日本語における「数」の軽さ―「インベーダー ダブルス決勝」がダブルスでない件

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こんにちは。

世界に起こる事象とその記述とのずれが気になる体質の私が、クソリプする代わりに書いたクソ記事です。

ダブルスではない「ダブルス決勝」

これもまた、「記述のずれ」が気になる実例です。

もやもやする

こちらのツイートがタイムラインで目に留まって以来、ずっと引っかかってもやもやしています。

どう見てもダブルスではないからです。

記述がずれています。

誰も気づいていないのか?

3桁リツイートされ拡散しているのに、当該ツイートへのリプライを見ても誰もそこを指摘していません。考えられる可能性は主に次の2つです。

  • 誰も気づいていない
  • 気づいていても、そこを衝くのはあまりにクソリプなので言及していない

もしも後者ならばみっともない話ではありますが、欲求に負けて愚を犯します。

軽視されているっ「ス」―日本語での数

上の画像のキャプションのうち「インベーダー」と「決勝」は承りますが、「ダブルス」は承服しかねます。どう見てもダブル「ス」ではありません。

ダブル「ス」ではない理由

なぜなら、人間のプレーヤーが2人しかいないからです。

それは「ダブル(double)」であって、絶対に「ダブル(doubles)」ではありません。

「ダブルス」とするのは間違っています。

ダブルスとは

ダブルスなら、たとえばこうでなければいけません。

20141028_Chan Yung Jan 16th Asian Games Tennis

※画像は、16th Asian Games – Day 10: Tennis (Chan Yung-Jan)|zimbio.comより

「2人」対「2人」です。ダブル×2だから、ダブル「ス」です。

これはダブルスではない

再掲して比べておきます。

20141028_140926fri

インベーダーダブルス決勝。 ※画像は、http://miniature-calendar.com/140926/より

しつこいですが、これはダブルスではありません。単なるダブルです。

これが正しい世界の記述だ、だ

先に「正解」例を示しておきます。

「インベーダー」とはどんな競技なのか、その詳細に至ると想像の範疇となりますが、

画像内の2人のプレーヤーについて

  • 協力関係にあるなら、ペア
  • 対戦相手ならば、シングルス

とするのが、事態の正しい記述です。

競技種目の「ス」の有無

外来の各種スポーツの競技種目名称については、「ス」の有無が厳格に使い分けられています。

思いつく範囲で挙げてみます。

「ス」の付く競技

たとえば次の競技には、種目に「ス」が付きます。

  • テニス
  • 卓球
  • バドミントン
  • スカッシュ

1人対1人の対戦なら「シングル」、2対2なら「ダブル」です。

「ス」の付く特徴

これらの競技に共通する特徴としては、対戦相手(opponent)と直接戦って勝敗を競うタイプの競技であることが挙げられるでしょう。

「ス」の付かない競技

一方、直接対戦する形式ではない

  • フィギュアスケート
  • リュージュ
  • ボート(スカル)
  • カヌー

といった競技の種目に、「ス」は付きません。

たとえば、フィギュアスケートの浅田真央選手、羽生結弦選手の出場種目はそれぞれ、「女子シングル」「男子シングル」です。2人とも「シングル」の出場経験はありません。

1人で競技する場合は、いずれも「シングル」です。

2人の場合

シングルに「ス」の付かない≒対戦型でない上の競技を2人単位で行う場合、それぞれ何と呼んでいるかというと

  • フィギュアスケート:ペア
  • リュージュ:ペア
  • ボート:ペア|ダブルスカル(double scull)
  • カヌー:ペア

です。

「インベーダー」の正しい種目名だ、だ、だだ

以上の検討結果をふまえて、画像の「インベーダー決勝」の正しい記述を考えてみます。

(1)ペア

ここで「インベーダー」という競技を

  • ビデオゲームの「インベーダーゲーム」の世界で2人が協力してプレーしている

と解釈するならば、この種目は「ペア」と呼ぶことがふさわしいはずです。

蛇足:決勝進出者がまだいる

蛇足ながら付け加えておくと、この場合は他にもう1組以上、決勝進出している「ペア」がいることになります。

直接対戦する形式ではないため、進出した他の組は、別途プレーをしてその成績を競います。

「M-1グランプリ」や「THE MANZAI」にも似た形式です。

(2)シングルス

また、このインベーダー決勝は、競技中の2人をペアではなく「対戦相手」とする見方も可能です。

ちょうどスカッシュのように、コートの同じサイドに立ち、「プレーヤーAとプレーヤーBが対戦している」という形式です。

20141028_296px-Squash_court

スカッシュコート ※画像はja.wikipedia.orgより

この場合は互いが対戦していますから、「シングルス」です。

スカッシュの「ダブルス」とは

ならば、スカッシュの「ダブルス」とはどうなるでしょうか?

はい。当然にこうなります。

20141028_James Willstrop 20th Commonwealth Games Squash

※画像は、20th Commonwealth Games: Squash (James Willstrop)|zimbio.comより

2人ペア同士が対戦しますから、競技エリア内にいるのは全部で4人です。

ちなみにこの写真のキャプションによると、これは準決勝(Semi Final)の模様です。

ちょうど近年の「キングオブコント」が、この種の対戦方式となっています。

正しい「インベーダーダブルス」とは?

そう考えていくと、「インベーダー ダブルス」であるなら、上の画像と同じように、プレーヤーが4人いなければならないはずです。

日本語表現における「数」の問題

「インベーダー 決勝」画像のキャプションでは、2人しかいないのに、「ダブル」と書いてしまっています。なぜ、こんなおかしなことになってしまうのでしょうか?

思うにそれは、日本語表現において「数」の制約がゆるいからです。事態を記述するにあたり、何かの数を厳密に表す必要性が相対的に高くありません。

数の縛りがゆるゆるな日本語

自分の知る範囲で言えば、英語など他のいくつかの言語と比べて、日本語は数に関してのしばりがゆるい言語です。

例:子供

たとえば「子供」です。後ろの「ども」は元来、複数を表す接尾語です。

なので英語と対応させるなら

  • child(単数)=子
  • children(複数)=子供

となるのが本来の厳密な用法です。

しかし日本語では、「子供は一人です」や「子供たち」という具合に使ってもまったく不自然ではありません。

あまつさえ、カタカナ語として「○○チルドレンたち」とすら言います。チルドレンなら複数いるのは自明なのに、です。

これも日本語では数の概念がゆるく、使用上の規制も厳しくない状態にあるゆえに思えます。

日本語を「ゆるい」とすべきなのか、逆に他が厳しすぎるのかなど、日本語世界における「数」の重みについては一段と考察を深めたいテーマではあります。

付記:インベーダー目線からも考える

最後に練習として、こんな問いも立ててみます。

問:インベーダーたちも競技の一員であったら?

この競技における「インベーダー」を、競技を構成する「アイテム」扱いではなく、「プレーヤー」としてとらえればどうなるだろうか?

すなわち、カーリングでのストーンのような位置づけではなく、個々に「人格」レベルの自我を持った存在であるととらえる見方です。

この場合、「インベーダー」の競技種目をどう記述するべきでしょうか?

答:やはり「ペア」

やはり「ペア」だろう。というのが結論です。

なぜなら、世の中の対戦するゲームについては「両方の対戦人数が等しい」というのが暗黙の前提にあるからです。

人数が異なる場合は、「ハンデ戦」とか「変則マッチ」とか呼ばれるようです。「それは“本来”ではない」という認識がそこにはあります。

人間中心ではあるが、「ペア」とするしかない

こうした「多数」対「2人」という対戦様態が変則ではなく「本来」であるなら、人間としてはこの種目をペアと称さざるを得ないでしょう。

むろん、「インベーダー」多数 vs.「人間」2人での競技種目をペアと称するのは、どこまでも人間からの見方です。

僕はインベーダー インベーダー …

今度は反対に、インベーダーの側からも考えてみましょう。

インベーダー目線からすると、

  • 「われわれ」多数 vs.「人間」2人

での競技となります。

これをインベーダーはどう記述すべきでしょうか?

シンキングタイム

(BGM)

YouTube:きゃりーぱみゅぱみゅ – インベーダーインベーダー,kyary pamyu pamyu – Invader Invader(2013/05/06付)

あとがきに代えて:意外な難問

考えて行き詰まってしまいました。けっこうな難問です。そもそも「インベーダー」という名称が妥当なのかに対してさえ、疑問が起こってきます。

そんななか「インベーダーインベーダー」と2回重ねてお茶を濁してフィニッシュといたします。

ことほどさように、世界に起こる事象とその記述とは、しばしば食い違いを起こしてしまうのであります。

♪世界征服だ。

ご静聴ありがとうございました。

コメント

  1. yoshi より:

    楽しく拝読しました。なるほど。

    ただ、これはやはりダブルスではないかと思います。これほど大きく写っているのに、なぜ触れられていないのか不思議に感じますが、これ、iPhoneです。この試合はオンライン対戦なのではないでしょうか。つまり、もう片方のダブルはネットの向こう側にいるのではないかと。

    一方で、この画像のシリーズは「見立て」に面白みがあるので、iPhoneというところを衝くのはひょっとしてクソリプなのでは、と心配しております。。

  2. ヤシロタケツグ より:

    yoshi様
    コメントありがとうございます。

    なるほど。オンライン対戦という発想はありませんでした。私にはスマホでゲームをする習慣がないので、iPhoneからそこまで読み取れなかったのだと思います。
    加えて、スペースインベーダーという1970年代のクラシックなキャラクターであることも「オンライン」発想が出なかった一因かもしれません。

    私の場合、この1枚の画像からそうは受け取れなかったということなのでしょう。
    現段階で自説は撤回しませんが、異説として承ります。

    他の記事でもお楽しみいただければ幸いです。

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