日本の取締法一覧(2014年現在)

こんにちは。名前を研究しています。

日本では法律の名前で何を取り締まっているかが気になったので、調べてみました。

2014-04-25_a0008_000905

「取締」の辞書的定義

広辞苑(第五版)の「取り締まる」にはこうあります。

物事がうまく行われるように、また、不正や違反のないように管理・監督する。

そんな理念のもとで、名前に取締が付いている法律をリストアップします。

【リスト】日本の取締法(全20本)

「e-Gov」の法令検索で、名前に「取締法」「取締り」が付いている法律を検索し、結果をざっくりジャンル分けして整理しました。

全部で20本あります。

<凡例>

[取締り対象] 法律名リンク(公布年)
の形式で記述します。

リンクはいずれもlaw.e-gov.go.jp へのものです。また、法律名の「取締法」は省略しました。

第一条の条文(全文または抜粋)と一緒に並べます。

1.化学物質的な何かがらみ(8本)

要するに「危ないからちゃんとやれ」という法律です。

爆発物 明治十七年太政官布告第三十二号(爆発物取締罰則)(1884)

第一条 治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

大麻(1948)

第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。

農薬(1948)

第一条 この法律は、農薬について登録の制度を設け、販売及び使用の規制等を行なうことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もつて農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする。

毒物及び劇物[毒劇物](1950)

第一条 この法律は、毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。

火薬類(1950)

第一条 この法律は、火薬類の製造、販売、貯蔵、運搬、消費その他の取扱を規制することにより、火薬類による災害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする。

肥料(1950)

第一条 この法律は、肥料の品質等を保全し、その公正な取引と安全な施用を確保するため、肥料の規格及び施用基準の公定、登録、検査等を行い、もつて農業生産力の維持増進に寄与するとともに、国民の健康の保護に資することを目的とする。

覚せい剤(1951)

第一条 この法律は、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。

麻薬及び向精神薬(1953)

第一条 この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする。

2.カネがらみ(10本)

要するに「勝手なこと、紛らわしいことすんじゃねえぞ」という法律です。

通貨及証券模造(1895)

第一条 貨幣、政府発行紙幣、銀行紙幣、兌換銀行券、国債証券及地方債証券ニ紛ハシキ外観ヲ有スルモノヲ製造シ又ハ販売スルコトヲ得ス

国税犯則(1900)

第一条 収税官吏ハ国税(関税及噸税ヲ除ク以下同シ)ニ関スル犯則事件(以下犯則事件ト称ス)ヲ調査スル為必要アルトキハ犯則嫌疑者若ハ参考人ニ対シ質問シ、犯則嫌疑者ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査シ又ハ此等ノ者ニ於テ任意ニ提出シタル物ヲ領置スルコトヲ得

紙幣類似証券(1906)

第一条 一様ノ形式ヲ具ヘ箇々ノ取引ニ基カスシテ金額ヲ定メ多数ニ発行シタル証券ニシテ紙幣類似ノ作用ヲ為スモノト認ムルトキハ財務大臣ニ於テ其ノ発行及流通ヲ禁止スルコトヲ得

印紙等模造(1947)

第一条 政府の発行する印紙に紛らわしい外観を有する物又は印紙税法第九条第一項 の規定による税印の印影に紛らわしい外観を有するもの若しくはこれに紛らわしい外観を有する印影を生ずべき器具は、これを製造し、輸入し、販売し、頒布し、又は使用してはならない。

すき入紙製造(1947)

○1 黒くすき入れた紙又は政府紙幣、日本銀行券、公債証書、収入印紙その他政府の発行する証券にすき入れてある文字若しくは画紋と同一若しくは類似の形態の文字若しくは画紋を白くすき入れた紙は、政府、独立行政法人国立印刷局又は政府の許可を受けた者以外の者は、これを製造してはならない。

貨幣損傷等(1947)

○1 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国税犯則取締法等の臨時特例に関する法律(1952)

第一条 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「協定」という。)を実施するため、国税犯則取締法 (明治三十三年法律第六十七号)又は関税法 (昭和二十九年法律第六十一号)等による臨検、捜索又は差押の特例を設けることを目的とする。

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(1954)

第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。

郵便切手類模造等(1972)

第一条 日本郵便株式会社又は外国の郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票に紛らわしい外観を有する物は、製造し、輸入し、販売し、若しくは頒布し、又は郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票の用途に使用してはならない。

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(1991)

第一条 この法律は、薬物犯罪による薬物犯罪収益等をはく奪すること等により、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に除去することの重要性にかんがみ、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及びこれに関する国際約束の適確な実施を確保するため、麻薬及び向精神薬取締法 (昭和二十八年法律第十四号)、大麻取締法 (昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法 (昭和二十九年法律第七十一号)及び覚せい剤取締法 (昭和二十六年法律第二百五十二号)に定めるもののほか、これらの法律その他の関係法律の特例その他必要な事項を定めるものとする。

分類が難しいところですが、趣旨に照らしてカネがらみとしました。

3.武力がらみ(1本)

銃砲刀剣類所持等(1958)

第一条 この法律は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるものとする。

これも「危ないからちゃんとやれ」の一環と言えましょう。

4.動物がらみ(1本)

臘虎膃肭獣猟獲(1912)

第一条 農林水産大臣ハ農林水産省令ノ定ムル所ニ依リ臘虎又ハ膃肭獣ノ猟獲ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得臘虎又ハ膃肭獣ノ獣皮又ハ其ノ製品ノ製造若ハ加工又ハ販売ニ付亦同ジ

字が読めないので調べました。臘虎=ラッコ、膃肭獣=オットセイです。

まとめ

日本の取締法が対象とするのは取扱注意の化学物質的な何かが中心だろうという事前の予想に反し、カネがらみが同等かそれ以上に多くありました。

そこらへんを取締法で取り締まろうとしていることからすると、どうも、そこらが国家の根幹を形成すると考えている節がうかがえます。

そんななかで、臘虎膃肭獣猟獲取締法が異彩を放っています。制定当時、法で取り締まらなければならない事情があったことを想像すると、趣深いものがあります。気が向いたら成立過程を追って調べてみたいところです。

ほか、また何かあれば調べます。

もし一覧に漏れがありましたらご指摘いただければ幸いです。

ご静聴ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました