報告:世間の「入籍」のうち「本物」は最大で約2割でした。

こんにちは。

いまどきの「入籍」について調査しましたので報告します。

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結論

推計した結果、世にいう「入籍」のうち、それが本当に「入籍」である割合は、多めに見積もっても20%程度と判明しました。

反対から言うと、一般人の言っている「入籍」のうち、8割方は本物の入籍ではありません。言うならば「入籍もどき」です。

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解説

結婚することを指して「入籍」と言うことがあります。芸能ニュースでの「入籍発表」「入籍会見」などのみならず、一般人も使います。

しかし当世の結婚の多くは「入籍」ではありません。現行の法制度上、結婚する両人の戸籍は「入る」ではなく「作る」が原則だからです。

婚姻届を出すことを「入籍」というのは、「家」が単位だった旧民法の名残と言える言い方なのですが、世間ではいまだ一般的です。

だったらいま、本当に「入籍」と呼べる結婚はどれぐらいあるのでしょうか?

それを、国が公表している統計データから推計してみました。

「入籍」を考える

「入籍」

この言葉もまた、語法が周辺環境の変化と合っていないために、世界の記述が事象とずれている一例です。

世間の理解は「結婚≒入籍」らしい

俗に、結婚することを「入籍」とも言います。世間一般の理解は、「結婚≒入籍」のようです。

用例として、たとえば次のアンケート調査

でも、「結婚≒入籍」扱いです。

結婚に「入籍」は不正確

しかし結婚する意味で「入籍」を使うのは、用法として正確ではありません。

たとえばこのような指摘があります。

「結婚すること」の意味で使うのは旧制度の名残です。その意味を俗用として示している辞書もあります。

出典:意外? 実は“不正確”な五つの表現|毎日ことば(2014/09/27付)

法的根拠

結婚は、ふつう「入籍」ではない。

その法的根拠は、戸籍法の第16条に求められます。

婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。

結婚するときは、当事者2人の戸籍を新しく作ります。既存のどこかの籍に「入る」のではありません。

それが基本のルールです。

私も婚姻届の用紙をもらうときに、役所の人にそう説明されました。(確かに基本はそうなんだけどね)と思いながら受け取った記憶があります。

入籍となる場合

先ほど引用したツイートにもあるように、「制度上、入籍となる」場合もあります。

該当するケースについては、同じく戸籍法第16条の続きに記されています。

但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。

どういうことでしょうか。

戸籍筆頭者がいれば「入籍」できる

もう少しかみ砕いて説明しましょう。

これから夫または妻になろうとする者が「戸籍の筆頭に記載した者」である状態とは、具体的にはこういう場合です。

  1. 過去に離婚経験があり、その際にa)配偶者を抹消~いわゆる「バツ」~か、b)新しい戸籍を作っていた場合
  2. 初婚だが、成人後のある時点で親の戸籍から抜け、新たに戸籍を作っていた場合

参考:「結婚」を「入籍した」というのは間違い?|AllAbout(2014/12/17付)

補足説明します

  1. 離婚の際には「元の戸籍(通常は親の)に戻る」という選択肢もあります。
  2. これを「分籍」といいます。

これなら「入籍」

で、結婚する両人のうち少なくともどちらかが「戸籍の筆頭に記載した者」であり、婚姻後にそちらの氏(姓・苗字)を名乗ることにした場合には、リアルに「入籍」と呼べるわけです。

該当のケースであれば、元から筆頭者だった者の戸籍にもう片方が「入る」ことになるからです。

なお、ほかにも「筆頭者の戸籍へ入籍」パターンがあるかまでは調べきれていませんが、あってもレアだとみています。上の1. 2.で大半をカバーできているかと思います。

リアルな「入籍」の結婚を数える

では、当世の結婚のうち、どれぐらいがリアルな「入籍」なのでしょうか? それを推計してみました。

算出の大方針:あいまい部分は「多め」側に

算出にあたり、あいまいな部分については「最大」側を求める方針とし、大外ししない範囲でより件数が多くなる側へ倒すことにします。

対象年:2005年

2005年のデータを元に算出します。古いですが、ベストエフォートでの最新データです。詳しくは次項で述べます。

根拠データ(1)

厚生労働省では、人口動態統計の項目のうち特定分野を深掘りした「人口動態特殊統計」を不定期に出しています。

今回の推計に必要なデータは、平成18年度「婚 姻 に 関 す る 統 計」の概況の、(8) 夫の氏・妻の氏別婚姻にありました。

算出に必要となるデータが揃う統計は、どうやらこれが最新のようです。

表を見ると昭和50(1975)年から5年ごとの実数が並んでいました。このなかで最新の平成17(2005)年分を使用します。

推計値の算出

結論から述べます。

2005年の結婚件数(婚姻の届出事件数)のうち、「入籍」だったものは、多めに見積もって147,361件と考えられます。

これは同年の婚姻件数の、およそ20.6%に相当します。

0.総数

714,265件です。

1.再婚での「入籍」

合計で、130,371件(総数の18.2%)です。

次の2つの合計です。

  • 妻が再婚・妻の氏:9,080件
    (内訳)妻のみ再婚 3,317件 + 夫も再婚 5,763件
  • 夫が再婚・夫の氏:121,291件
    (内訳)夫のみ再婚 63,058件 + 妻も再婚 58,233件

※技術論的には、これらのパターンであっても「入籍」とならないケースもありえますが、「多め」に倒し、すべて「入籍」に算入しました。

ここまでのデータはすべて、「婚姻に関する統計」の夫の氏・妻の氏別婚姻に依拠しています。

2.初婚での「入籍」

こちらは、およそ16,990件と見積もれます。(総数のおよそ2.3%)

算出根拠

算出式は、18,878×90% です。

大きく外れない範囲で「多め」を方針として、次のように想定しました。

  • 分籍届の届出件数は、18,878件(2005年)
  • 件数は毎年一定
  • うち90%が結婚する
  • 婚姻後、該当者の氏を名乗る

くり返しとなりますが、初婚でかつ「戸籍の筆頭者」である人というのは、成人後のどこかで「分籍届」を提出した人です。

根拠データ(2)

法務省サイトの【戸籍統計 統計表】から、データの入ったExcelシートが過去10年分程度ダウンロードできます。

この中に、分籍届の件数データも含まれています。

※「他市区町村から送付」は除外しました

なお統計表中の「他市区町村から送付」分は算入しておりません。

「送付」分というのは、届出を受理した自治体から見て、届出事件のうち本籍地を他市区町村にするなど当該となる自治体への送付事案が発生したものという理解です。

もし解釈に誤りがあればご指摘いただければ幸いです。

まとめ

2005年のデータから推計した結果、法律婚(婚姻届を提出する結婚)のうち、「リアル入籍」、すなわち現行の法制度上でも入籍に該当するケースは、多くてせいぜい2割程度であるとわかりました。

言い換えると、法的観点からすれば、俗に言う「入籍」は8割方間違っていることになります。

蛇足

「人の戸籍に勝手に入ってきた」

これは、嫁の定番の罵り文句です。

8割方、事実です。

ご静聴ありがとうございました。