『紋切型社会』の「性感語」をむやみに解きほぐしてみた件:(1)関係性

こんにちは。

「言葉で固まる現代を解きほぐす」(副題)という話題の書にむやみに引っかかってみる、何と戦っているんだシリーズを始めます。

そんな書籍の文中に使われているのにもかかわらず、解きほぐされているようには見えない言葉に引っかかってみます。

1回目は「関係性」です。

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この記事で言いたいこと

その「関係性」に「性」は必要だろうか?

「性」のない、単なる「関係」でいいのではあるまいか?

『紋切型社会』をテキストに

武田砂鉄(@takedasatetsu)さんの話題の書『紋切型社会』を読みました。好著でした。

本書には、武田さんが編集者の綾女欣伸(@ayaminski)さんと選んだという、20のキーワードが取り上げられています。版元である朝日出版社の特設ページ asahipress.com/extra/monkiri/ で目次が一覧できます。

この本が世間的にどう分類されるかわかりませんが、私は評論や批評というより、そこへ至るまでの「下ごしらえ」「仕込み」の書に思えました。

こちらはその感想ツイートです。いつも読了後にやっています。

これは「人前に出せる段階ではない」という意味ではなくて、「これだけ丁寧に仕込んだら、どうやって出してもうまいに決まってる」。そういう趣旨です。

Jiro Ono, Everett Kennedy Brown/EPA/Corbis from npr.org

ですが、そんな好著の中ですら解きほぐされていなかった(ように見えた)のが「性感語」でした。

気になる「性感語」

いまどきの「性感語」が気になっています。

「性感語」というのは、末尾に「性」または「感」の付く言葉です。いまさっき私が造りました

たとえば、

  • 人間性
  • 存在感

みたいな言葉です。ただし、これらは大して気になりません。

気になる第1位は、「関係性」

私が最も気になる今どきの性感語第1位は、「関係性」です。

「性」のそれこそ必要「性」が、いまいち理解できないからです。さりとて一切不要だとも言い切れません。

「関係性」の「性」は必要だろうか? と用例に出会うたびにもやもやしています。

そんなセックスレス中高年です。

『紋切型社会』の気になる性感語(1):「関係性」

『紋切型社会』には「関係性」がのべ10回出てきます。※弊社調べ

全体の感想としてくり返しますと、その「関係性」に「性」がいるかなあと疑問です。

以下、個々に該当するテキストを引用してコメントします。※下線は引用者

『紋切型社会』の「関係性」コンプリートコレクション

#01

「I」と「We」の関係性を見事に瓦解させている。

―9「国益を損なうことになる」p.124

私には関係で構わないです。

#02

所詮、土管のある小さな空き地内での関係性だが、

―13「うちの会社としては」p.169

「性」が加わっている意味は、少しはあるのかな。

#03, 04

オッサンとお姉さんという関係性を赤ちゃんとお母さんの関係性に強制変換させるのは、コスチュームよりも言葉である。

―14「ずっと好きだったんだぜ」p.187

赤ちゃん風俗での性的サービスの話だから、「性」が必要?

#05

…先輩勢に負けてたまるかと力みに力んで、「ピンク・フロイドと9・11の関係性」というテキストを書く。

―16「誤解を恐れずに言えば」p.212

ふわふわした話という語感が強まるので、「性」が有利かもしれません。

#06 上記タイトルが文中にもう1回出てきます。引用は割愛します。

#07

視聴者からの「感動をありがとう」と制作側からの「本当の主役は、あなたです」の関係性はまさにこの玄関前でのやり取りと同質であって、決まりきったやり取りの最大膨張が24時間テレビの「本当の主役は、あなたです」のテロップだったのだ。

―17「逆にこちらが励まされました」p.225

関係でも別にいいと思う。

#08

言葉による交感を持たないピダハンには、疫病との闘いや食料調達の難義が生じるが、質問・宣言・命令で言語を行き渡らせていく以上、人間同士の関係性に齟齬は生じない。

―19「もうユニクロで構わない」p.256

これも。

#09

受け止める側の「そんなの分かっててやってるし」が持つパワーは、女性誌の言葉が一本調子に続けてきた、命令による関係性を変えていくのかもしれない。

―19「もうユニクロで構わない」p.266

これも関係で構わない。

#10

例えばフェイスブックでは、すでに接続された関係性を更に約束する〝エモい〟(エモーショナルで琴線に触れる)投稿ばかりがシェアされていくが、

―20「誰がハッピーになるのですか?」p.278

これも。

考察:関係と関係性の関係

「関係」と「関係性」両者の関係をとらえるため、なぜ私が「関係性」に引っかかるのか、そしてなぜ、「関係」でなく「関係性」が多用されるのかを考えてみました。

2つの仮説を述べます。答えは出せていません。持ち越しです。

仮説1:あいまいの上乗せ

引っかかる要因としてひとつ思うには、「関係」という言葉自体が既にかなり抽象的であり、あいまいな意味に使えることがありそうです。

「関係」だけでも既にあいまいなのに、さらに「性」を加えることによって輪をかけて抽象的な方へぼやかしているように思えてしまうからかもしれません。ここでその作業必要?と。

仮説2:あいまいゆえに使い勝手のいい「関係性」

抜き出した「関係性」の用例を並べてみると、「関係性」には、登場する複数の関係者同士の相互関係や、ならびに前後の文脈があいまいであっても「そこそこ読めてしまう」という効能があるように思えてきました。

というのも、『紋切型社会』に出てくる「関係性」をすべて「関係」に書き換えたとすると、中には前後の文言を整えておきたくなるものも出てくるからです。

「それってどういう関係?」を十分に整理できていなくても、「関係性」ならふんわりパッケージできるのかもしれません。

ここから先は別の記事で考察を加えることにして、ひとまずはここまで。

と、あいまいな関係のままおきます。

つづく