

1.2
e) 「エンブレム」とは、オリンピックシンボルと他の独自のデザイン要素を含む統合されたデザインで、以下の方法で上から下に向かって反映されたものを意味する:

少しわかりにくいので、原文とも照合しつつ勝手に書き直しました。こんな感じ。

◆「エンブレム」とは、ある統一的なデザインのことである。オリンピックシンボルと、そのほかに独自のデザイン要素を含み、上から下へ次のように並んでいるものを意味する:

原文がこちら。

e) “Emblem” shall mean an integrated design, including the Olympic Symbol and other distinctive design elements, which shall be reflected in the following manner from top to bottom:

その「並び」は次のとおりです。

  • (i) ロゴ(又は、独自のデザイン要素で段落2.1 の規程に従い作成され、立候補都市段階での使用を承認されたもの
  • (ii) 呼称
  • (iii) グラフィックガイドラインに従って使用されたオリンピックシンボル

対応する原文です。

1. the Logo (or such other distinctive design element developed in accordance with paragraph 2.1 and approved for use during the Candidate City phase);
2. the Designation; and
3. the Olympic symbol, used in accordance with the Graphic Guidelines.

「段落2.1」の内容は、つづく関連規定で紹介します。

東京2020の例で確認

東京大会の公式エンブレムで確認してみましょう。

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東京2020大会エンブレム|tokyo2020.jp

先ほどの

  • ロゴ
  • 呼称
  • (グラフィックガイドラインに従って使用された)オリンピックシンボル

のとおりになっていますね。

厳密に言えば「ロゴ」

ですから冒頭でも述べたとおり、昨今の問題は、厳密に言えば「ロゴ問題」です。問題になっているのは、もっぱらロゴ部分(+呼称の字体(タイポグラフィ))だからです。

関連規定

各文書から、関連する規定を集めておきました。

「ロゴとエンブレムの作成と使用に関する規程」から

ロゴの定義

h) 「ロゴ」とは、独自の要素を伴う統合されたデザインで、次の方法で上から下に向かって反映されたものを意味する:
(i)段落2.1 の規程に従い作成された独自のデザイン要素
(ii)都市ワードマーク
(iii)呼称(直接都市ワードマークの直下に)

これも「エンブレム」のときと同様に少々わかりにくいので、原文を参照して直します。

◆「ロゴ」とは、特定の独自要素を持った、ひとつの統一的なデザインをいう。上から下へ次のように並んでいるものを意味する:

  1. 規定2.1にしたがって作成された独自のデザイン要素
  2. 都市ワードマーク
  3. 呼称(前項のすぐ下に)

h) “Logo” shall mean an integrated design with certain distinctive elements, which shall be reflected in the following manner from top to bottom:
1. a distinctive design element developed in accordance with
paragraph 2.1;
2. the City Wordmark; and
3. the Designation (directly underneath the City Wordmark).

「申請都市」のロゴの作成について

「規定2.1」がこちらです。

2. 申請都市
2.1 ロゴの作成
申請都市は、大会開催招致に関係して、ロゴを作成できるが、ロゴの独自デザインは以下のようになってはいけない:
a) NOC エンブレムの要素を含む又は歪曲したもの、若しくは紛らわしく類似したもの
b) 都市が位置する地域の名前又は略称に限定されたもの
c) 画像や国際的また世界的に知られた表現やメッセージを含むもの
d) オリンピックシンボル、オリンピックモットー、オリンピック旗、その他オリンピック関連の描写(聖火、トーチ、メダル等)、スローガン、呼称又は他のしるし、それらを歪曲したもの、若しくは紛らわしく類似したデザイン

オリンピック・エンブレムに関して

オリンピック憲章には、こんな規定があります。

11 オリンピック・エンブレム

オリンピック・エンブレムは、オリンピック・リングに他の固有の要素を結びつけた統合的なデザインである。

出典:オリンピック憲章 Olympic Charter 2014年版・英和対訳(2014年12月8日から有効)(PDF)

付属細則より:

4.5 OCOG のオリンピック ・ エンブレムは、(略) 以下の条件を満たさなければならない。

4.5.1 エンブレムは当該 OCOG が組織運営するオリンピック競技大会との結びつきが明確に認識できるようなデザインでなければならない。

4.5.2 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、 当該 OCOG の国の国名、あるいは国名の省略形に限定してはならない。

4.5.3 エンブレムが固有のものであることを示す要素は、 普遍的あるいは国際的であるかのような印象を与えるモットーや名称、 その他の総称的表現を一切含んではならない。

OCOG(s)というのは、「オリンピック競技大会の組織委員会」(the Organising Committees for the Olympic Games)のことです。

出典情報

参照したPDFドキュメントはこちらから入手できます。

公益財団法人 日本オリンピック委員会

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

こちらからは以上です。

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