なぜ日本人は台風を名前で呼ばないのか?

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こんにちは。名前を研究しています。

現状を書きつらねて整理した記事です。答えはありません。

日本人の台風の呼び方:2つの厳格なルール

日本人の台風の呼び方には、次の2つのルールが厳然として存在します。

  1. 名前で呼びません。番号で呼びます。
  2. ただし特筆すべき事象をもたらした台風には、あらためて名前を付けます。しかしその「特筆すべき」の基準は、観測史上最高レベルを要求するかなり厳しいものです。

この2つは、もはや「日本人の意思」と言っていいぐらいに、明確かつ強固なものです。

この記事では、その意思がどれほど明確かつ強固かを確認していきます。

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アメリカでは名前

アメリカでは、台風(ハリケーン)に名前を付けて呼びます。

たとえば、2005年に米国南部を襲ったハリケーンの名は「カトリーナ」です。付ける名前は、事前にリストとして用意してあります。

日本も、米軍占領下では名前

同じく日本も、第2次世界大戦敗戦後の米軍占領下の時期には、台風を米国式に名前で呼んでいました。

たとえば、

  • カスリーン台風(194709号)
  • キティ台風(194910号)
  • ジェーン台風(195028号)

などです。これらはいずれも米国空軍が定めた名称です。

占領統治終了で、名前もやめる

ところが、サンフランシスコ講和条約の発効により独立回復を果たすと、このような台風の呼び方をやめてしまいます。以後、その年に発生した順の番号で呼び方のみ使用しています。

ユッキーナアッキーナ、ネホリーナハホリーナなど、何かしら名前を付けて呼んでもよさそうなのに、呼びません。吹かせているのがヤンキー風だからでしょうか。

沖縄も同じ

本土復帰するまでの沖縄も、事情は同じです。

復帰までの台風は、

  • サラ台風(195914号)
  • コラ台風(196618号)
  • デラ台風(196816号)

と呼ぶ方が、通りがいいそうです。

そして本土復帰後は、番号呼称です。

名前はある

日本人が台風を番号で呼んでいるのは、名前が用意されていないからではありません。

現代の台風にはちゃんと名前があります。

たとえば、2013年にフィリピンを襲い、レイテ島タクロバンでの高潮被害など、各地に甚大な被害をもたらした台風の名前は、「ハイエン(Haiyan)」(意味は「うみつばめ」)です。

この名前は、アジア・太平洋14か国・地域の気象機関で構成するESCAP/WMO Typhoon Comittee で定められた国際標準です。アジアで定め、世界に通用するものです。

よって気象庁のサイトにも、ちゃんと名称リストが掲載されています(台風の番号と名前)。

なのに呼ばない

なのに、同じ台風に対する日本人の呼び方は「台風30号」です。

日本人がどれぐらい名前で呼ばないか、Google の検索結果で確認してみましょう。(1/19実施)

その比は実に363対1。「ハイエン」の使用頻度は、30号に比べたらエイプリルフール並みです。

こと台風の名前に関しては、日本人は、国際標準など実質的に完全無視なのであります。

「お上のご意向」ではない

その理由を「気象庁や報道機関が習慣的にそう呼んでいるから」とする説明がありました。それは違います。

日本人は、たとえ「お上」「マスコミ」がそう呼ぼうとも、違うときには「違う」と意思表示するからです。

3つの例を示します。どれも明確な意思表示です。

1)本場所の名前

年6回開催されている大相撲本場所の正式な名称は、開催月の名前です。たとえば1月開催の場所なら「一月場所」です。主催の日本相撲協会>本場所の年間日程表でも、使われているのは正式名称のみです。

しかし報道機関含めた一般の日本人は、これを「初場所」と呼んでいます。以下、春、夏、名古屋、秋、九州 です。全部主催者がオフィシャルには呼んでいない非公式な名称ですが、関係者も含め、こちらの方が多用されています。

2)列車の名前

Wikipedia の引用ではありますが、半世紀前にはこんな例もあります。※下線は引用者

計画時には列車名は設定せずに個々の列車を航空機のように列車番号だけで区別する予定だったが、「名前が欲しい」という要望が多数来たために列車名を付けることになった。(ひかり(列車)

3)名前の例からは離れますが、

二千円札はまったく必要ありませんでした。

「顕著台風」―台風に名前が付くとき

ことほどさように、日本人がかたくなに番号で呼ぶ台風ですが、中には名前で呼ばれる台風もあります。気象庁の用語で「顕著台風」といいます。

該当するものは、1954年(命名は1958年)以降、全部で8つあります。

  1. 洞爺丸台風(195415号)
  2. 狩野川台風(195822号)
  3. 宮古島台風(195914号)
  4. 伊勢湾台風(195915号)
  5. 第2室戸台風(196118号)
  6. 第2宮古島台風(196618号)
  7. 第3宮古島台風(196816号)
  8. 沖永良部台風(197709号)

台風によって顕著な災害が引き起こされたり、台風に伴って顕著な現象が観測された場合(顕著異常現象)、気象庁が台風に特別な名前を命名する制度があります。

出所:デジタル台風:資料室|国立情報学研究所(NII)

このほか、1991年の台風19号は、収穫まぎわだった青森県のりんご農家に大きな被害をもたらしたことから「りんご台風」と呼ばれることもあります。ただしこの名称は公的な「顕著台風」の命名ではなく、民間ベースのものです。

ということで1977年の沖永良部台風以来、「顕著台風」は登場していません。もはやちょっとやそっとの台風では名前が付かないもようです。

仮説的まとめ

「通常は特に名前で呼ばずに、顕著な災害や現象がみられた場合に限って名前を付ける」

これと同じルールが適用されているのが、地震です。年数回ペースで起こる自然災害の名前について、日本人はこういうルールを使うようです。

これが伝統?

思うに、日本人の感覚としてこういうものが根底にありそうです。

なお1946年までは、個々の台風には名前はつけられておらず、日本本土や船舶に大きな災害をもたらした台風のみ名前がつけられていました。1934年の室戸台風や1945年の枕崎台風などがその例です。

デジタル台風:台風の名前(アジア名)|国立情報学研究所(NII)

  • 基本的に、いちいち名前を付けない
  • 「ひどくやられた」ものにだけ名前を付ける

ただ現代では気象観測の必要上、やむなく番号を使って便宜的にそう呼んでやっている。

日本人の台風の呼び方には、そんな意思がこもっているように感じられます。

謝辞

事実関係の記載については、上記のデジタル台風:台風の名前(アジア名)(NII)ほか同サイトに多くを負っています。謝意を表します。

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