【シン・ゴジラ】ヤシオリ作戦のアレ、電力供給鑑定

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こんにちは。小さなことを語るシリーズです。

「ヤシオリ作戦のアレ、電力どうなってんの?」と疑問に思ったヒマ人が、大ざっぱに鑑定してみました。鑑定結果の報告です。

最初におことわりを。当記事の内容は「鉄」方面の諸姉諸兄にとっては「何を今さら」の当たり前レベルかと思われます。物足りないでしょうが、非鉄部門の一般向け内容とお受け取りくださいませ。

鑑定結果:供給できます

ヤシオリ作戦のアレ、電力供給できるの?

結論から述べます。できます。

動力となる電力供給の観点から評価しても、アレは十分遂行可能ですよ。

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「シン・ゴジラ」より―JR神田駅ホーム南端付近より東京駅方面をのぞむ(2016年11月)

※画像は、funimationfilms.com >Galleryより

いくたびかの鑑賞により、カメラの後ろ側に例のアレがずらりとスタンバイする光景が浮かんできてニヤニヤできるようになった“リピーター特典”のシーンをフィーチャーしてみました。

見てのとおり、少なくともこっちサイドについて言えば、架線および軌条の状況に特段の異状は認められません。全然できるじゃないですか。

ついでにJR神田駅上空視点からのGoogleマップ3Dモードのキャプチャも一緒に貼り付けておきます。「こっち」の世界で言えば、だいたいこの位置です。

2016-10-14_2149

以下、順に述べていきます。


注)なお当記事では、いまなおネタバレを気にして、終始「アレ」でまいります。他方、アレ以外のネタバレはあまり気にしないインバランスです。

要約:Executive Summary

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ポイントを要約します。

新たな発見事実:

今回の調査により、次の各事実が新たに判明しました。

  1. 鉄道は、専用の変電所を持っています。
  2. 鉄道用の変電所は、たぶんあなたが思っているよりたくさんあります。
  3. 東京のJR在来線を動かす電力の半分は、JR東日本の「自前」です。

既知の事項:

巨大不明生物「ゴジラ」の進行ルートと、それらを含んだタイムライン(時系列の経過)の2点については、次に示すリンク先の各ページによって、相当程度まで研究が進んでいます。

  1. 進行ルートについて:
    シン・ゴジラの行動ルートに関する考察3(疑問と訂正と新たな場所特定)|音楽と城と時々アニメ(公開日:2016/08/19付)
  2. 映画本編中のタイムラインについて:
    シン・ゴジラ 劇中の時刻まとめと考察|ふくらみ(公開日:2016/09/09付)

両者の情報を統合し可視化したページもあります。

両者から導ける結論

「既知の事項」「新たな発見事実」の両者を照らし合わせると、巨大不明生物の活動凍結を目的とする血液凝固剤経口投与を主軸とした「ヤシオリ作戦」の実行にあたり、電力供給ルートの復旧ないし応急措置は十分に可能であると結論できます。

こんなツイートがありました。同感です。

指摘のとおり、劇中に準備状況の報告があります。財前統合幕僚長の「仕事ですから」のシーン、数カット前です(報告者は別人)。

当該報告内容の「裏を取ってみた」がこの記事の趣旨でございます。

話はそれますが、できることを相応の根拠もなく「できない」と決めつける思考回路って、なんなんでしょうね。持ち主の心の闇を感じてしまいます。この点つづきは気が向いたら別の記事で。

補足:鎌倉→東京の日付は、2016年11月7日(月)でOK

ひとつ、「既知の事項」のリンク先では「Wikiに書いてあった」とふんわり定まっていた「2度目の上陸の日付」を補強しておきます。ゴジラ第4形態が鎌倉に上陸し、東京駅まで進行した日付は、11月7日(月)で間違いありません。

証拠にできる画像情報は持っていませんが、当日、首相官邸のマルチモニタのいちばん大きな画面の中に次の書式で日付と時刻が映し出されています。

16/11/07
  LIVE
hh:mm:ss

これを直接の証拠としてよいかと思います。私の確認したシーンでは「11:42」の表示だったかな。自分では2度視認していますが、各自確認してみてください。

あと間接的な証拠としては、「シン・ゴジラ」は11月3日(木)からほぼ時系列に沿って順番にシーンが進むので、朝と夜の来る回数を数えても整合が取れます。「鎌倉に」の直前のシーンをふり返ってみましょう。

国会前デモの光景から一夜明けて、首都高霞が関トンネル入口

2016-09-23_0037

※Googleストリートビューより

からの、「ご苦労さまです」「正直、服も部屋も少し臭います」「そうか?」経ての、クリーニングされたシャツ到着といった一連のくだり、これらがいずれも7日月曜日の朝の出来事です。

詳述:電力供給鑑定

最初に出典・資料集として参照サイトのリンク一覧を示してから、続けて当記事での発見事実である

【再掲】

  1. 鉄道は、専用の変電所を持っています。
  2. 鉄道用の変電所は、たぶんあなたが思っているよりたくさんあります。
  3. 東京の在来線を動かす電力の半分は、JR東日本の「自前」です。

を、新幹線と在来線とに分けつつ簡潔に説明する構成で進めます。なお当記事の「新幹線」は、すべて「東海道新幹線」を指します。

出典・資料集

どれをとっても特級品の資料たちです。精読できたら正直この記事いりません。ネットすごい。

また、こちらも比較考量にあたり、適宜参照しました。

付与した資料ナンバー(1)~(6)はこのあと出典番号としても使います。

イントロダクション

映画「シン・ゴジラ」、人気ですね。なかでもヤシオリ作戦のアレが、ものすごくウケてます。

私には、ここまでのウケぶりは思った以上に想定外で、もはや不思議の域です。確かに「画」として面白かったけども、そこまでかなあと。「ラッスンゴレライ」の流行より意味わからん(※当社比)。

だもんで、映画本編を何度か鑑賞しているうちに、「実際問題、アレできんのかな?」とエネルギー的視点で気になり始めてしまいました。ということで少々調べた次第です。

0.一般論としての結論

「鑑定結果」は既に述べたとおりです。できますね。たぶん。

まず、都市が広範囲にわたり被災した場合の一般論として、鉄道は早期に復旧されます。なぜなら、

  • 優先順位が相対的に高い
  • 技術的にはさほど困難でない

といえるからです。

例証として、1945年に撮影された東京の写真をご覧ください。

20161015_640px-Togoshi-koen_Station1945

画像は、昭和20年の東急大井町線戸越公園駅 from commons.wikimedia.org via 出典(6)

「焼け跡」の街並みの中、東急大井町線が動いています。(そう見えます)

昭和20年の何月に撮影された写真かは詳らかでありませんが、街並みの様子と見比べると、優先的に鉄道インフラへ復旧のためのリソースが投入されたと評価してよいかと存じます。

発見事実1.専用の変電所

通常、一般家庭に供給される電力は、交流100ボルトまたは200ボルトです。

細かく言えば大半が「単相」100V・200Vなんですが、交流電力の「相」の話に入るとややこしい(理解が十分でない)ので当記事では飛ばします。

一方、鉄道で使う電力は、

  • 新幹線:交流25000V
  • 在来線:直流1500V

です。だから、かどうかは知りませんけれども、JRはじめ鉄道各社は鉄道専用の変電設備を持っているのが一般のようです。

2016-10-15_1437

※出典(1)p.18に加筆

上の図で見ると、鉄道用変電所へは送電・配電ルートの比較的上流部で分岐していることが分かります。

なおJR在来線の供給方式について「鉄」の視点で言えば、地域によって他のパターンもあります。しかしながら、ここでは「直流1500ボルト」1つのみの提示とします。

傍証:送電系統も問題ない(きっと)

関連して、「ゴジラにより送電系統の一部が破壊されたままであっても、相当程度、バックアップが有効に作用する」と推察できる根拠として書いておきます。

10月12日、東京電力の新座変電所と豊島変電所とを結ぶ275kVの地下送電線「城北線」より生じた火災のため、都内で大規模な停電が発生しました。

2016-10-14_1453

一時は隣接する「北武蔵野線」(新座~練馬ルート)も送電が止まったと報じられていました。

停電は、同じくNHKの報道によれば2時間弱で解消され、各戸への送電は当日のうちに復旧したもようです。

しかし当記事執筆時点(10/15)では現場検証などが未完了であり、次の報道内容から判断するに、当該の「城北線」新座-豊島ルートそのものはいまだ復旧されていないはずです。

東京電力によりますと、水位は30センチほどに下がりましたが、(略)水位の下がり方が鈍いうえに、火災による熱も残っていて、まだ詳しい調査ができる状態ではないということです。

出典:ケーブル火災 東電 16日にも現場の調査へ|NHK NEWS WEB(2016/10/15付)

要は、ここ↓の区間がやられたままでも、全域へ送配電はできてるよね。という話。

2016-10-15_1504

※画像は、[PDF]500kV、275kV系統図(部分・加筆)(公開日:2014/12/05付)
電力系統図|東京電力パワーグリッド

ともかく言いたいのは、公開情報だけで判断しても「破断部を迂回しての送電は十分可能だろう」ということです。(非公開の送電ルートが存在するかは知りません)

ゴジラのケースでも、進行ルート上の地上送電線は切断されるでしょうが、それ以上の被害を生じる特殊な事情は認めがたいです。

発見事実2.変電所は(想定外に)たくさんある

鉄道用の変電所は、たぶん、あなたが思っている以上にたくさんあります。

別の言い方をすると、個々の鉄道変電所の担当区間は短く、せいぜい数km~10km程度です。

したがって、ヤシオリ作戦のアレが行われたエリア、その特定区間にリソースを集中させれば、電力供給設備の復旧ないし応急処置ができると評価できます。放射線量による制約があるとはいえ、劇中の準備期間(15日間以上)があれば十分に可能と考えます。

新幹線の場合

くり返しますと、新幹線の運行に使用される電力は、交流25000Vです。

東京駅エリアはJR東海の品川電力所が担当です。担当区間は

東京駅から多摩川の西側付近まで約18kmの区間

だそうです。【出典(2)a.】

そして変電所ですが、

変電所は約10kmごとに1ヶ所あり、品川電力所管内だけで3ヶ所

とのこと。【出典(2)b.】

18kmの区間に3か所です。

在来線

在来線も、供給方式が「直流1500V」であるだけで、設備の配置状況は同様です。

関与する変電所はここらあたりでしょうか。

2016-10-15_1636

※出典(3)より、Googleマップをキャプチャ

地図内のJR線路上に沿って縦に並ぶマークが、ほぼJR東日本の変電設備です。

たとえこれらの変電設備や付近の架線にダメージがあったとしても、ここにリソースを集中させて復旧(または応急措置)させれば済む、という話です。十分可能です。

付記1:東海道新幹線の車両は60Hz専用

関連して、知っていると楽しいミニ情報のコーナーです。

東海道新幹線の車両は60Hz専用

だそうです。出典(2)「新幹線 お仕事図鑑」の b. 電力②「乗っていて分かる変電所」に書いてありました。初めて知りました。驚愕の新事実であります。

さらに細かいポイントを箇条書きにします。

  • おおよそ富士川と新潟県の糸魚川を結ぶラインを境に東側は50Hz、西側は60Hz
  • そのため、富士川の東側では50Hzの電気が電力会社の発電所から送られてくる
  • 周波数変換所で60Hzに変換する必要がある

地上で周波数変換を行う方式になった理由としては、

  • 開業当時(1964年)の技術で50/60Hz対応をすると車両が重くなるため
  • 直通する山陽・九州新幹線まで含めると、50Hzの区間はごく一部。周波数変換をして対応する方が有利

といった各点が挙げられていました。

もういっぺんくり返しておきます。「東海道新幹線の車両は60Hz専用」という話でした。

付記2:慣性の法則って知ってる?

念のためもう1点付け加えます。ヤシオリ作戦のアレは、通常の運行と目的が違いますので、仮に当該区間の電力供給が万全でなくとも、問題ありません。

たとえ配電が通常どおり(通常比100%)でなくとも、一定区間で車両を加速させられるだけの電力供給ができていれば作戦実行には事足ります。

「あの状況下でアレが実行できるわけない」など浅はかな妄言を吐く向きに、「慣性の法則って知ってる?」と申し上げたいところです。

発見事実3.在来線の電力は、およそ半分がJR東日本の「自前」

新幹線のアレを動かす電力は、先ほど「新幹線 お仕事図鑑」の記述から引用し「交流50Hzの電気が電力会社の発電所から」供給されると述べました。

しかし在来線のアレはそうではありません。確認して驚きました。都内で言えばおよそ半分の電力が「自前」なんだそうです。

東京都内を走るJRの電車の約半分は、環境負荷の少ない水力発電による電力で動いている―。こんな事実をご存知だろうか。JR東日本は、新潟県にある自前の発電所で、信濃川の水を利用して発電している

出典(4)[PDF]クリーンな電力で列車を動かす(JR東日本, 2004)※下線は引用者

まさに自家発電です。文字どおりの意味です。自慰の表明ではありませんよ。それはさておき、国鉄時代の設備を継承した経緯があるようです。その他JR東日本の「信濃川発電所について」に概要が記されています。

同社の信濃川発電所で発電される電力は、

JR東日本で使用する総電力量の1/4にのぼる。主に東京近郊を走る電車へ電力を供給。東京都内だけを見れば、電車の走行や駅構内の照明・空調用など、総電力量の約半分を賄う。

らしく【出典(4)】、当該ドキュメントは

電車を利用する際、遠く信濃川流域の発電所に思いを馳せれば、いつもの電車が違って見えてくるに違いない。

と締めくくられており、ヤシオリ作戦のアレとセットさせるとひときわ「胸熱」感が醸し出されてきます。

また【出典(5)】で信濃発電所からの送電ルート(むろんJR東日本の自社設備)をたどったところ、ゴジラの進行ルートとは交差していませんでした。よってJRサイドの送配電系統(信濃川ルート)に、ゴジラの進行による顕著な被害はなさげです。

そんなこんなで、在来線のアレにもきっと、信濃川の水が少なからず貢献しているはずです。

以上、ヤシオリ作戦のアレ、電力供給はきっとできるよ。という話でした。

むすびにかえて

おしまいに、まとめ代わりの余談です。

私にとってシン・ゴジラは、東宝サイドが謳う

  • 「現実」対「虚構」
  • 「ニッポン」対「ゴジラ」

以上に

  • 「オモテ日本」対「ウラ日本」
  • 「一軍」対「二軍」

そんな基本構造を持った物語に感じられます。

今回ヤシオリ作戦のアレを鑑定しても、「オモテ」対「ウラ」の構図が浮かび上がってきました。

「オモテを支えるウラ」という、この国の基本構造

【出典(4)】のページには、

2016-10-15_1643

電車の安定運行は、環境負荷の少ない水力発電により支えられている

と、うるわしくつづられております。

けれども私としてはここに、明治以降地理的にも顕著となった「オモテ日本を陰で支えるウラ日本」という本邦の基本構造そのまんまを感じ、うっすらざわついてしまうのです。何ゆえあって、信越地方の無人の、もとい、自然の恵みが東京を走る電車の動力を支えなきゃいかんのかと。そしてそういった事実をば、「オモテ」の人間どもははたして具体的に自覚できてんのかと。

新潟県下にはJR東日本の信濃川発電所のほか、東京電力の原子力発電所も、なんなら中部電力の火力発電所もあります。しかし新潟の県域そのものは、東北電力の管内です。

(電力自由化うんぬんの話は今ややこしいので除外)

あるいは「A面」対「B面」

前掲の「オモテ」「ウラ」と似た概念に、「A面」「B面」があります。『キレる私をやめたい』(2016)の著者、田房永子さんの用語です。

ゴジラを内的な「衝動」に見立てた田房さんのエッセイ

は「自己紹介」系のレビューでは出色で、いたく感銘を受けました。この場を借りて紹介します。一読をお勧めいたします。

つられてこのレベルで語り出すと込み入ってきますので、今日はこれぐらいで。

こちらからはひとまず以上です。

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