「涙ながらに」を切り貼りする報道への疑問―小保方晴子さんの会見に思う(1)

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こんにちは。

表題の件で、初老男が80年代アイドルに無理やりこじつけつつ、報道姿勢を論難する試みです。

この記事で言いたいこと

4月9日、小保方晴子さんが代理人の弁護士とともに記者会見を開きました。その報道のされ方が気になります。

「涙」の使い方です。

当方がNHKでの中継映像を確認した限り、小保方さんが涙を流したポイントは、今後も研究を続けていきたい旨を答えた1時点だけです。

なのに、ほかのところに「涙を流し」「涙ながらに」を使って伝えているものが少なからず見られます。

これでは、見栄えをよくしようと論文で使う画像を切り貼りするという不正を働いた小保方さんと変わりません。同じ穴のムジナ、同じ遺伝子のキメラマウスです。

会見は、もはやサイエンスではなく、STAPなんちゃら細胞からも乖離しかけた代物でしたが、それを報道する側まで主催者に付き合う必要はありません。事象は、粉飾することなく、努めて客観的に記述してほしいです。

それが、いやしくも科学報道(当該会見はそう言いきれませんが)に携わる者の責務だと思うのです。

はじめに:小保方さんの「キラリほろり涙」

4月9日の小保方晴子さんの会見中継を楽しく見たクチです。

しかし会見のもようを伝える報道で、ひとつ気になる点が出てきました。それは、「涙を流し」「涙ながらに」のように書いてある記事で、その修飾を用いる場所が不適切なものが散見されることです。

こちらで確認できた限り、小保方さんが涙を流したのは、今後も研究を続けていきたい旨を答えたくだりだけです。なのに、あちこちで使われすぎです。

そこ、彼女が涙を流したポイントじゃないだろと思うのです。そこで

♪キラリ ほろり 涙

の《キラリ・涙》(水谷絵津子, 1982)じゃなかっただろ、と。

意味もなく、誰が知ってるんだよ的な80年代アイドル歌謡を持ち出してみました。

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参考:‘あっさ~りしお味’の芸能活動? 「キラリ・涙」 水谷絵津子|アイドル歌謡研究ブログ(2007/01/15付)

画像も同サイトより

【検証】小保方さんの「涙」報道

「涙」の記述に注目して、会見のもようを伝える各社のWebニュース記事をいくつか拾って確認してみましょう。検討対象には「オヤジジャーナル」(by プチ鹿島さん)を含みます。

1)そこじゃないだろ

まず、このあたりはどれも「そこじゃないだろ」と言いたくなります。いずれもそのポイントで、涙は流していません。 ※下線は引用者

時事ドットコム小保方晴子さん記者会見詳報

小保方さんは会見の冒頭、涙ながらに次のようにあいさつした。

日刊ゲンダイ「200回作製」で完全墓穴 小保方さん学者人生“絶体絶命”(2014/04/10付)

9日、70日ぶりに姿を現した小保方晴子さん(30)。涙を流しながら「STAP細胞はあります」と訴えたが、(後略)

デイリースポーツオンライン小保方氏、涙の反論会見 研究には自信(2014/04/10付)

…約300人の報道陣を前に「200回以上(STAP細胞の)作製に成功している」と、涙ながらに反論した。

いずれも、「涙ながらに」「涙を流しながら」を使うことは不適切です。

確認:「涙ながら」の涙は流れている

あらためて、国語辞典で「涙ながら(に)」を確認しておきましょう。

涙を流しながら事をするさま。泣きながら。(goo辞書・デジタル大辞泉)

涙を流している状態で。泣きながら。(広辞苑)

泣きながら(新明解国語辞典・第四版)

辞書が言うには、「涙ながら」の涙は流れています。検証しやすいように「涙液が下眼瞼を越える」とでも定義し直しておきましょうか。

9日の会見では、どの時点でその様子が観察されたか。まずはそこを明確にしておくことです。

そのうえで、それ以外のところで涙を流したかのような表現は使うべきではありません。それが客観的かつ誠実な記述というものです。

2)これはひどい

かと思えば、こんなのも見つかりました。問題外です。

モデルプレス小保方氏が涙 “STAP細胞”問題について謝罪(2014/04/09付)

疑惑浮上後、初めて公の場に登場した小保方氏は、冒頭、涙目を浮かべながら

使うポイントもおかしいうえ、日本語にすらなっていません。

わかんない。「涙目を浮かべ」って、どうやるの?

涙も切り貼り?(その1)

こういった「涙ながらに」報道は、問題があります。小保方さんらの論文に対して指摘されたのと同じく、切り貼りではないかとの疑念を抱かざるを得ないためです。

録画していたNHKの中継放送を見返して小保方さんをあらためて観察してみましたが、流れる涙を確認できたのは、研究を続けていきたい旨を答えたあとだけです。

よって、それ以外のポイントで「涙ながらに」を使用するのは、不適切です。

それは「小保方晴子ストレステスト」の実験記録の改ざんにあたる、不正行為です。

3)微妙

微妙な例として、写真へのキャプション2例を取り上げます。

どちらも断言はできませんが、「涙」記述の正確さについて疑義が生じます。微妙です。

msn産経ニュース  > 「期待していたので残念」「再現実験で証明して」(2014/04/09付)

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記者会見で涙を流しながら質問に答える小保方晴子氏=9日午後、大阪市北区(松永渉平撮影)

「涙を流し」はいいとして、たぶん、この瞬間は質問に答えていません。

実際は、続けたいコメント→涙からの、「次の質問 受付」の瞬間の1枚かと思われます。

読売オンライン不勉強・未熟10回繰り返す…謎の解明は不十分(2014/04/10付)

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涙を拭いながら記者の質問に答える小保方氏(9日午後、大阪市北区で)=金沢修撮影

特定できていませんので軽い疑義のみを提示しておきますと、これは涙を拭ったときの写真でしょうか。微妙です。

一般論として述べておくと、ハンカチを顔に持ってきただけで「涙を拭う」と記述するのは、軽率というものです。

4)これはあり

これら2つは「あり」です。適切と評価できる記述になっています。

日経電子版小保方氏会見、なお分からぬ真実 「STAP細胞はあります」(2014/04/10付)

2時間半に及んだ記者会見で「未熟さから疑念を招いた」と釈明し、「研究を続けたい」と涙をこぼした

「涙をこぼした」タイミングが合っています。適切です。

もう1つはこちら。見出しのみです。

朝日新聞デジタル未熟わびつつ反論 小保方氏「悪意ない」 声震わせ、涙浮かべ(2014/04/09付)

他のポイントでも、流れはせずとも涙を浮かべているようには見えたので、ありです。涙が流れたポイント以外では、せいぜいこのレベルでの記述にとどめないといけません。

もしそこで涙を流したかのように書いたならば、不適切な記述となります。

なお本文を読むには登録がいる(無料)ので、読んでいません。

5)合格

僕が見た範囲でいちばんちゃんとしていた「涙」記述は、こちらです。

毎日.jp小保方氏会見:「責任重く受け止めるがSTAP現象真実」(2014/04/09付)

大量のフラッシュがたかれる中、緊張した表情で、涙をこらえ、時々、肩で息をするような仕草もみせた。

弁護士が不服申し立ての内容を説明している間は、うつろな表情で聴き入り、涙をぬぐうような様子もうかがえた。

最も信頼できる、小保方晴子ストレステスト「実験ノート」の観察記述です。

科学環境部が、その名も『理系白書』(2003, 2006)という本を出している新聞社だけのことはあります。

ちゃんとしているので、記事末尾にある筆者名も引いておきます。

【茶谷亮、松井聡、村上尊一】

だそうです。

涙も切り貼り?(その2)

くり返しになりますが、「涙ながらに」「涙を流し」といった記述を付けて報じるなら、そこでは観察事実を努めてありのまま、客観的に述べてほしいです。

でなければ、その報道がやっていることは論文不正と変わりません。

おわりに

この15~20年ばかり、世界に生じる「事象・現象」と、人によるその「記述・叙述」とのずれというものが、頭の隅にずっとひっかかっています。

小保方晴子さんらの会見のもようを伝える報道でも、それが見られました。

近ごろでは「ありのままを、観察されたまま書く」とは、実はかなりの訓練を必要とする行為なのではないか。そんな感触が強くしています。

ご静聴ありがとうございました。

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