解説・日本のデザイン語:「モダン」

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

デザイン界の人がしばしば注釈なしで使う用語「モダン」に、しばし余計な説明を加えます。

先月腑に落ちたばかりで、誰かに言いたい欲を満たすのが動機です。

要約:Executive Summary

デザインの話に出てくる「モダン」というのは、

  1. 関西弁の「シュッとしてる」とほぼ同じです。
  2. 狭い意味では「無国籍」のことです。

そう理解しておけば、だいたいうまくいくと思います。

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「シュッとしてる」サヴォア邸(Villa Savoye) from en.wikipedia.org

「モダン」、意味広すぎ問題

「モダン」というのは、厄介な言葉です。多義的で、意味する領域が広いからです。

辞典類の説明、ふんわりしすぎ

国語辞典で「モダン」を、あるいは、英和辞典で「modern」を引くと、だいたいこんな説明が並んでいます。

  • 現代の
  • 近代的な
  • 当世風
  • 斬新な
  • 進歩的な

けれどもそれが具体的にどういうことかは、よくわかりません。通常以上に文脈に依存しています。その意味は、他の語句よりもより高い比率で、使い手の主観に委ねられているのが現状です。

おおむね「ほめ言葉」らしい

ただし運用状況を観察すると、だいたい「ほめ言葉」で使う、という点は共通しているように思います。

関西人のソリューション

こういうとき、関西人なら「シュッとしてる」の一言で意思疎通できます。優れた手法です。

日本語世界でももう少し普及してほしい表現です。

シュッとしてる有名人の例

個人的な感覚で述べると、当世の「シュッとしてる」有名人の代表は、松田翔太さんです。

「au」CMで桃太郎をやってる人です。

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www.au.kddi.com/pr/3taro/ より

ほんまシュッとしてはる。

一親等と比較

父の松田優作の場合、長身で見た目がカッコよく「シュッとしてる」のですが、顔立ちや物腰までをそう呼ぶのには抵抗があります。

二親等と比較

兄の松田龍平さんも同様です。知らないけど。

中間まとめ:「モダニズム」≒「シュッとしてる」

以上の「シュッとしてる」を「モダン」に入れ替えます。

私にとって、松田翔太さんの造形は非の打ち所のない「モダンデザイン」です。一方で、松田さんの兄龍平さん、父優作については、ともにすんなり「モダニズム俳優」に分類しづらい特質を持ちあわせているような気がします。

だいたいそういう話です。

モダンはややこしい

「モダン」≒「シュッとしてる」として片付けると、今度は次の問題が現れます。

ならばデザインの「モダン」とは、具体的にどういう方向性を持っているのでしょうか?

事典類の説明でわかるのは「職務経歴」だけ

それを知ろうとものの本をひも解いてみても、はっきり言って一般国民にはわかりづらいのです。

事典類では、「モダニズム」にこんな説明がされていました。2つの例を紹介します。

『現代デザイン事典』の場合

美術におけるモダニズムとは1900年代の西欧に現れた表現主義、イタリアの未来派、ダダ、シュールレアリスム、ロシア・フォルマリズムなどの革新的な芸術運動を指す。

近代化がもたらす機械文明や都市的な感覚を重視し、機械美の称揚、装飾よりも機能を優先する態度、細分化された現実のモンタージュ手法による再構築といった革新的スタイルによって、アカデミズムや市民社会に対する急進的な批判を展開した。

前提として踏まえなければならない情報が多すぎです。

※2014年版と2007年版の記述が同じことを確認しました。たぶん、最新版も変わっていないと思います。

『絵ときデザイン史』の場合

機能性、合理性を追求した建築様式という見出しが付き、こんなふうに説明されています。本文と頭注から1文ずつです。

モダニズム(近代主義)は、第一次世界大戦以後の1920年代を中心に巻き起こった20世紀の中心的なデザインムーブメント。

工業製品を意識したシンプルで機能的なデザインを特徴とするモダニズムの動きは、(略)さまざまな潮流を生み出している。

「シンプルで機能的」が特徴というのはわかりましたが、うーん。

これらは、たとえるならモダニズムの「職務経歴書」です。その来歴はわかっても、「モダン」さんの仕事ぶりは正直よくわかりません。

そんなデザインの「モダン」にもやもやしていました。

狭い意味での「モダン」とは「無国籍」

狭義の「モダン」とは、「無国籍」の意です。

以下、私がそういう理解に至った経緯を簡単に述べます。

市川崑でわかった

別件調査で遭遇したWeb動画で、春日太一さんが市川崑(1915-2008)を「クールなモダニスト」と呼んでいて、ああそうかと腑に落ちました。
参照:【WOWOWぷらすと】市川崑に出会う(2015/04/09付)

動画内容からつなげての理解をまとめると、次のようになります。

  • 市川崑の演出は、「日本らしさ」の情緒や風俗から徹底的に背を向けた、「脱・日本」を目指していました。これが狭い意味での「モダン」です。
  • しかしその目指す先を「西洋化」や「欧米化」とするのは、やや正確さに欠けます。「モダニズム」のムーブメントの中心地が、たまたま西欧世界であっただけだからです。
  • 厳密に述べるなら、向かう先は(モダン志向の措定する)「普遍」です。
  • 「国」を基準にした場合、「どこにも向かわない」が正解です。むしろ離れてゆく方向性です。

岡本太郎で確認

岡本太郎、「最近のデザイナー」をdisるの巻(2015/10/31)で紹介した岡本のコメントを一部再掲します(下線は引用者)。詳しい経緯は当該記事をご覧ください。

問題は、最近のデザイナーにオリジナリティー(創意)がまったく見られないこと、外国のパターンにばかりよりかかっていることにあると思う。オリジナリティに富んだ作品より、国際的に通用するデザインのほうが、選ぶ側も安心するので、国籍不明、個性喪失のデザインが横行することになる

出典:朝日新聞(1966/07/12 夕刊)

岡本太郎は「モダン」≒「脱・日本」≒「国籍不明」を批判していることが読み取れます。

デザイン語「モダン」まとめ

くり返します。

デザインの「モダン」とは、狭い意味では「無国籍」を志向することです。

発見:東京五輪のマーク・エンブレムは「モダン」だった。

そこをふまえて、「意味」ではなくその「かたち」だけを虚心に眺めていくと、

「TOKYO 2020」の白紙撤回エンブレムのみならず

from tokyo2020.jp/emblem (deleted)
 

「TOKYO 1964」のシンボルマークもまた、

from mag.sendenkaigi.com

「モダン」であることが発見できるかと思います。「日本」のレジェンド的に受け取られているマークが、実は非常に無国籍な造形でできている。実に面白い逆説です

続けると長くなります。こちらからはひとまず以上です。

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