【メモ】羽生善治さん、2000年の対談でコンピュータ将棋へコメント。など

こんにちは。数えることが好きです。

数える話があったよなと思い出して、羽生善治さんの対談集『簡単に、単純に考える』(2001, 2004)の、カーネギー・メロン大学教授(当時)の金出武雄さんとの章を読み返しておりましたら、別の話の方に目が留まったので、そちらをメモしておきます。

金出さんは、章の冒頭に置かれた人物紹介によると「人工知能、ロボット工学の世界的権威」だそうです。

なお

(本章は『文藝春秋』二〇〇〇年五月号に掲載された文章に大幅な加筆、修正を加え、再編集したものです)

と章末にありますので「2000年の対談」としました。

1:コンピュータとの「真剣勝負」について

金出 彼[松原仁さん]の書いたものによると、コンピュータと羽生さんの真剣勝負が実現するのは強気派が二〇一〇年、弱気派は二〇三〇年ぐらいということです。

羽生 そうですね。(略)面白いなと思ったのは、ソフトをつくっている研究者は将棋のアマチュアなのですが、人によって実力が違います。強い人ほど悲観的なのですね。すごく不思議だと思いました。

電王戦(日本将棋連盟・棋戦情報)の結果を見ると、2010年代の現在、既に真剣勝負の実現する状況は整っていると言えそうです。

ちなみに「強い人ほど悲観的」への金出さんの分析はこうです。

金出 強い人は、自分がやっている将棋をプログラムしたいという意識があるんじゃないですか。一方、弱い人は自分では将棋は分からないから、ブルートフォース(力まかせな方法)でやろうと。

2:対戦したいか?

ど直球の質問がされていました。

金出 話は戻りますが、二〇一〇年に強いコンピュータが完成したら、羽生さんは対戦したいですか?

羽生 いやあ……。でも、どういう強さなのかなという興味はありますね。人間と指している印象と、ちょっと違う感じがしますから。

2000年の時点で「興味はある」とのお答えです。

ただ「羽生vsコンピュータ」のカードは、商売上の都合で引き延ばされるでしょう。両者の円熟カーブを思い描いてみて、ざっくり4年後と見積もっておきます。

3:コンピュータ将棋評

金出 第一人者の羽生さんから見て、現在のコンピュータ将棋の実力はどのくらいですか?

羽生 実戦でこんな経験があるんです。相手の玉が詰んでいるのを見逃して、結局、負けてしまいました。(略)コンピュータはゼロ秒で詰ませたそうなんです。簡単な手順で詰んでいたんですが、盲点のような感じで、私が十五分ぐらい一生懸命に考えても分からなかったのに、コンピュータはゼロ秒。非常に驚いてしまったんです。(後略)

詰めの段階での実力を既に認められています。

金出 詰めの段階になったら、コンピュータはプロ級ですか?

羽生 ええ。今の実力はアマチュアの三段ぐらいといわれているのですが、人間の三段とはちょっと違う。あるところはプロ級だし、あるところは初心者で、すごくアンバランスな強さなんですね。

(コンピュータが苦手な部分)

中でも中盤は指し手の可能性が一番広いし、(略)難しいでしょうね。

また、目的となる手がはっきりしない場面とかは苦手です。

両方の王様が近くで絡み合うような、攻守が複雑な展開では弱いという印象があります。

(コンピュータが得意な部分)

駒をとるとか、ある形をつくるとかいう場面は非常に得意ですね。

だから、お互いに正面から一直線に詰ませあうときは非常に強い

(最近のソフト)

羽生 最近のソフトは、形とかも気にしてるみたいです。気にしているみたいなんて、変ないい方ですけど(笑)。

4:何を考えて指しているか

羽生さんは、対局での自分の思考の中身については全然語れていません。当たりまえといえば当たりまえですが。

金出 自分の状勢がいいか悪いかという判断は何を基準に……。

羽生 分かりません。ほんとにこれ、分からないのです。経験則とも直感とも……。

金出 (略)羽生さんは指し手を考えるときには、どういう……。

羽生 そうですねえ。指し手を探しているときは、今の局面と、それまでに通ってきた筋道とか、最後にはこう終わるだろうという詰みの場面を繋ぎあわせようとするとか……よくあるのは、先の場面、たとえば五手先とか一〇手先とかに「今の場面は、こういう局面に展開していなくてはいけないはずだ」というような考え方ですね。経験則といってしまえば経験則かもしれませんが、そういう判断の下でやっているという感じです。また、駒がぶつかっていれば、争点だけを考えればいいので考えやすいのです。しかし、戦いが始まる前に端歩を突くとか香車を上げるというのは考えづらいのです。

羽生 勝負の差をつけるのは、そういうところなのですね。それに、序盤で王様が先に寄るか、金を先に上げるかは一手違いで、一見同じように見えますが、現代将棋ではこういう細かい動きが重要になっているのです。(後略)

まとめ

ついこのあいだ羽生さんの対談本を読んだつもりでいたら、10年以上経っていました。老けるわけです。

この10何年で、コンピュータの弱点がどう克服されてきたか、羽生さん言うところの「細かい動き」がどれだけカバーできてきたか、軌跡を押さえておきたいところです。というか、どこかでまとまっているといいのですが(他人頼み)。

次の記事で、2007年の「中間マイルストーン」も紹介しておきます。

つづく。

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