【指摘用テンプレ】それ、デマ。―「無人島SOS」デマ考(1)

こんにちは。出典マニアが黙ってない、または、出典マニアは黙ってろのコーナーです。

現時点(6/12)で日本語での発信元にも追記がされ、事態は沈静化に向かうかとも思われますが、まとめておきました。

お近くに真に受けているナイーブなお方がいましたら、ぜひこちらを知らせてあげてください。

結論:「無人島SOS」をGoogle Earthで発見!の救出物語はデマ

こんなブログ記事を目にしました。

2014-06-12_1943

無人島に漂流→7年間遭難した女性、ビーチに巨大なSOSを書く→子供がGoogle Earthで発見→無事救出!凄すぎる!|スマリッチ(2014/06/06公開)

原文はこちらです。

Google Earth Finds Woman Trapped On Deserted Island For 7 Years | News Mogul(2014/03/18付)

デマです。ぜんぶ作り話です(ネタ元はありますが)。

他人のふんどしを借りて述べると、噂・都市伝説の検証サイト「Snopes.com」で既に検証され、「でっち上げ(a hoax)」と判定済みの案件です。

2014-06-12_dangersign

※見ると、タイトル末尾に「→創作と判明 (TдT)」が加わっていました

デマである理由

Snopes.comでの検証記事:

2014-06-12_1948

Google Earth Finds Woman Trapped on Deserted Island for 7 Years(2014/03/19付)

では、次の4点を「でっち上げ」とする理由に挙げています。

  1. そもそも発信元は、ニュースサイトではなく、ネタサイト
  2. 「SOS」画像は“捏造
  3. テキストは“剽窃”(パクリ・コピペ)
  4. 信頼に足るソースからの同様の情報発信が皆無

さすが、出典マニアに親切なつくりになっていました。

2. 3.について具体的にファクトが適示されていましたので、以下に詳述します。

真実1:「SOS」画像の撮影地はキルギス(2010)

こちらが、「ビーチに書いたSOS」とされていた画像の元ネタです。

2014-06-12_kyrgyzstan-sos-300

The images show over 100 SOS signs in Osh (c) Digital Globe 2010. Produced by AAAS

キャプションからすると、2010年、キルギス南部のオシュ(Osh)を上空から撮影した1枚のようです。

人工衛星画像には違いなさそうですが、出典はGoogle Earthではなく、AAAS(アメリカ科学振興協会)との情報です。

Satellite images released and analyzed by the American Association for the Advancement of Science (AAAS) and Amnesty International’s Science for Human Rights Program show the dramatic impact of the recent violent events on the city of Osh in southern Kyrgyzstan.

以上、Satellite images reveal widespread destruction in Kyrgyzstan|amnesty.org(2010/06/25付)より。

海じゃねーし

中央アジアに位置するキルギスに海はありません。

2014-06-12_kyrgyz_l-thumb-188xauto-727

※画像はamnesty.or.jpより

真実2:テキストのネタ元は、ディスカバリーチャンネルの番組レポ

「無人島生活」を綴ったテキストのネタ元も突き止められていました。こちらです。

2014-06-12_1805

Stranded and alone: Amazon explorer Ed Stafford survives 60 days on his own on a desert island in the Pacific|dailymail.co.uk(2013/03/09付)

無骨な言い回しですが、このタイトルを日本語にするとこんな感じでしょうか。

  • 一人で置き去り:アマゾン探検でおなじみエド・スタッフォード、今度は太平洋の孤島で60日の単独サバイバル

文中のニュアンスから「今度は」を足してみました。

元記事中で、遭難したという女性の「無人島生活」を綴ったくだりは、数値などをいじっただけで、ほぼ全部がここからのコピペです。

元はイギリスの「電波少年」的企画

上の記事本文を読めばわかりますが

TV series on the Discovery Channel

とあるように、これはディスカバリーチャンネル(UK版)の番組企画です。

こちらでハイライトシーンの動画がいくつか視聴できました。13日目「火起こしに成功」シーンからキャプチャしたものを載せておきます。

2014-06-12_1752

NAKED AND MAROONED VIDEOS(discoveryuk.com)

見ていると完全に、かつての「進ぬ!電波少年」のノリです。

そういえば「電波少年」にも、電波少年的「15少女漂流記」(2001)、「15ヶ国少女漂流記」(2002)という企画がありました。

参考:電波少年の歴史(ntv.co.jp)

共通する構図:STAP

われわれは、ついこのあいだ、そっくりの事案を経験したばかり(というか、まだ進行中)です。

理化学研究所が発信源の、STAP細胞論文の捏造事件です。

こちらの方が格段に利害の規模がでかいですが、

  1. (いまから思えば)ネタだらけの記者発表に始まって
  2. 画像の捏造
  3. テキストの剽窃
  4. 他に成功報告が皆無

と、「無人島SOS」デマ案件と面白いほど酷似しています。

いいかげん学びましょう。いやマジで。

悪意を見積もる

STAP細胞論文にかかる不正との共通性が確認できたところで、ここからは確証のない当て推量となります。

日本語での発信元記事の悪意を、2つのシナリオで見積もっておきます。

チェックポイント

シナリオは、コメント欄で「作り話」と指摘されて追記のあった文言:

以上について、真実だと思い感動して紹介してしまったのですが、創作だったことが判明し非常に残念です。記事を閲覧してくださった多くの方にご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。

の解釈により分かれます。

シナリオ1:ナイーブバカ(悪意:0~少々)

上の文言を額面どおり受け取れば、こちらです。

この場合、日本語版の記事を書いた方は、ネタで書かれたデマ英文記事を見抜けなかった、真に受けていたわけですので、「ナイーブなバカ」ということになります。

だとすれば、悪意はほぼ観測できません。

シナリオ2:釣り実験(悪意:少~多)

もう1つが、はじめからネタだとわかって日本語訳記事を仕込んできたケースです。

PV欲しさ、広告収入欲しさが動機の「釣り」といったところでしょうか。

こちらの場合は、公開後にデマを指摘された場合のアクションまで織り込み済みであり、ここまでの経過はすべて「想定内」となります。

となると、いくばくかの悪意が認められます。

6:4で「悪意の釣り記事」説を採ります

どちらかと言えば、悪意を持って日本語訳記事を作ったんだろうなと思います。断言はできませんけれど。

弱いながら2つ理由があります。

まず、原文リンクも示し、曲がりなりにも日本語訳されているという事実です。

当該記事に対するTwitterのメンションにもありましたが、元サイトの英文を訳せる程度に読めるのなら、ネタだとわかりそうなものです。英文の元サイトのたたずまいに、ヒントはたくさんありました。

もう1つは、アイキャッチ画像です。

冒頭の日本語訳記事と、「デマ」判定したSnopes.comの検証記事のスクリーンキャプチャの2つを、並べて再掲します。

日本語訳記事、デマ検証記事の両者とも、アイキャッチ画像が「Google Earthのロゴ」です。共通しています。

この画像は、原文の記事では使われていません。ということは、訳された方は検証サイトの存在も知っていた可能性があります。もちろん、偶然の一致の可能性も大いにありえますから、証拠にはなりませんが。

ついでに学級委員長みたいなことを言いますと、原文筆者の許諾を得ずにまるっと翻訳してしまうのは、著作権侵害にあたる違法行為です。

あとがき

「バカ発見器」とも言われるTwitterで、「発信者本人を含めて」かどうかにかかわらず、当該記事が騙されやすすぎるナイーブなバカをあぶり出す「ナイーブバカ発見器」の役割を遺憾なく発揮しています。

そのさまがほんとに切ないので、微力ながら書いておきました。

「マジか?」という半信半疑ならまだしも、「7年間も!マジすごすぎる!!」的な、めいっぱい真に受けて信じてしまっている反応を見て、どんだけナイーブバカなのかと、自分自身すらほとんど信じていない老人は悲しい思いがします。

次回予告?

出典マニアとしては、元記事(英文&日本語訳)を1度通読しただけで、200回というと盛りすぎですが、20か所ばかりは「おかしくないか?」と不審に思えるツッコミどころが出てきました。

気が向いたらそのあたり別記事にします。

こちらからはひとまず以上です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました