荒木香織さん「人生のパイセンラジオ」(2)(2016/06/18早朝 OA)

NHKラジオ深夜便「明日へのことば 荒木香織」をテキストにしています。(1)のつづきです。

画像は、ストリーミング|ラジオ深夜便 より

ラグビー日本代表を変えたスポーツ心理学(2)

おおまかな話の区切りで適当に見出しを付けました。

陰の立役者

――そして、歴史を変えた陰の立役者が荒木さん。陰の立役者って言われているんですよね

荒木「大した仕事してないんですけどね」

いやいやいや。えー2012年から、15年までの3年半、メンタルコーチを務められました。そもそもラグビーとの縁というのはあったんですか?

「幼なじみがラグビーをしていたりとか、弟もラグビー選手でしたし、周りにラグビーをしている人は多かったですね、はい」

わりとお好きだったんですか荒木さん自身?

「わりと、っていうかものすごく好きでした。はい」

ものすごくお好きという

「観るの、観るのがね。はい」

ああそうですか。で日本代表とはどういう経緯で関わることになったんですか

「いきなり電話がかかってきて。メンタルのコーチを探しているので面接に来てくださいっていう電話が、協会からかかってきました」

協会からかかって。でどうしたんですか

「会いに行きました」

会いに行った。で

「エディーさんと面接です。はい」

でどんなことを聞かれたんですか

「うーんなんか、何を勉強してきましたかとか、どんなチームとどういうメンタルの、コンサルテーションをしてきましたかとか、問題のこう例みたいなのを挙げられてこういう場合はどういうふうに解決していきますかとか、まテストですよね。そういう感じでした。1時間ぐらい話しました」

で後日、連絡が来た

「そうですね。エディーさんからメールが来て、興味があるなら、やってみませんかみたいな、メールだったんですけど、どうしようかなと思ってしばらく放っときました。ふははははは、はは、はい」

でも行くことになった

「まあ、機会をいただいたので自分の力を試してみようかなという感じですかねどちらかと言うとはい。ダメだったらね、切られるので。ふふふはは、はい」

それまで日本代表には、メンタルコーチっていう人は、いたんですか

「いないですね。初めてです」

はじめてですか

「はい」

はぁー。じゃあエディーさんが、わりとメンタルコーチのような人を置く人なんですか

「そうですね、オーストラリアでも代表で必ずいたらしいので、エディーさんの考えですね、はい」

海外にはわりと、メンタルコーチというのはいるんですかチームに

「はい、いますね」

じゃあ日本がいなかった方がわりと、珍しかったんですか

「そうですね」

ほぅ~。でメンタルコーチっていうのは具体的にどういうふうに選手とかかわっていくんですか

「まあその、メンタルの仕事をしている先生にもよります。講義形式で何か伝えていく先生もいらっしゃいますし、まあやり取りのしかたはいろいろですけど、私はもともと陸上競技をしていたんで試合とか練習に関してはまったくこの抵抗がないので、普通にこうジャージを着てみんなと一緒に準備をしたり片づけをしたり、練習を見たりしながら、一緒にご飯を食べながら、過ごすタイプです。はい」

そういうふうにしながら選手をまあ、観察っていうか、見てるわけですね

「そうですね。基本的には観察をして、えーと課題があるのでいろいろなことに取り組んでいるので、その取り組んでいることを練習中にできているかっていうのを見たりとか、あとは近くにいるので話しかけてもらいやすいので、何かあればね、すぐ、ちょっとって言われる感じで。はい」

具体的にはですね、どういう作業を進めていくんですか

「うーんとー、関わりとしては、リーダーシップグループというのがあってですね、リーダーズって呼ぶんですけど、キャプテンを中心に5、6名の選手を中心にまあ、私とみんなで話し合いをして、チームの運営について話し合うことをまずひとつ、します。それはまあエディーさんに報告もしますし、エディーさんの要望があればそれを落とし込んでいったりもしますし、基本的にはコーチ、スタッフだけにこうチームの運営を任すんではなくて、えっと選手が、自主的に自分たちのことについて考えられるように、ラグビーについて考えられるようにっていうセッションがひとつあります」

「あとは皆さんご想像のとおり、個人的に選手と話し合いをしたりとか、取り組みがあるので個人的に選手と取り組んでいきます」

個人的に選手と取り組むというのは、誰々さん来てくださいというような、感じでするわけですか?

「いや、私は来てくださいとは言わないので、選手が何かこう改善したいところがあれば、どうしたらいいですかって話しをしに来るので、現状を聞きながらどうしましょうってコンサルテーション、相談をしていきます。はい」

日本代表スクール☆ウォーズ

――ほぉー。まあ、リーダーズグループというのを作りました。個別にもします。どんな話が選手側から出てきて、荒木さんはどんな提案をされたんですか

荒木「わかりやすいのは、いちばんはじめ、日本代表のチームが始まったときに、勝つ気がしない」

勝つ気がしない

「やる気もしない」

やる気もしない

「勝ったことのないチームですからね」

あぁー。ずーっと負けていたんですよね20何年

「(20と)4年間、1回しか勝ったことがないので、僕たちにもできるという気がしない。ていうところは、いちばんはじめわかりやすいかもしれないですけど、そういう気持ちですっていうことを、伝えられたときに、じゃあ、どうしようか」

「自信は自分たちで付けるしかないし、誇りは自分たちで作りあげるしかないので、誰かに与えられるものではないので、どうすれば誇りを持てるか、自信を持てるかっていうのを考えましょうっていうことで、目に見える形で行動に移していくっていうことが大切ですから、じゃあ何をするかを決めました」

で何をしたんですか

「話し合いをいろいろした結果、君が代について、まああの取り組んでいく必要があると。なぜかというと、他の諸外国のチームは必ず、大きな声で歌を歌って試合に臨むんですけど、日本代表はそういう感じではなくて。だからそのへんやっぱり始まり、試合の始まりっていうのは大切なんで、世界のレベルに達するように、同じようにやっぱり大きな声で歌を歌うことは大切ですねっていうことを、選手がもちろん、提案するので、じゃあそれにしましょうと」

「だからはじめはものすごくこうなんか、取って付けたような取り組みでしたけど、でも最後は習慣となりましたから、勝つチームっていうのはどんなんだろうというのを考えながら、勝つチームというのはたぶん前日にちゃんとこういう練習をするだろうねってことで、前日に音楽をかけてしっかり歌う練習をしたりとか、っていうことに、つなげていきましたし、ラグビーがこれから発展していくようにっていう取り組みはたくさんしました。自信がつくように誇りが持てるようにっていう取り組みはたくさんしました」

試合前に君が代を歌うシーンは、みんなで肩を組んで、胸を張って歌うんですよね

「そうですねぇ。日本のこのねぇ、国の名前を持って、みんなの勇気をもらってっていう感じですよね、はい。皆さんの応援がないとやっぱりがんばれないので、大きな選手に当たっていく、勇気が出てこないので、はい、そういう意味では胸を張ってっていう瞬間ですよね、はい」

強い選手は、強そうに見えますもんね

「うーん。やっぱり、そのどっちが先かがわからないんですけど、強そうに見せることによって強いぞと思わすのか、本当にこう、強いのでそう見えるのかわからないですけど、日本代表選手はそのへんは心がけましたよね。弱そうに見えたらたぶん負けるので、強そうに見えるように振る舞うことは、心がけましたね、はい」

ああそうだ。やっぱり心がけたんだですか

「勝者のように振る舞えっていいますが、自己をどのように提示するかっていう、自信があるように提示するのか、自信がなさげに提示していくのかで、だいぶ印象が変わっていきますから。そのへんは世界に見習えじゃないですけど、そんなね、背中を丸めて歩いているようなチームじゃきっと勝てないと思いますから、はい。そういうことも、トレーニングに中には入れていきましたね、はい」

そして自主性が大事なキーワードだと、先ほどおっしゃいました。自主性を育てるのに、たとえばどんなことをしたんですか

「日本の、あのぅ、アスリートは、教わったことを考えながら体を動かすことは得意なんですけど、なかなか自分たちで、自分たちに合った、どういうことがいいのかっていうのを自分たちで考えながら進めていくのはあまりできないので、エディーさんはそのへんをものすごく指摘をしていて、自分たちが何がやりたいのか、どういうふうに動けば動きやすいのかっていうことを発信していってくれっていうところはすごくあったので、その辺はもう話し合いしかないですよね。自分たちで話し合って自分たちは何をしたいか自分たちは何が得意なのか、できることが何かっていうことをほんとに、毎日細かい作業ですけど、ただそれを挙げていくだけっていう作業もたくさんしましたし、そういう中で考える力とか自分たちで前に進めていく力、自分たちにできることは何かっていうことを確認できる力っていうのはついてきましたから、細かな作業のくり返しです。はい」

環境づくり

荒木「あのぅ、しょうもない話かもしれないですけど、自分たちでどうすればいい環境を作っていけるかっていうところですよね。たとえばゴミが散乱している中でなかなかウエートのトレーニングはしにくいので、自分たちできれいな環境を作っていこうっていうところで、ゴミの袋の位置がどこにあった方がペットボトルが捨てやすいかとか、しっかりウエートのね、ウエート場がきれいな方が、トレーニングもしやすいので、そういう環境づくりを自分たちでしていこうっていう取り組みもしました。だから行動っていう意味ではラグビーだけじゃなくて、ラグビー以外の、日常生活の中での規律正しく、やっていくっていうことは心がけましたね」

ほう

「まあ当たり前のことのように思えるんですけど、40人50人の選手が靴を脱ぐと、やっぱりそんなにきれいには見えないので。ただラグビーは規律のスポーツですから、規律を乱すと相手にペナルティのチャンスを与えることになりますから、やっぱりオフの、フィールド以外のところでもしっかり靴をまっすぐ揃えて脱ぐっていう、規律正しく行動する、自分の行動を見直すっていうふうな、細かいところですけど、そういうところを見直していかないと、いいラグビーはできないので、はい」

でだんだんだんだんその、誇りですとかね、自主性ですとか、勝つ気がしないとおっしゃってましたが、勝つんだと、いうようなチームになっていったんですか

「当初、世界ランクトップ10が目標だったんですよ。15位でしたから、うーんもう少しがんばれば届くかなっていう目標をエディーさんは掲げたんですけど、3年目にあっさりクリアしまして、世界9位までいきました。そのときに、テストマッチといって国同士の対決の試合で11連勝してるんですけど、そういうまあ、経験の中から、勝てるんだ、僕たちにもできるんだっていうふうな3年目を過ごしてますよね。そして4年目ワールドカップでしたから、はい」

勝つチームになっていったんですね

「勝ちましたからね。11連勝は日本のラグビーの歴史上新記録なんですけど、歴史が変わってるはずなんですが、まったく注目されずに(笑)、終わってしまってますので、そこからまあ歴史を、もっとすごいことをしないと歴史が変わらないんだっていう意味でも、歴史を変えていくっていうのはキーワードにはなってましたね」


つづく

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