語尾の「だけど」って超日本語っぽいんだけど。

こんにちは。タイトルどおりの用件なんだけど。

この記事で言いたいこと

2つあるんですけど。

1.日本語運用ルールの基本

日本語を運用する際の基本中の基本と言えるルールとは、

  • はっきり言わない
  • 全部言わない

であるように思います。ほぼ同じ意味ですが。

2.「だけど」語法の日本語っぽさ

語尾にやたら「だけど」を付ける言い方って、その意味できわめて日本語っぽいです。

補足説明

何語にしろ、文法と語彙をマスターしただけでは、本当の意味でその言葉を使えるようになったとは言えません。

「運用の心得」とでも言いましょうか、そのことばを使うにあたって守らなければならない基本ルールと言いましょうか、言語ごとの「基本理念」のようなものがあるように思います。うまく言えませんが。

もし、日本語の「運用ルールブック」があるとすれば、その第一条は「はっきり言わない。全部言わない」であるように思います。

逆に言えば、「はっきり全部言う」と、たとえ文法や語法に何ら問題がなくても、どこか日本語っぽく聞こえないのです。

「だけど」を考える

いくつかの例を手がかりに、語尾に付く「だけど」を考えます。

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その1.ありえないんだけど

エロい動画を見ていたら、とある行為に及ばれて女優さんがこう言っていました。

「意味がわかんない。ありえないんだけど」

用件も忘れて、しばし感慨にふけってしまいました

あらためて、すごく日本語っぽいなと思ったからです。

辞書で「だけど」って引いてみた

広辞苑で「だけど」を引くと《「だけれど」の約》、「だけれど」は《「だけれども」の下略》となっていました。

「だけれども」には

前文で述べた事柄に対し、それに反する事柄を示す語。そうではあるが。だけど。だけども。だが。

とありました。

「だけど」の解釈(1)

エロい動画で耳にした「ありえないんだけど」を解釈してみます。

このもの言いを広辞苑での語釈に照らすと、「ありえない。そうではあるが、」まで表明して、後に続くはずの「それに反する事柄」を省略していると解せます。

「はっきり言わない」「全部言わない」を実践していて、実に日本語っぽいです。

「ありえない」は別途

「ありえない」もまた「ありえない」単体で非常に興味をそそる表現ですが、別の機会に稿を改めて検討することにします。

ありえないんだけど。

「だけど」その後

エロい動画は結局、その「意味がわかんない。ありえない」行為についてうやむやのまま終わってしまいました。

そこもまた超日本語っぽいんだけど。

その2.超かわいいんだけど

日本語話者は「はっきり言う」「全部言う」ことをものすごく嫌います。そうでない者の目線からは病的と言っていいほどです。

言いたいことを全部言った場合、あたかも全部言っていないかのように偽装を施すことすらあります。

その時にも使われるのが「だけど」です。

なにこれ!

iPhoneケースか何かの売り場あたりからだったでしょうか、ある日街を歩いていると、こんな声が聞こえてきました。

「なにこれ!超かわいいんだけど」

聞いてこう思いました。

なにそれ!超面白いんだけど。

「だけど」の解釈(2)

発話の主の言いたいことを推察します。

この事例でも「超かわいい。だけど買わない」だとか、言われていない反対の事柄が意識されているように解することも可能ではあります。

しかし、「単にその場の感興を表明しただけ」というのが、もっとも無理のない解釈であるように思います。

つまり、声の主の言いたかったことは「超かわいい」で全部です。

偽装の「だけど」

全部言ってしまって、ほかに言いたいことがなくても、日本語話者は語尾に「だけど」を付けます。

日本語運用の重要ルール「全部言わない」に反するからです。

「だけど」を付けることで、あたかも「全部は言っていない」かのように偽装されています。

そう思うんですけど。

だけどの仲間:「し」

「だけど」のほかに、語尾に置かれて同様の機能を果たす語句には「し」があります。

    <例文>

  • いや、寝てないし

みたいな使い方です。

「し」の語釈

広辞苑での接続助詞「し」の項では、

話し手にとってつながりがあると意識される事情を指示する

として、次のように記載されています。語釈の記述とそれぞれの例文を整理して並べます

  1. 事柄を並列する際に(略)次の句に続ける。
    「酒も飲まないし(後略)」
  2. 前の句が次の句の理由・原因となっていることを表す。
    「天気は好いし休日だし(後略)」
  3. 否定の推量を表す語の後に付いて、判断の成り立つ条件を表す。
    「子どもじゃあるまいし(後略)」

広辞苑から採った上の例文は、引用元では続きの載った完全な文になっています。しかし、あえて(後略)にしてみました。「はっきり言わない。全部言わない」の実践です。

上の例だけでも、言いたいことなり何が続くかの方向性なりはつかめるのではないでしょうか。

「し」も偽装に使う

「し」もまた、「全部言う」場合に「全部は言っていない」偽装工作に使われます。

こんな会話があったとします。

「さっき寝てたでしょ?」
「いや、寝てないし」

この会話の論点は、寝てたか寝てないかです。

後者の言いたいことは「寝てない」がすべてであるはずです。なのに、「し」とまだ何かあるように偽装されてるし。

まとめ(なんだけど)

まとめます。

語尾に付く「だけど」「し」に代表されるように

  • はっきり言わない。全部言わない。

というのは、日本語運用ルールの第一条ではないかと感じられます。

実際、日本語にはその“第一条”に則るための語彙が豊富に用意されています。「類」「感」「的」「とか」「っぽい」「みたいな」などなどです。これらの語句は、語尾だけでなく、文中にも頻繁に登場します。

また、多くの「いまどきの言い方」についても、運用法の第一条「はっきり言わない。全部言わない」に則した一表現形式と解釈することで説明できる気がしています。いわゆる「若者語」しかり、「コンビニ敬語」しかりです。いずれ詳細に検討していきたいです。

以上なんだけど。

コメント

  1. だけどもだけど より:

    超面白い記事なんだけど。