乗り物の名前の謎―なぜ船にだけ名前があるのか?

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こんにちは。名前を研究しています。

疑問だけを書いている記事です。答えはありません。

この記事で言いたいこと

乗り物のうち、船にだけ名前があるのは、なぜでしょうか。

輸送機器の製造が産業化される前から存在する、歴史の古い乗り物だからなのでしょうか。謎です。

氷川丸
氷川丸

この記事での「名前」の定義

はじめに、この記事における「名前」の用法を定義しておきます。

この記事で「名前」は、最も狭い意味で使います。

すなわち、インスタンス(個々の事物)に対する、言語的(名詞的)な名称をいいます。

より広い意味での「名前」について

他の意味での「名前」についても、簡単に説明しておきます。

少し広い意味での「名前」とは、クラス(ある分類上の種)に対する、言語的な名称も含める用法です。例でいえば、「猫」「バルタン星人」も含みます。

さらに、クラス・インスタンスを問わず、記号・番号的なものも含めるのが、最も広い意味での「名前」です。(例:RX-78-2)

こうした議論を「名前には4種類ある」(2013/11/07)で整理していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

船には名前がある不思議

船には名前があります。

歴史の教科書に出てくるもので言うと、1492年にコロンブスが乗って大西洋を横断した船は「サンタマリア」号、1912年の処女航海で氷山に衝突し沈没した船は「タイタニック」号、などなどです。

インスタンスへの名前

これらは、船体一つひとつに付けられた名前であることは明らかです。

日本海軍の軍艦も、基本設計が同じであっても「大和」「武蔵」と別々の名前が付いていました。

船には、インスタンスに対する言語的な名称=最も狭い意味での「名前」が与えられています。

名前があるのは船だけ

乗り物のうち、このような形式で名前が与えられているのは船だけです。

謎:なぜ、船には名前があるのか

なぜ、船には名前があるのでしょうか。不思議です。

いちおう、法的根拠はあるが

いちおう、法的な根拠はあります。

船舶法(law.e-gov.go.jp)の第七条に

日本船舶ハ法令ノ定ムル所ニ従ヒ日本ノ国旗ヲ掲ケ且其名称、船籍港、番号、総トン数、喫水ノ尺度其他ノ事項ヲ標示スルコトヲ要ス

と規定されているためです(太字・下線は引用者)。

しかしこの規定にしても、船に名前を付けるという慣習の後付けにすぎないように思います。

謎は残る

船に名前があるのは、歴史が古いうえに、量産されない乗り物だからでしょうか。

すなわち、乗り物として工業化される前から存在しており、その後も、どちらかと言えばほぼ一品一品生産されてきているからなのでしょうか。

であるならば人はなぜ、そのような物体に名前を付けるのでしょう。謎です。

他の乗り物との比較

乗り物のうち、最も狭い意味での「名前」があるのは船だけである。

これを確認するために、他の乗り物の場合と比較してみましょう。まず、陸上からです。

クルマの場合

クルマ(自動車、オートバイ、自転車etc.)を名前で呼ぶ場合、ふつう広義の「名前」=クラスに対する名称を使います。「プリウス」「CX-5」などです。

米国では、これに年式を付け加えて呼ぶことが多いらしいですが、せいぜい付加する情報はその程度です。

自分のクルマに固有の名前を付ける人もいますが、少数派です。

鉄道の場合

列車の一つひとつに、言語的な名前はありません。

列車のなかには、言語的な「愛称」が付いたものもあります。新幹線をはじめ、特急列車が多いように思います。

たとえば東京駅を午前6時に出発し、博多駅に10時56分に到着する東海道・山陽新幹線の特急列車は「のぞみ1号」です。

しかしこれは、言わば「機能」に付けられた名前です。明日の「のぞみ1号」の車体が、今朝と同じでなくてもいいわけです。

あるいは、ある特定の型式の列車に付く愛称もあります。「スペーシア」とか「ロマンスカー」とか。

ですがこれもクラスの名称であり、個別のインスタンスに付いた名前ではありません。

航空機の場合:船の子

航空機はある意味で「船の子」と言えます。というのも、航空機の運用の発想は、船舶がベースになっているからです。

飛行機が発着する場所をエアポート=空港と呼ぶのをはじめ、航空業界では船の用語が数多く引き継がれています。

また、乗り降りを向かって左側の「左舷」から行うのも、船の接岸のしかたに倣ったものです。(航空豆知識 第58回・飛行機はなぜ、左側から乗るの?(jal.co.jp))

飛行機には名前があった

ですから「船の子」とも言える飛行機にも、当然、名前がありました。

たとえば、1903年にライト兄弟が初飛行に成功したのは「ライトフライヤー」、1927年にリンドバーグが大西洋を横断した機体は「スピリット・オブ・セントルイス」号です。

JAL機の場合で確認

軍用機については狭義の名前があったとは言い難いですけれども、2度の世界大戦を経た後の時期でも、飛行機に名前を付ける慣習は残っていました。

日本航空の場合を例に述べます。

かつて日本航空では,保有する機体それぞれに愛称を付与していた.727型機は河川名,DC-8型機は観光地であった.

―Google ブックス > 『交通の百科事典』(2011)より

たとえば、1970年に赤軍派にハイジャックされ、北朝鮮の平壌空港に向かった日航機は「よど号」です。その機体の名前です。

1970~85年のどこかが転換点

ところが、1985年8月に御巣鷹山中に墜落した日航機には、名前がありません。

「JAL123便」とは機能の名であり、「ボーイング747型機」はクラス名、そして「JA8119」は、その機材に付いた名ではありますが、機体記号という記号・番号的名称です。どれもこの記事でいう、最も狭い意味での「名前」ではありません。

機体名については、少なくとも日本航空の場合、1970年から1985年の間のどこかに時代の転換点があったと言えそうです。

定着しなかった名前

日本航空の場合、その後運用されていた機材にも、名前(愛称)は付けられていました。

日本航空では、(略)MD-11型機を「J-BIRD」、ボーイング737型機を「フラワージェット」、ボーイング777型機を「スタージェット」と呼び、さらに1機ずつに、それぞれ鳥、花、星座の1等星の名前を付けていました。
―航空豆知識第6回・飛行機にはどんな種類があるか?(jal.co.jp)より

flyteam.jp での航空会社・機材一覧によると、日本航空でMD-11が使用されていた期間は、1993~2004年です。そしてボーイング737および777型機については、現在も使用されています。

しかし、これらの名前が利用者の間にも定着していたという印象はありません。自分の場合、具体的な名前はひとつも思い浮かびません。

そして今運用中の機材1機ずつには、名前は付いていないもようです。(同サイトでの機材・航空フォトの参照結果による)

宇宙に向かう場合

宇宙の世界には、いまだある時期までの航空業界、さらには船舶の慣習が息づいているようです。

アポロ計画での「アポロ11号」のように、一部に記号・番号のものもありはしますが、有人ロケットの一つひとつに、名前が付いているからです。

たとえばスペースシャトルには、1機ごとに名前が付いていました。次のとおりです。(出典:iss.jaxa.jp > スペースシャトルの名称の由来を教えて下さい

  • エンタープライズ(試験機)
  • コロンビア
  • チャレンジャー
  • ディスカバリー
  • アトランティス
  • エンデバー

「乗り物」からは離れますが、ロケットに搭載される人工衛星にも一つひとつに名前があります。「2006.3.14現在」と少し古めですが、日本の人工衛星一覧(富山市科学博物館)にまとめられている情報を見るとわかります。

宇宙へ向かうのは、かつての「航海」と同じ感覚であるようです。

フィクションの世界も含め、「宇宙船」という名前もまた、象徴的であります。

まとめ

乗り物のうち、なぜ船にだけ名前があるのかは、定かでありません。依然として謎です。

ただ、人が未開の領域に乗り出すときには、その活動のパートナーとなる物体に、名前を付けるようです。

これを仮の結論としておきます。

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