バターはどこへ消えた?(2008年5月版)

こんにちは。またバターが消えてしまっているので、以前に別のところに書いたテキストに手を入れて掲載しておきます。

バターはどこへ消えた?2008

※注
文中の「去年」「今年」などの表現は、すべて初出当時の2008年5月時点から見てです。

プロローグ

3月あたりから、気が付けばバターが全然売っていない。品不足は去年の納豆騒ぎの時よりもひどいと思う。先週読んだ新聞記事によれば、輸入品の高騰で業務用需要が国内産にシフトしたためのようだが。Web版のMSN産経ニュースから引用。

※下線は引用者

バターが店頭から消えたきっかけは、輸入品の業務用バターの高騰と供給不足がきっかけだ。
雪印乳業の高野瀬忠明社長は「海外からの油脂調整品が品薄になり、菓子や製パン業者が国産バターに注目。国産業務用だけでなく、家庭用の20%程度が業務用に購入されているとみている」と指摘する。

本当だろうか。気になったので次の3点について少し調べてみた。

  1. 輸入バターの高騰は事実か?
  2. 輸入バターの需要分が国内産へ移ったことで、品不足となっているのか?
  3. 輸入バターは供給不足なのか?

1:輸入バターの高騰は事実か?

事実のようだ。

バターの輸入は、社団法人日本酪農乳業協会[現:Jミルク]がもっぱら仕切っているようである。http://market.j-milk.jp/8d863s000000ocyk.htmlに、入札結果が公開されている。[※現在はリンク切れ]

これを見ると、毎回のトン数にむらはあるものの、ほぼ月に1回のペースで入札が行われている。最新の5月の入札結果を見ると、平均落札価格で、

  • 欧州産のカテゴリーIは1トンあたり1,522,084円
  • オセアニア産のカテゴリーIIでは1,432,096円

である。

単純に1年前の数字(692,857円/619,560円)と比べると、2.2~2.3倍になっている。200gの箱入りバター(たぶん国産)が安かったときは250円ほどだったから、この値段をトンに換算すると1,250,000円。小売段階のこの値段と比べても高い。

輸入バターの高騰は事実としてよさそうである。

2:輸入バターの需要分が国内産へ移ったことで、品不足となっているのか?

輸入バターの価格高騰 → 従来の需要分が国内産へシフト → 品不足 という構図なのだろうか。

すなわち、従来の輸入バターへの需要分が、価格高騰によって国内産に切り替わったために、バターが品不足となっているのだろうか?

どうも、そうではない気がする。

これは平成17年の値であるが、農畜産業振興機構からの月報として、バターの用途の内訳がかなり詳しく報告されているページがあった。以下は、そのページにあった表である。

バターの用途別消費量(17年度推計)
20141223_tayori_hyo02

http://lin.lin.go.jp/alic/month/dome/2007/jul/tayori_1.htm より[※現在はリンク切れ]

一番下の「小売業」となっているのが、家庭用に市販されるバターを意味すると理解してよさそうである。で、この表を見ると、家庭用はもちろんのこと、業務用でも国産バターの方が消費量が圧倒的に大きいことが分かる。

ちなみに、輸入品への依存度の比率で言えば、「菓子や製パン」よりも、「乳飲料」「はっ酵乳・乳酸菌飲料」の方が高い。

したがって、輸入需要分が国産へとシフトしたとみると、帳尻が合わなくなる。仮に、業務用輸入バターの年間需要である6000トン全部が国産にシフトしたとしても、小売需要量の3~4ヶ月分相当でしかない。

もっとも「油脂調整品」とは厳密にはバターとは違うもののようだし、あるいは、この推計自体が正しくない、あるいは3年前から需要構造が大きく変化した、という可能性もあるが。

3:輸入バターは供給不足なのか?

それも、当たっていないのではないか。

確かに価格は上がっているが、輸入量が減っている事実はないからである。

もう少し新しいデータとして、同じく農畜産業振興機構の「畜産物の需給関係の諸統計データ」に、今年2月までの月別実績が載った「バター」の項があった。これを見ると、輸入量自体は少なくとも今年の2月まで減っていない。年単位で見れば、むしろ過去2,3年の実績値より増えている。

在庫量も変動なし

「輸入だけされて実際に消費されていないのでは」という考え方もありうる。しかしそれなら、在庫量が増えていなければいけない。ところが在庫状況を見てみても、「品目別バター在庫量」を見た限り、目立った変動はない。

バターの需要は 国内≫輸入

そしてこの統計データによると、平成20年2月の国内月間生産量は6600トンだから、机上の計算だけで言えば、国内の1ヶ月分の生産量で輸入バターの年間需要分はまかなえるのである。(H.20 2月までの)19年度輸入量実績だと12,000トン強とH17年の消費量と比べ倍増しているが、それでも2ヶ月分である。

まとめ

  • 輸入バターの高騰は事実
  • 家庭用・業務用とも、もともと国産バターの方がはるかに多く消費されている
  • 輸入量自体は減っていない。在庫にも目立った変動はない

以上から考えても、店頭で何か月も品不足が続く状態というのは、やはり計算が合わない。誰かが七並べの6や8みたいに止めてるんじゃないか、という疑念は残る。

バターは短期の生産調整が難しく、また比較的保存が利く性質の品目のようだから、流通過程を勉強してこの状態だと誰が得をするのかを割り出せば、消えた先が突き止められる、のかもしれない。

2014年のまとめ

当今のバター不足について、2008年当時とどう状況が変わっているか、いないのか、その点も含めて新たに何の情報も仕入れておりません。

しかしながらおのれの嗅覚だけでものを言いますと、どこかから闇の臭いがしてきています。

※2015/01/15追記

こちらの記事のとおりなら、2014年のバター不足は、農林水産省当局の失政が招いたようです。

関連して、こんな記事もありました。

以上を読んだ素朴な直感として、ほぼ実態を解明できているような気がします。

自分でも検証しておきたい気持ちもありますが、さしあたりこれらで間に合わせて、その先を考えることにします。

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