「非開示」東京都は黙殺?「Rio 2016」不都合な真実

こんにちは。

ひとり遊び日本代表のデザイン芸人だけが楽しい「週刊ひとり新潮」シリーズです。記事タイトルもそれっぽくつけてみました。

内容的には、教えて!「桜」の招致エンブレムが使えない理由【五輪エンブレム問題】(2015/08/25)の一部と重複しています。そちらでは本題に埋もれてしまった感があるので、今回新情報を加えて、独立の記事にしました。

要約:Executive Summary

2016年のリオデジャネイロオリンピックが成功すると、東京都の都合が悪くなります。というのも、次のような事実があるからです。

  1. 東京都は、オリンピックの開催地がIOC等と結ぶ「開催都市契約」を、「計画・開催に多大な支障をきたす」などの理由で開示していません。
  2. 「Rio 2016」の開催都市契約は、リオ五輪組織委員会のWebサイト(rio2016.com)で公開されています(PDF)。公開についてIOCとも合意済みだそうです。

都の言い分どおり、リオ五輪が「計画・開催に多大な支障をきたす」大会となるのか、今から楽しみです。

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オリンピック招致が決まると結ぶ「開催都市契約」

まずは基本情報として。

オリンピック競技大会の開催地に選ばれた都市は、ただちにIOC(国際オリンピック委員会)、NOC(国内オリンピック委員会; 日本の場合はJOC)と「開催都市契約」を結びます。

2020年大会の開催地となった東京も、決定翌日の2013年9月8日に開催都市契約を締結ずみです。

1.「非開示」の東京

この「開催都市契約」に対し、契約締結の10日後(2013/09/18)に、誰かが都に開示請求を出していました。

で、請求に対する東京都の決定は、「非開示」です。

出典:情報公開審査会(新規諮問 第871号)|東京都(2013/12/03付)

非開示の理由(抜粋)

非開示理由から抜粋しておきます。面白いところに線を引いておきました。

  • 開示すれば当該団体の事業運営上の地位が損なわれると認められる
  • 契約当事者には守秘義務が課されているところ、これを公開すれば契約違反となる
  • IOCとの信頼関係を著しく害しオリンピック計画・開催に多大な支障をきたすおそれ

といった言い分です。

異議も却下

請求側からは非開示決定を不服として異議申し立てがありましたが、1年ばかり経って結局却下されていました。さほど読んで面白い文書でもないですが、下のリンクに詳細があります。

都の情報公開審査会による審議の結果、非開示の決定は「妥当」と結論づけられています。

ここまでは当ブログの過去記事で既報のとおりです。

2.「開示」のリオ

東京のひとつ前の夏季大会、すなわち、2016年のリオデジャネイロ大会での「開催都市契約」の扱いはどうなっているのでしょうか。調べてみました。

結論を書くと、組織委員会のサイト「rio2016.com」で公開されています。

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HOST CITY CONTRACT Games of the XXXI Olympiad in 2016(PDF)

http://www.rio2016.com/en/transparency/documents からダウンロードできます。

なお、上記ダウンロードページには、

The International Olympic Committee agreed to release the text of the main body of the agreement.

IOCは、契約書の本文テキストの公開に同意済み。【拙訳】

と記されています。

東京の契約書も、「米(こめ)リークス」からテンプレ入手可能

東京都が非開示に徹する2020年の開催都市契約ですが、実はそのテンプレートなら、USOC(米国オリンピック委員会)のサイトで公開されています。

HOST CITY CONTRACT Games of the XXXII Olympiad in 2020 [template](PDF)|teamusa.org

USOC statement regarding the release of the 2020 Host City Contract template|teamusa.org(2015/05/14付) からリンクされています。

テンプレートとはいえ、東京サイドからすればひどい「こめリークス」なんですが、いまだUSOCに対し、東京都が何らかの抗議をした形跡は認められません。変なの。

Rio 2016「不都合な真実」

東京都にとって、リオデジャネイロ五輪がうっかり大成功して記録/記憶に残るような大会になってしまうと、「つづく東京も負けられない」とかいうのとは全然違う意味で、都合の悪いことになります。

もう一度、東京都が「開催都市契約」を非開示にしている理由を抜粋します。

  1. 契約当事者には守秘義務が課されているところ、これを公開すれば契約違反となり、
  2. 当該団体[IOC・JOC]の事業運営上の地位が損なわれ、
  3. IOCとの信頼関係を著しく害し、オリンピック計画・開催に多大な支障をきたすおそれ

なにしろリオの組織委員会は「開催都市契約」をまるごと公開してしまっているのですから、都の言い分にしたがえば、2016年のリオデジャネイロオリンピックは「IOCとの信頼関係を著しく害し」まさに「計画・開催に多大な支障をきたすおそれ」を抱えた状態で開催を迎えるわけです。

本当かよ。

リオ五輪がどんな大会となるか、本当に楽しみです。

以上、本題はここまで。あとは、細かい人のための付け足しです。

付記:リオ・東京「開催都市契約」機密保持条項読み比べ

公平を期すために、2つの開催都市契約、すなわち「Rio 2016」と「TOKYO 2020テンプレ」とを読み比べてみました(と吹きつつ、目次レベルだけ)。

微妙に追加されている条文

全体の構成はそれぞれ

  • Rio 2016:全12章・79条
  • TOKYO 2020:全12章・87条

となっています。2020年版テンプレでは条項の数が増えています。

機密保持に関して追加された「TOKYO 2020」版

「TOKYO 2020」版には機密保持の条項が追加されています。具体的には、第85条の「Confidentiality」です。

当該条項の冒頭を、前掲のPDF文書「HOST CITY CONTRACT Games of the XXXII Olympiad in 2020 [template]」から引用します。

Each of the parties hereto agree to keep confidential this Contract and all confidential data and information provided to such party by any other party in connection with the negotiation, execution and performance of this Contract,

各契約当事者は、本契約書ならびに本契約に係る交渉、執行および遂行において他者より当該契約当事者に提供された守秘データおよび情報について、機密を保持する旨、本項をもって合意する。【拙訳】

こうした条項は、「Rio 2016」版には見当たりません。

「TOKYO 2020」開催都市契約の条文もテンプレートどおりだとするならば、都が非開示としている根拠は、この第85条の記述にあると考えられます。

一方「Rio 2016」版の場合、守秘義務について「TOKYO 2020」版ほどには明文化されていませんでしたから、その点で契約条件は同じではありません。

ヘイヘイ東京びびってる?!

しかしながら、上の条文の第1文は次のように続きます。

unless and to the extent that disclosure is necessary for financial, legal or governmental proceedings.

ただし、財務的、法的、または政治的手続きのため開示が必要な範囲においては、この限りではない。【拙訳】

都の「開催都市契約」の非開示決定では、結果的にこちらの記述がガン無視されています。開示の必要性を認めたくなくて、公開できないのかしらん?

まとめ:非開示、なのに支障をきたしかけ

そんなこんなで、都が非開示を貫いているにもかかわらず、いまや競技場にしろエンブレムにしろ運営費用の見通しにしろ、ほとんどオリンピック競技大会の「計画・開催に多大な支障をきたす」状態です。変ですね。

それでもまあ、非開示決定に至る経緯を公開している点については、肯定的に評価すべきなのでしょう。

くり返しますと、こうした東京都の事情を念頭に置いておくと、2016年のリオ五輪がどんな大会となるか、楽しみが倍増します。

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