(マジで)考える力の弱い人が「デマ」と言い切れるために―「無人島SOS」デマ考(2)

こんにちは。

出典マニアが反省会を主催します。

はじめに

本文の前にひとつお知らせです。

本件はもっぱらネットに閉じた話なので、Chikirinの日記風に書いてみます。

ブログものまねというジャンル開拓の試みです。

ではここから本文です。まずはおさらいです。

「無人島SOSデマ」顛末のおさらい

こんなブログ記事を読みました。一昨日(6/11)のことです。

無人島に漂流→7年間遭難した女性、ビーチに巨大なSOSを書く→子供がGoogle Earthで発見→無事救出!凄すぎる!→創作と判明 (TдT)|スマリッチ(2014/06/06公開、2014/06/12追記)

しかしこれは、既に原文記事の

Google Earth Finds Woman Trapped On Deserted Island For 7 Years | News Mogul(2014/03/18付)

に対して早々に「でっち上げ(a hoax)」判定が出ていたデマでした。

ヤシりん(誰やねん)も、ひとつ前の記事

で、検証されていた内容をかいつまんで紹介しました。

なお結果的にデマ拡散していた当該記事の本文にも、読者からのそうした指摘が反映され、タイトルの最後の部分に「→創作と判明 (TдT)」が加わっています。

SNSの反応

Twitter:ナイーブバカ発見器

あたしが最初に見たとき、ツイッターでの当該記事への反応の割合は、ざっくりこんな感じでした。

  • 「すごい!」(真に受けている人) 40%
  • 「マジか?」(半信半疑の人) 40%
  • 「嘘くせー」(疑っている人) 20%

リアクションで頭の中のおめでたさ具合がわかるという、ナイーブホイホイ、ナイーブバカ発見器状態でした。

なお「真偽はどうでもいい」という人も一定数いた感触もありますが、議論がややこしくなるのでここでは考慮しません。

はてなブックマーク:さすがの村社会

これもざっくりだけど、はてなブックマークではこんな具合に様相が異なっていました。

  • 「スゴい!」 20%
  • 「マジか?」 40%
  • 「嘘くせー」 40%

さすがの、というか。

ただ、「AともいえるがBともいえる」とか言う人の役立たなさ(2013/11/23付)を若干感じたのもまた事実です。

テキスト自体に、デマのヒントは山ほどあった

ところで、あたしがブログやツイッターを始めてからびっくりしたのは、ネット世界の中には、同じ情報に触れているはずなのに、そこから全然情報を受け取ることのできない人が少なからず実在する、ということでした。それもあたしの想像しないレベルで、あたしの想像以上にたくさん。

「読めない」問題

文章ひとつとってもそうです。

書き手側の書きっぷりにまったく問題がないとは言わないけど、はっきり書いてあることが全然読めていなかったり、どう読めばそういう解釈になるのか、まったく理解できなかったり。

ほとんどの人は生まれたときから何十年間、ずーっと日本語を使って生活しているはずなのに、その日本語で書かれた一般的な文章さえちゃんと読めない人がこんなにいるんだ、って心底驚かされた経験が、ほんとーに、何度もありました。

日本語ですらそうなんだから、それで英語なんかできるわけないじゃん。何より社会がそれを必要としてないのも大きいけど。

だから、「日本人は英会話が苦手」というのは少しおかしいのです。日本人が本当に苦手なのは「会話」です。

同じく、日本人は英文のリーディング&ライティングが苦手なのではありません。本当の本当に苦手なのは「読むこと」「書くこと」そのものです。

ですから、日本語ならできるを前提にしたかのような英語論議に、バカじゃないの?って思うこともしばしばです。日本語でもできてないじゃんって。

不審点だらけのテキスト

たいぶ話がそれました。「無人島SOS」デマ物語の話に戻しましょう。

SNSだと、最後の「ぜひ友達とシェアしてください」で作り話と勘づいた人が多かったみたいです。

けれどもそのくだりがなくても、出典マニアなあたしには、元記事(英文&日本語訳)を1度通読しただけで「それ、おかしくない?」と不審に感じられるだけのツッコミどころが、どんどん出てきました。

たとえこれがネタサイトではなく、(ありえないけど)クォリティペーパーに掲載されたカバーストーリーだったとしても同じです。おかしいものはおかしい。

ここがヘンだよ「無人島のSOSをGoogle Earthで発見!物語」

通読して起こった疑問、奇妙に感じた点を、だいたいのストーリー順に書き並べていきます。

第一印象でのリストですので、調べれば比較的容易にわかるであろうことも含んでいます。

<その前に>

ちょうど1年ほど前に、参考になるニュースがありました。

キャスターの辛坊治郎さんと盲目のヨットマン岩本光弘さんが太平洋横断航海の途中で船体トラブルに見舞われ、自衛隊機に救助されたという事案です。

参考:【軍事のツボ】辛坊治郎氏の海難救助取材記|sanspo.com(2013/06/24付)

そこで得られた知見も一部ふまえて進めます。

*** ここから ***

<出発>編

リバプールからパナマ運河経由でハワイへって、なんのための航海?

「旅行」ではなく「冒険」に属すると思うんだけど、そのテーマがまったく想像できない。

ひとつ前の航海はどこからどこ?

要は、チームの経験・実力に照らして妥当なプランだったのかということ。

<遭難>編

船の電子機器って、そんな簡単にまるごと壊れるの?

特に通信装置だとかのクリティカルな系統には、バックアップがあるのが常識と思うけど、それもあっさりやられたわけ?

遭難信号は?

船のことは全然知らないんだけど、船体にそれだけのダメージを受けたら、自動的に救難要請の信号が出るようにとか、なってないの?

救命ボートは?

損傷のあった船体を放棄せずに残り続けたのは、どういう判断?

というか、問題の島に流れ着くまで海上を漂流していた17日間、イギリス人らは本土で何してたの?

これが最大の疑問。

リバプールが故郷というから当事者はイギリス国民なんだろうけど、連絡が途絶えたのに公人私人諸機関ともこぞって放ったらかしなわけ?

探せよ、マジで

<無人島生活>編

ヤギがいるのに、人のいた痕跡が出てこないんだけど?

「野生のヤギ」に対応する原文はferal goats(野生化したヤギ)。つまり人が持ち込んだ、というニュアンスがある。よって、その島はかつては無人島でなかった蓋然性が高い。

なのに、そういった痕跡を探したとか、家屋などの残骸を利用したみたいな話が全然出てこない。

月経の処置は?

下世話ながら重要。物資がない中でどうするんだろう? あたしの想像力の限界を超えてる事柄です。

昔、電波少年というテレビ番組で「15少女漂流記」という企画をやっていて、いとうあさこさんとか、森三中の黒沢さんとか出てたのを覚えてますけど、同じことを疑問に思っていました。

というか、どこの島?

具体的にどこだよ。

<発見・救出>編

その「SOS」サイン、Google Earthのどこで見られるの?

Google Earthで見つけたというなら、こちらもGoogle Earthで確認したいのが、出典マニアのものの考え方です。

飛んできた飛行機で、そのまま救助して連れて帰らなかったのは、なぜ?

不可解きわまりない話。

◆そもそもこの飛行機は、偶然上空を通りかかったのではない。明らかに「SOS」サインのあったこの島が目的地であった。

で、飛来時は荒天でもなさそうで、着陸または着水になんら支障もなかったはず。

なのに下りてこない。なんで?

◆SOSサインを見つけた場所に「人がいるのでは?」→「助けに行こう」ということになっても、そこに何人いるかまではわからない。

しかし実際には1人しかいなかったのだから「想定より島に人が多くいて乗せきれなかった」というわけでもない。また、フィリピンのジャングルでひとり軍事作戦を継続していた小野田寛郎さん(故人)のケースとも全然違う。

ということで、救助を進めるのに支障となる状況が何一つ見つからない。

にもかかわらず、包みだけ落としていって去るって、なんじゃそりゃ。アホかと。

さらに、落としてきたパッケージ在中の通信機器を使って人と話したくだりなど、茶番にもほどがある。

そんなんいいから、さっさと救助してやれよ。

まとめ

以上のように、整合性を考えるとおかしな点だらけなところから、「作り話。それも、相当に考える力の弱い人による創作」というのが、あたしの最初の仮説でした。

続報の内容からすれば、だいたいそれで合っていたみたいです。

このケースでは既に信頼できる検証結果がネットに公開されていたので、本格的な調査の着手はしていません。

ですがこれがもし、先行する調査がまったく見当たらないか、あっても信頼に足る結果を示していなければ、あたしは上に挙げた疑問点について、自分でひとつひとつあたって、解明を進めていくでしょう。

教訓

一部はくり返しになるけど、SNSでのみんなの意見を含め、元の記事以外に追加の情報を求めるより前に、もっと大事なことがあると思ってる。

それは、

1)「既にある情報を過不足なく読み取る」ってこと。

それができれば、情報なり論理構成なりに、不足しているピースが見えてきます。

そしてもっともっともっと大事なのが、

2)「限られた情報から、後の検証にも耐えられるだけのベストな判断を下す」ということです。

ケースごとに適正ラインは異なるでしょうが、情報の質と量が一定水準を超えてしまえば、情報収集ばかりしていても、無駄に時間が過ぎるだけです。

すぐ「選択」や「決断」と呼ばれる部類の工程に入るべきです。

当然、1)2)の両者とも簡単にできることではありません。できるようになるには、何より「練習」が必要です。

これは『自分のアタマで考えよう』にも書いてあることですが、考える力を鍛えるには、方法論を学んだうえで、地道に実践を重ねていくしかありません。近道はないのです。

「画面に映っていないところ」への想像力

この種の話のおかしさを見抜けるようになるには、テレビのドラマにたとえて言うと、編集されて放送される「本編」じゃなく、制作風景も一緒に収められた「メイキング映像」を想像してみる、そんなイメージになるでしょうか。

ついでに言うと、テレビについて「番組コンテンツは人が作っている」というきわめて当たりまえの事実を忘れているかのような人も、多すぎです。

視聴者根性に染まりきっていて(視聴者なんだから当然と言われればそうだけど)、まるで魔法のように、スイッチポンでなんの苦労もなくこしらえられて出てくるかのような感覚でいないでしょうか。

そんな視聴者根性でいるんじゃなくて、画面の外側、カメラに映っていないところが「どうなっているか?」「どれだけの準備がいるか?」「対応してどう動いているはずか?」って想像をめぐらせてみると、いいんじゃないかな。

一方○○では? とか、××が △△だったらどうなる? とか。

それが想像できるようになったら、ここでの題材である「無人島SOS」レベルの話なら「そんなんでこの画づらが撮れる?」って、疑問点がいっぱい出てくるはずです。

そういった観点から出てきた疑問を一つひとつ解明を進めていけば、自分なりの結論に達することができるし、プロセスが間違っていなければ、結論もそう大きくは外さないはず。となれば、たとえほかに誰一人言っていなくても「おかしい」と意見が出せます。

それが、「自分のアタマで考える」ってことじゃないかなと思う。

周りばかり見て形勢をうかがって、流れが傾いてから「やっぱりそうだと思ってた」みたいに言い出す真似って、ダサすぎです。

そんじゃーね! (ひねりなし)

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