こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
―金子みすゞ「こだまでしょうか」
「お風呂で髪を洗っているとき後ろに誰かいる気配がする」問題
こんにちは。
お風呂で髪を洗っているとき、後ろに誰かいる気配がすることがあります。
この記事ではそれを、「お風呂で髪を洗っているとき後ろに誰かいる気配がする」問題と呼ぶことにします。
この記事に書くこと
「お風呂で髪を洗っているとき後ろに誰かいる気配がする」問題に対し、自分なりの答えを示します。
なお当記事での答えはあくまで仮説です。皆さまによる検証作業を歓迎いたします。
結論:水滴のせい
なぜ「シャンプーしていると後ろに誰かいる気がする」のか。
それはたぶん、体についた水滴のせいです。
「水滴のせい」仮説
「水滴のせい」仮説をもう少し詳しく説明します。
水滴が背中や腕などにつき、髪を洗う動作に伴って体表面を移動することで、次の2つが起こります
- 皮膚表面の触覚が刺激される
- 電位に変化が生じる
この感覚が、「後ろに誰かいる」ときのそれと似通っているために、そう感じてしまう。
これが、シャンプーしていて感じる「後ろに誰かいる」気配の正体ではないかと考えます。
「後ろに誰か」は触覚
一般に、振り返ることなく「後ろに誰かいる」と感じた時、われわれは何によってそれを感じ取っているのでしょうか。
そこで主に動員されているのは、五感のうち、触覚です。
「後ろに誰か」を感じる2つの触覚
では具体的に、触覚によって何を感じているのでしょうか。僕は次の2つではないかと考えています。
ひとつは「空気の流れ」です。
自分の背後の一定範囲内に何かが「いる(ある)」ときと「いない(ない)」ときでは、空気の動き方が違います。
もうひとつは、「電界の変化」です。
たとえば電灯をつけた瞬間に、室内の電位の変化を感じることがあります。同様に、水滴による皮膚表面の電気抵抗の変化を漠然とでも感じているとも考えられます。
ただし、実際に「後ろに誰かいる」場合に、人体が感知できるだけの電位の変化が生じるのかは不明です。
プラス「聴覚」もありそう
加えて、「近づいている」のような動きを伴うケースであれば、空気の流れなどの触覚面での変化の察知に加え、聴覚によって微細な音の発生や変化をも感じ取っているかとも思います。
こだまでしょうか?
見えぬものでもあるんだよ。
もちろん、このような変化を察知する感覚というのは、視覚に障害があるとかプロの殺し屋をやっているとかいう人は別として、非常に粗雑で、大ざっぱなものです。検知性能は決して精密ではなく、検知結果が間違っていることも少なくありません。
その程度の性能ではありますが、しかし全くの無能力ではなく、何かを察知できることもまた確かなのであります。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
―金子みすゞ「星とたんぽぽ」
と、昔の人も言いました。
考察:なぜそれは「一人でお風呂に入っている時」に起こるのか?
ここで、「水滴のせい」仮説を傍証するために、「お風呂で髪を洗っているとき後ろに誰かいる気配がする」問題の発生が、もっぱら「一人での入浴時」に限られることを示します。
注:問題の表記について
なお、いちいち「お風呂で髪を洗っているとき後ろに誰かいる気配がする」問題と書くのは長いので、以降は簡略化して「後ろに誰かいる」問題という表記を使います。
1.シャンプーしても「入浴時」以外では生じない
われわれは、風呂場以外の場所でシャンプーすることもあります。たとえば、美容院や理容院です。
しかしその際、「後ろに誰かいる」問題は発生していません。少なくとも僕は、美容院や理容院で髪を洗ってもらっているとき、後ろに誰かいる気配を感じたことはありません。
理美容院でのシャンプー時の姿勢
例外もあるでしょうが、自分の経験では、髪を洗う際に美容室は仰向けで行うところが多く、反対に散髪屋さん(理容院)ではうつぶせの姿勢で行うことが多いです。
姿勢は似ているが起こらない
うつぶせになってシャンプーする姿勢は、入浴時とよく似ています。けれども僕は、それで「後ろに誰かいる」問題を経験したことはありません。
なぜ散髪時のシャンプーでは感じないのか?
では、なぜ入浴時と姿勢が似ているにもかかわらず、理容院では「後ろに誰かいる」問題が生じないのでしょうか。
思うにそれは、頭部以外、背中や腕などが水滴で濡れないからです。
あと、洗ってもらっているときは、気配どころでなく実際に背後に誰かいるからです。
これは語法の問題でもありますが、「実際にいる」という感覚そのものを、あまり「気配」と感じたりそう言ったりはしないように思います。
2.入浴時でも、「一人」でなければ生じにくい
また入浴時でも、「一人」ではなく複数人で入っている場合であれば、理髪店でのケースと同様に「後ろに誰かいる」問題が生じにくいと言えそうです。
恐らくその最大の理由は、複数人で入っているゆえに「だいたい実際に誰かいる」からです。
体が水滴で濡れていても「後ろに誰かいる」気配を感じることは多くありません。正確に「後ろ」ではないものの、周りに「誰かいる」ことは確かだからです。
今日び銭湯へ通っている人は少ないでしょうけれども、温泉旅館やゴルフ場などの大浴場で、他の人と一緒に入浴する機会もあるでしょう。そうした機会のことを思い出してみましょう。
「いる」のに「いない」も起こる
「実際に誰かいる」感覚であるがゆえに、大人数で入浴している場合、逆に「後ろにいる」にもかかわらず、「いない」と誤認してしまうことが起こります。
女性がするかは知りませんが、男だと、修学旅行やら合宿やらで、入浴時に「シャンプーをひたすら頭上に注ぐ」みたいないたずらをした/された経験のある人も少なくないでしょう。
なかなか、気づかれ/気づきにくいものです。
水滴により触覚がバカになる
思うにこれは、ただでさえ大ざっぱな「後ろに何かある(いる)」を検知する感覚が、全身に水滴がつくことによって乱され、ほとんど機能しなくなっているからです。
その意味で、入浴時は「背後に人がいる」を検知する感覚がバカになっていると考えられます。
検知機能がバカになっているために、実際には「いない」のに「誰かいる」ように感じてビビッたり、反対に「誰かいる」のに「いない」と誤認して、その誰かにシャンプーを注がれ続けたりするわけです。
他説の紹介
この「後ろに誰かいる」問題の存在は、既に以前より広く知られているところです。そのため、従来さまざまな解釈や説明がなされてきました。
最後になりましたが、それらをいくつか紹介します。
1.霊感ヤマカン第六感な答え
世の中にはこれを、幽霊だとか妖怪変化だとかの霊的な何かの作用と解釈する、そんな霊感ゲームな人もいます。
2.ダウンタウン松本さんの答え
また「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ系)でも、この問題について過去に2回質問されていて、いずれも松本人志さんが答えています。
正確な文言を確認できる資料が今手元にないので要旨だけ示しますと、松本さんの答えはそれぞれこうでした。
1回目(1995/01/22 OA)は
「“しっかり洗えよ王”がいる」
で、
2回目(2001/11/04 OA)は
「リンスが順番を待っている」
でした。
※放送日は、ダウンタウン/ガキの使い放送リストによります。
「霊的な何か」に関連づける以外になかなか対抗できる有力な説を唱える人がいなかったこともあって、こちらも一定の支持を得ているようです。
まとめ:果てしなき探求
以上、シャンプーしていて「後ろに誰かいる」問題に対し、「水滴のせい」とする説を提示しました。
ここまで述べてきたように、僕自身は「後ろに誰かいる」問題を生じせしめているのは、体についた水滴であると考えています。リンスやしっかり洗えよ王のせいだとは思いませんし、ましてや霊的な何かではないでしょう。
それはあくまで、五感(の一部)によって生じているはずだ。とするのが僕の考察の原点です。
しかしながら、「水滴のせい」仮説の提示によってそうした説を否定できたわけでもありません。ここで紹介した他説にしても、自力で解決できない問題を解決するための発想法としては、ひとつの知恵あるやり方だと思います。
当記事の査読や学会発表での質疑による意見交換を通じて、真実に近づければいいと考えております。
ご静聴ありがとうございました。
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