「変化できる者が生き残る」偽ダーウィン語録、日本上陸は「1999年・IBMルート」が濃厚説

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理論武装をしながら背中はガラ空きなんだって
まあそんなもん

―ゲスの極み乙女。《秘めない私》(2019)

秘めない私
ゲスの極み乙女。
¥255

引用って、便利ですよね。
♪~ だーかーらー、マイナンバーカード。

自由民主党の甘利明です(ウソ)。

甘利明(衆議院議員), 2020

言うとりますけれども。

自民党広報アカウント, 2020

自民党の広報アカウント(@jimin_koho)がツイートしたマンガ「もやウィン」

こちらが多方面からツッコミを受けまくっています。おいしいよなぁと軽くジェラシーを覚えるほどです。

このもやウィン、シリーズ通してナイツの塙さん顔負けのハイペースでボケまくっているんですが、この記事ではこちらの「偽ダーウィン語録」

ダーウィンの進化論では
こういわれておる

最も強い者が
生き残るのではなく

最も賢い者が
生き延びるのでもない

唯一生き残ることが
出来るのは、

変化できる者である

に焦点を絞り、このフェイクがいつ本邦に上陸し、どのように感染クラスターを形成していったかを追ってゆくことにします。

小泉純一郎(内閣総理大臣), 2001

初期の用例として、これに言及するツイート、ネット記事も多くありますね。※下線は引用者。以下同じ。

私は、変化を受け入れ、新しい時代に挑戦する勇気こそ、日本の発展の原動力であると確信しています。進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。

第153回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説(2001/09/27)|kantei.go.jp より

はたして小泉純一郎さん(厳密には、当時のスピーチライターでしょうけれど)は、どこからこのフェイクを仕入れたのでしょうか? もしかして「米国直輸入」なんでしょうか? そんな「小泉以前」をたどるのがこの記事の主眼です。

出典マニアの前口上

もやウィンのあまりにひどいボケっぷりのせいか、殺到するツッコミも四方八方へ発散してしまっている始末です。

たとえば朝日新聞デジタルの次のインフォグラフィックなど、

20200706_AS20200628000933_comm

端的に上手くまとめてあるなと思うのですが、出典マニア的に最も肝心なところがサクッとはしょられてしまっています。

closeup-20200706_AS20200628000933_comm

いやいやいや、肝心なのはココ!この区間ですよ!

1960年代に米国で発生したフェイク語録がいつ日本に上陸し、どのように感染を拡げていったか?

その感染ルート、気にならないですか?

私はめちゃめちゃ気になりました。

だから調べました。貧乏人なのに有料記事データベースの課金地獄に計5000円ぶっ込んで調べました。帰国者・接触者相談センターには相談していません。

調査手順も込みでレポートしますので、内容に疑義があれば追試してみてください。

結論:Executive Summary

結論から書きます。

米国発祥の偽ダーウィン語録は、いつ、どのように日本国内に持ち込まれ、やがて流行を広げていったのか?

最も有力な流入経路は「IBMルート」です。

1990年代末から2000年代前半にかけて感染拡大に貢献したスプレッダーの代表が、日本アイ・ビー・エム社長・会長を務めた北城恪太郞(きたしろ・かくたろう)さんです。※肩書きは当時。以上以下同じ。

20200705_kitasiro

北城恪太郞さん(2004)|kantei.go.jp より

小泉純一郎さんとも「濃厚接触者」です。

ともに慶應大学卒の同窓で卒業年度も近く、小泉内閣メールマガジン第133号(2004/03/18付)には北城さんが「小泉構造改革の応援歌」と題して寄稿するなど、外形的事実からは感染に至るレベルの接触が十分にありそうと推認できます。

よって2001年の「小泉演説」へ偽ダーウィン語録を感染させた蓋然性も高いです。

ただし時系列的に見ると、北城さんが小泉メルマガに登場するのは「フェイク進化論」後ですから、まだ両者をつなぐ“ミッシングリンク”は残っています。

というところで今後の課題として、さらなる研究の進展を待ちます。って、他にやる人いるのか?

偽ダーウィン語録「IBMルート」の軌跡 1999-2007

「小泉以前」を求め、G-Searchの新聞・雑誌記事データベースを利用してみました。小泉首相の「ニセ進化論」所信表明演説のあった2001年9月27日以前の日付を指定して「ダーウィン 生き残る」を検索すると、69件ヒットしました。

ここから「IBMルート」に絞って紹介します。出典情報はデータベース情報のままです。

なおこのサービス、出典マニアには非常にありがたいものですが、運営会社の技術力どおりのいまいちなUIだし、何より検索結果のヘッドライン一覧表示すら有料という課金地獄なので、素人にはおすすめしません。

北城恪太郞(日本アイ・ビー・エム社長), 1999

採集できた偽語録のうちで、最も日付の古いのはこちらです。

「最も力の強い者や最も賢い者でなく、最も変化できる者が生き残る」-。このダーウィンの「種の起源」は、変化の激しいインターネット・ビジネスの世界にも当てはまるというのが、日本IBM社長の北城恪太郎さん(55)の持論だ。

出典:口遊録 生き残りへ変化、挑んでいきたい|中日新聞 1999/09/11付 朝刊

「変化に対応できる」?「変化できる」?問題

文言が「変化できる」となっていて、小泉演説の「変化に対応できる」とは違います。

これは

  • 北城さんがこのとき実際そう言った
  • 談話を取った記者が雑にまとめた

両方の可能性があります。

というのも、後年の北城さんの発言録からも「変化できる」「変化に対応できる」の両パターンが収集できるからです。

日経ビジネス, 1999

「新 会社の寿命 企業短命化の衝撃」と銘打った特集に、偽ダーウィン語録が大々的に打ち出されていました。

最も強いものや最も賢いものが
生き残るのではない。
最も変化に敏感なものが生き残る。
チャールズ・ダーウィン(『種の起源』より)

はいスクショどーん!

2020-07-06_2034

出典:特集 新 会社の寿命 企業短命化の衝撃~IBMが示した企業存続化の条件|日経ビジネス 1999年10月4日号(第1010号) p.46

この記事のPDFファイル(当然有料)を開いた瞬間が、調査のハイライトでした。おおーって変な息がもれましたよ。

それはそれとして、これもIBMです。

IBMの「見事な復活(p.46)」をフィーチャーしたこの特集が、ごく限定的なクラスターであったにせよ、フェイクの感染拡大に大きく貢献したものと推察できます。

英文の「変異」も

あたかも『種の起源』の一節であるかのように偽装された、背景の英文部分もテキストにしておきます。

It is not the strongest of
the species that survives,
not the most intelligent,
but the one most
responsive to change

おなじみの文言に見えますが、研究史的に重要なのは「responsive」と小さな変異が見られることです。ここ、1999年以前の米国の用例はすべて「adaptable」でした。

こちらの記事にまとめてありますのでおヒマならどうぞ。

20世紀アメリカにおける偽ダーウィン語録「変化できる者が生き残る」の変遷【対訳付き】
出典マニアの調査研究ノートです。といっても、すべて孫引きです。すまんのう。自民党広報アカウント(@jimin_koho)発のツイートから俄然盛り上がっていたので、フェイクとして名高い、例のダーウィンの名を騙った偽語録の文言が、どういう変遷を...

リードからも引用しておきましょう。

 「最も強いものや最も賢いものが生き残るのではない」
IBMの経営戦略部門は毎年、年初に「グローバル・マーケット・トレンズ」と呼ぶ市場動向を詳細に予測した社内文書を作成する。IBMの航海図とも言えるこの文書の1999年版は、ダーウィンの『種の起源』の一節から始まる。

だそうです。『種の起源』にそんな一節、ないんですけどね。

 「最も変化に敏感なものが生き残る」――IBMは生物の進化法則の中に企業存続の条件を見いだし、常に変わり続ける企業を目指す、と表明しているのだ。

なるほどですね(ビジネス応答)。

なお、西暦2020年時点から評価するならば、「敏感」というワードは生き残れず淘汰されていますね。

Global Market Trendsは、未確認

当記事で追っている偽語録は、日経ビジネス1999年10月4日号いわく、1999年年頭のIBMの社内文書「グローバル・マーケット・トレンズ」に載っているとのお話でした。けれど、冒頭にでかでかとフェイク語録を載せた特集記事が伝えるソースを、そのまま額面どおり受け取るわけにはいかないですよね。

ということで本当にそこに載っているのか確認したくて探したんですが、残念ながら未確認です。『Web Portals and Higher Education』(2002)Chapter 6のReferencesによると、IBMのGlobal Market Trendsは「Unpublished」らしいです。マジか。

2020-07-06_2025

(同書 p.84より)

確認には所蔵の図書館を探し出すところからとなりそうです。素人にはオススメできない図書館として(自分だけに)おなじみ、こういうのが得意そうな神戸大学経済経営研究所 付属企業資料総合センターも、Webの所蔵資料リストを見る限り望み薄でした。アメリカに調べに行けるだけの資金を作れたらいいのですがねぇ。

素人にはオススメできない図書館:神戸大学経済経営研究所 附属企業資料総合センター
こんにちは。 出典マニアの「小さな旅」日記です。 出典マニアの「神戸・小さな旅」 先週、春の陽気に誘われて、神戸まで出かけてきました。 行き先は「神戸大学経済経営研究所 附属企業資料総合センター」です。 名前の...

ただ少なくとも、そういう名前の文書が存在するらしいことと、それがIBMの社内文書であることは確かみたいです。

ということで次。

北城恪太郞(日本アイ・ビー・エム会長), 2000

北京での講演録です。

ダーウィンは「種の起源」にこう書いている。「最も強いものが生き残るのではなく最も賢いものが生き延びるわけでもない。唯一、生き残るのは変化できるものである」と。インターネットの世界は変化する社会であり、変化に対応し、変化をつくり出せるような企業、個人がけん引していく世界になるだろう。

出典:第11回日中交流シンポジウム 9月5日 北京・友誼賓館 暮らしを変えるインターネット 基調講演|中日新聞 2000/09/20付 朝刊

こちらも「変化できる」です。

極めて近いフェイク配列

それはそうと、この用例、もやウィンの言いぐさとすごく近いですね。両者を比べてみましょう。改行は調整しました。

自民党広報「もやウィン」(2020)
最も強い者が生き残るのではなく最も賢い者が生き延びるのでもない 唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である

北城恪太郞(2000)
最も強いものが生き残るのではなく最も賢いものが生き延びるわけでもない。唯一、生き残るのは変化できるものである

漢字かな表記や句読点の打ち方の違いを除くと

  • 生き延びる「の」でもない/生き延びる「わけ」でもない
  • 生き残る「ことが出来る」のは/生き残る「」のは

だけの違いです。バーバラ・マクリントックに続いて、動くフェイク遺伝子トランスポゾンを発見した気分です(言いすぎ)。

ここまでが、「小泉以前」の北城恪太郞さんによる偽ダーウィン使用記録です。

北城恪太郞(日本アイ・ビー・エム会長), 2005

もちろん、「小泉以後」も北城さんの口舌は健在でした。

 北城会長は「講演の最後はいつもこの言葉を紹介している」と前置きした上で、「生き残ることができるのは、強いものでも賢いものでもない。変化に対応できるものだ」と、「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉を引き合いに変革の必要性を改めて強調した。

出典:「日本の新たな成長のため、企業はイノベーションを」と日本IBMの北城会長(大和田尚孝)|日経クロステック(2005/05/25付)

こちらは、「変化に対応できる」パターンです。

「もっとも、講演を聴いていただいた方から、『変化が重要と言いながら、いつも最後にダーウィンの言葉を紹介する北城さんの講演スタイルは変化がないではないか』とご指摘いただくことがある。だが、生き残りには変化が重要という事実はいつも同じなんだ」と述べ、会場を沸かせた。

こんなビジネスギャグも仕上がっていた様子です。

「いつも」と指摘できるほどのリピーターなら、その言葉がフェイクであることも伝えてみたらどうだったかな、などと夢想するのでした。

北城恪太郞(経済同友会代表幹事、日本アイ・ビー・エム会長), 2005

同じく2005年付の広告特集記事に残っていました。

では、いつも引用するのですが、ダーウィンが言ったとされる言葉で締めくくりたいと思います。 「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るわけでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。」

出典:立教大学の改革と挑戦 2006年 新学部・新学科開設記念 連続シンポジウム 採録『グローバルに活躍する人材』(2005/10/11開催)|asahi.com

北城恪太郞(日本アイ・ビー・エム最高顧問), 2007

確認できた範囲だけでも9年目となり、どんなテーマでも「最後はコレ」とすっかりテンプレ芸としてできあがっていて、どこか風格すら感じられます。

4.終わりに

教育改革についていろいろ議論されているが、単に学力の向上を求めるのではなく、日本社会が求める人材の育成、すなわち、「イノベーションの担い手」をいかに育てるかの観点で改革が実現することを期待している。終わりに、チャールズ・ダーウィンが言ったとされる言葉を記したい。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるわけでもない。
唯一生き残るのは、変化できる者である。」

出典:活力ある日本を創造する「イノベーション」の担い手の育成|特集 大学教育への社会の期待|大学教育と情報 2007 Vol.16 No.2(通巻119号)|私立大学情報教育協会

こちら、2000年版と文言に変化なしです。

もっと強気で行け。

ただ、とっくに過ぎた話で今さら詮ないのは重々承知ですが、2005年10月以降の北城さんの講演では、ダーウィンが「言ったとされる言葉」となっていて、どこか腰が引けたもの言いに退化してしまっているのが心配です。『種の起源』に載っていない事実を指摘されでもしたのでしょうか。よくよく見ると、2000年バージョンまであった「種の起源」も消えていますね。

今なら「もっと強気で行け」とメモを渡せるのにね。

♪~間違いないダーウィンがしたいなら他を当たってちょうだい って感じ?

私は強気よ
弱気はあなたよ

―ゲスの極み乙女。《秘めない私》(2019)

『巨象も踊る』は「ぬれぎぬ」

ちょっとした事情通を自負する方だと、IBMと聞いて、アレじゃねーの?と連想した向きもおありだったかもしれません。

偽ダーウィン語録とからめて、『巨象も踊る』(2002)への言及もネット世間には散見されました。1990年代のIBM復活の立役者であるルイス・ガースナーが、会長・CEOの任期を回顧した著作です。

いわく、ガースナーの就任時にこの偽ダーウィン語録をうんぬん、あるいは、IBMのアニュアルレポートにこのフェイクダーウィンがうんぬん、といった具合です。

結論から述べると、ぬれぎぬです。

『巨象も踊る』のダーウィン

確かに、同書には「ダーウィン」が出てきます。しかし、この1回だけです。

ダーウィンの言う適者生存の法則が通用しない会社が多い。もっとも適したものが生き残るのではなく、もっとも肥満したものが生き残ることが少なくないのだ。(p.300)

もしかすると邦訳では省略してあって、原書だけにあるのかもと思って原書の方も探してみたんですけど、

The Darwinian concept of survival of the fittest unfortunately doesn’t work in a lot of companies. Instead, too often the rule is “survival of the fattest.”

と、同様の記述しかありませんでした。

この事実からガースナー本人は言っていないとの結論は導けませんし、ここまでの調査結果のとおり、例のフェイクがガースナー時代のIBM社内から流出した可能性も濃厚ではあります。けれども間違いなく言えるのは、少なくとも『巨象も踊る』に対しては濡れ衣だということです。

ミニ情報:ダーウィンの「適者生存」は第5版から

そして適者生存(survival of the fittest)というワードは、ダーウィンも使っています。初版刊行から10年後、『種の起源』第5版(1869)に登場します。

参考:Darwin and Natural Selection|palomar.edu

この事実は、Darwin Onlineで確認できます。ですから「適者生存」は「ダーウィンも言っている」案件です。

アニュアルレポートには不在

また、ibm.comのPast Reportsから、1995年以降のアニュアルレポートが閲覧できます。ガースナーが巻頭であいさつしているのは2001年のレポートまでです。つごう7年分のレポート全部をざっと見ましたが載っていませんでした。

見落としがあるといけませんので、あるというならここですと示してほしいところです。

まとめに代えて:これまでのあらすじ

「小泉以前」を突き止めるはずが、それを超えて、後ろ半分は北城恪太郞さんの語録の変遷をたどる内容になってしまいましたね。

最後になりましたが、おさらいも兼ねて、ここまでの経緯を簡単にふり返ります。

先行研究

多くの方が指摘されているとおり、ダーウィン語録としての「変化できる者が生き残る」うんぬんは、米国発祥のフェイクであることが既に確定的です。先行研究の状況と米国内での文言の変遷とを先にまとめておきました。

先行研究まとめ:「変化できる者が生き残る」例の偽ダーウィン語録1963-2020
自民党広報ツイートの「もやウィン」騒ぎに乗り遅れた人も話についていけるように、先行研究をまとめました。ただし、ダーウィンのフェイク語録にのみ特化した、出典マニアの私だけがうれしい視点となっております。極論すれば、残りの論点はみな、どれも形...
20世紀アメリカにおける偽ダーウィン語録「変化できる者が生き残る」の変遷【対訳付き】
出典マニアの調査研究ノートです。といっても、すべて孫引きです。すまんのう。自民党広報アカウント(@jimin_koho)発のツイートから俄然盛り上がっていたので、フェイクとして名高い、例のダーウィンの名を騙った偽語録の文言が、どういう変遷を...

では日本国内ではどうだったの? の要所を、この記事にまとめた次第です。

くだんの「もやウィン」を受けて出たネット記事、

ダーウィン進化論。生き残るのは「変化できる者」ではなく「運が良かった者」|辺境生物はすごい!|長沼毅
「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」 ダーウィンが言ったとされるこの言葉は、自己啓発系のセミナーや記事などでよく使われ、ついには政治の場面でも引用されました。 しかしこれは彼自身の進化論に照らし合わせてみると、そんなことは言っていないというのは明らかです。 生物の観察を通じて人間の生き方を考える、...

ダーウィン進化論。生き残るのは「変化できる者」ではなく「運が良かった者」|辺境生物はすごい!|長沼毅(2020/06/25付)

といっても名前の出ている長沼毅さんが記事を書いているわけではなく、既刊の自社書籍から抜粋してのプロモーションなわけですが、それはそれとして、そのイントロダクションにこうありました。

「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」

ダーウィンが言ったとされるこの言葉は、自己啓発系のセミナーや記事などでよく使われ、ついには政治の場面でも引用されました。(後略)

(幻冬舎plus・柳生)

ここ、半分正しく、半分間違いです。

「半分間違い」から説明すると、順序が逆です。むしろ小泉純一郎さんの演説ではじめて知った人が大半だったはずです。

当時のネットの痕跡に「ダーウィンそんなこと言ったっけ?」「『種の起源』にはなかったよ」といったやり取りが残されているのが、その証左です。

ダーウィンは「変化に最も対応できる生き物が生き残る」と言ったか?(natrom.sakura.ne.jp)

を読むと、初めて聞いた人たちのやり取りに見えます。もしそれまでに見聞きしたことがあるなら、疑問を呈するにしても「よく聞くけど」とかの枕詞が付いたり、「あああれね」的な反応が見られるはずです。

国会会議録検索システムも手っ取り早いソースになります。国会会議録に登場するのも、2001年の「小泉演説」が最初です。ともかく、ネット環境の変化も相まって、ネットに残る「小泉以前」の用例はまれです。

次回予告

「ついには政治の場面でも」を「半分正しい」としたのは、実際調べてみると、当たらずとも遠からずだったからです。

先述のとおり、1990年代末からドメスティックなビジネス界で偽ダーウィン語録の使用例が見られます。そして、1999年当時の日本IBM社長だった北城恪太郞さんが、2000年代にかけてこの偽ダーウィン語録の感染拡大に貢献したことは間違いないでしょう。

今回の調査研究で、記事データベースから「小泉以前」の偽ダーウィン語録を見つけられただけ拾ってみたので、いずれご紹介します。「自己啓発系のセミナーや記事など」かどうかは、各自で判断してください。

ひとまずそんなところです。

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