荒木香織さん「人生のパイセンラジオ」(3)(2016/06/18早朝 OA)

NHKラジオ深夜便「明日へのことば 荒木香織」をテキストにしています。(2)のつづきです。

画像は、ストリーミング|ラジオ深夜便 より

ラグビー日本代表を変えたスポーツ心理学(3)

話の区切りで適当に見出しを付けています。

ポーズではない、五郎丸選手のアレ

――そして去年のイングランド大会では、注目されました。とても注目されたのがですね、五郎丸歩選手がキックの前に見せるプレ・パフォーマンスルーティン。これどのようにして生まれたんですか。荒木さんと二人三脚と聞きました

荒木「エディーさんからの要求が最初です。エディーさんが、キックの成功率をもう少し上げてくれると、チームのためになるので、取り組みなさいと、いうことで、技術はあるので。それを、一貫性を持って必ず成功させるっていうのはあとはメンタルでしょっていう話でエディーさんからまず、要望ですよね」

はい

「そこでまあ五郎丸選手の性格とか、あと止まっているボールを時間のない、時間の中で蹴るとか、っていういろんなまあ、ことを考えたときに、スポーツ心理学の中には心理的スキルっていうたくさんのスキルが、研究での効果があがっているものはありますし、そこまで科学的に検証されていなくてもある程度成功したアスリートの話を聞くことによってこういう準備をすればこういうことをすればいいパフォーマンスができますよっていうことはわかってますから、その中からどれを選ぼかなーと思ったときに、私がこれかなーって思ったのは、プレパフォーマンスルーティンであって、五郎丸選手がイヤだって言ったりとか、うまく進めることができなければ違うものでもよかったんですけど。わりとしっくりときて取り組むことができたので。3年半ぐらいかかりましたけど、はい」

あの、ポーズで3年半

「ポーズではなくて一連の動作なので。私たち2人の間でポーズという言葉を使ったことはなくて、あれは初めて一連の動作を見たメディアの方がそう名前を付けたと思いますけど、ポーズ自体にまったく意味はありません」

意味ないんですか

「ありません。なんかこう、お祈りをしているとか、精神統一をしているんじゃないかっていうふうな捉えられ方ありますけど、まったく間違いです」

あれまったく違うポーズでも、よかったわけですか

「えーと、ポーズがどうとかじゃなくて……」

あ、ごめんなさい。ポーズじゃないんですね、ごめんなさい

「ボールを2回回して置いてから蹴るまでの一連の動作のなかであの姿勢のときに確認していることは、ボールの軌跡を描いたりとか、右半分にしっかりとボールが蹴れるようにっていう体の動作について確認をしている時間なので、まああの姿勢じゃなくてもよかったかって言われればまあその確認ができればどんな姿勢でもいいんですけど、五郎丸選手が心地よいと思った姿勢がたまたまあの姿勢だったわけで」

あと両腕を組みますよね

「はい」

あれはどういう意味なんですか

「わからないです」

わからない

「はい。自然と生まれてきているもので、もともと五郎丸選手は手はおへその辺、前で組んではいたので。だんだん上には上がってきたんですけど、はい」

あ、もうひとつわからないんですけど、あの形自体にはあまり意味はない。何のためにするんですか?

「一連の動作には意味はあります。キックのための準備なので、どこの国にいても、試合の状況がどんな状況でも、どの角度から蹴るにしても、雨が降っていても風が吹いていても、必ず、まあ決められた何秒間のあいだに、ある一定の心理的な状況を作ってボールを蹴らないといけないので。そのためには、ボールの後ろにすぐ立ってすぐ蹴ってもなかなか上手くいかないことが多い。準備のために、少し時間をかけます。でまあ、物理的にボールは地面に置かないといけないですし、物理的に少し下がらないと蹴れないですし、そういう必ずしないといけないのでしている部分もありますし、あとはあの動作をしながら、いま申し上げたように、動作の確認をしながら、プレパフォーマンスルーティンといいますけど、プレキックのルーティンですよね、キックを成功につながるように、確認をしている時間です」

「であれを、あの一連の動作を持つことによって、研究においては、いろいろなこう邪魔となる考えとか不安とかっていうのを、取り除くことができると言われています。なぜならばあの、一連の動作自体に集中するので。他のことを考える必要がなくなりますから」

キックのことは考えてないんですか

「考えてないです。考えてないです」

あの一連の動作のことを考えているんですか

「あの一連の動作を遂行することを考えています。確認することを忘れていないかとか。でも3年半かかってるってことは、もう何も考えなくてもあの動作ができますし、ボールを2回回して置いた時点でシーンとした世界になるって彼は言ってます」

周りがワーーッとなっていても

「なっていても、どの国にいても、芝生が濡れていても乾いていても、まったく自分の中で静かな時間を作って準備をすることができます」

あぁ~。あのプレパフォーマンスルーティンに集中してる

「そうです。そのためにあの一連の動作を作るので少し時間が、あるのはなかなか一瞬でそういう状態には持っていけないので、ゆっくりとそういう状態を作って最後8歩でボールを蹴るんですけど、はい」

じゃあキックのことは考えてない

「えーと、スポーツ心理学の研究ではプレパフォーマンスルーティンがしっかりと確立されていれば、それに続くパフォーマンスは必ず成功するとわかっているので、そこは心配する必要はない」

プレパフォーマンスルーティンに集中することで、次のことに対するなんですか、不安とか雑念みたいなものがなくなるんですか

「なくなるように練習するのがメンタルトレーニングです」

ああー。それはもう、スポーツ心理学で、に、裏打ちされているわけですね

「そうですね。わりともう長い間、使われている手法ですから」

いわゆるゲン担ぎだとかお祈りとかまあいろいろ言う人もいましたが、まったく違うんですね

「まあゲン担ぎだったとしたらですよ、ああいうふうな同じような姿勢をすれば、どこの大学にでも受かったりとか、小学生ぜーいん(全員)サッカーゴールね、決まったりとかラグビーのキックを決まったりするわけですよね。あの姿勢が何か意味があるのであれば全員金メダルを取れるでしょうし。そうではないってことですよね」

あぁ~なるほどー

堀江選手のルーティン

――あと、そのほかの選手でプレパフォーマンスルーティン、あるんですか

荒木「ありますね。堀江翔太選手っていう2番を付けている選手は、ラインナウトでボールを外から選手、自分のチームの選手に投げるっていうことをしないといけないんですけど、ボールをもらってから投げるまで何秒間しかないんですけどその間にまっすぐ、まっすぐ投げれないとだめなので、まっすぐ投げられるように準備をします。ボールに必ずこのアルファベットがあるんですけど、メーカーの名前が書いてあるんですけど、そのどの字、のところに人差し指を置くかを決めていて、そこを持って、深呼吸を1回してから投げます」

はぁ~

陸上短距離の選手時代

――今度は荒木さんご自身の話になりますが、荒木さんご自身が陸上の短距離の選手でいらして、中学から大学まで毎年全国大会に出場された。そういう荒木さんがなぜ、メンタルの研究の道に入られたんですか

荒木「ひとつだけ理由があるかっていえばないんですけど、流れの中で、気がつけばそういうふうになっていたっていう感じはあります。ただ、その記録がよくても大きな試合で勝てないとか、勝てるだろうと思われている試合でそういう結果、周りからね、勝てるだろうと思われていてもそういう結果にならなかったことが多々あったので、なんなんだろうなと思っていましたけど、じゃあ勝ちたかったかと言われれば、まあその全国大会に出場していることで満足をしていたという感じは少しあるので、わからないですけど、常にこう気持ちが弱いとか、なにくそという気持ちが足りないとかよく言われていたので、それはなんなんだろうというのはありました。だからといってまあ、スポーツ心理学っていうわけではないですけど、自分の経験でなんとなく知りたいなあっていうのはあったとは思いますね」

鍛えなければメンタルも強くならない

――強い選手は、やはりメンタルが強いんですか。いい成績を出す選手

荒木「まコンスタントにいい成績を出す選手は、フィジカルのトレーニングと一緒に同時にメンタルのトレーニングをしているとは思います」

しているんですか

「していると思います。はい」

ほぉ。メンタルのトレーニングをして、強く

「なるのが早いと思います。今までは何度も何度も反復練習、をすることによって、フィジカルの練習を通してメンタルも鍛えられるだろうと思ってたんですよね。決してそうではなくて、何度練習しても何回どんな時間をかけて練習しても、フィジカルの練習をしたとしてもなぜ金メダルが取れないのか、なぜオリンピックの場面でだけうまくいかないのかというと、メンタルを別に鍛えていないからなんですよ。別に鍛えないといけないメンタルは。そのことに気づいている選手は、日本の、日本人だけではなくて、そのことに気づいている諸外国の選手はメンタルのトレーニングをしてますから、強いですよね」

私なんかから見ると、オリンピックに出るような人は、みんなメンタル強いと思ってしまうんですけど、そんなことはないんですか

「出ることは出られると思うんですけど、出てメダル取れるか取れないかっていう研究はされていて、メダルを取れた選手と取れなかった選手の差を見たら、メンタルが強かったか弱かったか、精神力があったかなかったか違いはあると言われています、はい」

はぁ~。もともとメンタルの強い人っていうのはいないんですか

「いないですね。何かが起きたときに対処対応する方法手段、術(すべ)を持っているかどうかなので、その術を増やしてあげるのが私としての役割ですけど。今まではこの競技生活を通じて20年30年かかって、どうすればよいかっていうのを体得してきたっていうふうな感じはあると思うんですが、いまはそうではなくてスポーツ科学というものがありますから、手っ取り早くこういう場面ではこういう方法で対処対応していけば、いいっていうことがわかっていますので」

では、不安を抱えた選手がいました。どうしたらいいですか

「わからないです。その選手と話してみないとわからないですし、どんな不安があるか、どんな場面でいつどのようなっていうことをよく聞いてみないと、解決方法はわからないです、はい」

本音を聞き出さないといけないですもんね

「そうですね、パフォーマンスに影響するものはすべて聞き取りたいので、どれだけまあ話をしてくれるかですもんね、はい」

奥さんとケンカしましたなんて[話も]、出ます?

「出ます出ます。はい、そういうプライベートな話も出ます。そういうことがパフォーマンスにも影響しますから、プライベートもラグビーのことも充実してるのがもちろん、心理的にも充実するでしょうし、プレーにも反映されますから」

「守秘義務があるので、誰が何を話したかは言えないですけど、でも多々あります。多々あります、はい。選手の話を聞きながら、どの理論を当てはめることによっていい方向に向かうだろうなあっていうふうな理論探しみたいな、その研究を思い出してみたりとか、教科書の何ページだったっけなみたいなことを思い出してみながらは話を聞いてはいますね」

そうすると選手と荒木さんの、協同作業みたいな感じになるんですか

「まったくそのとおりです、はい。こちらから一方的に何かを提供することはないですし、一方的にこれが答えですよって提示することは私はできませんから、協同作業で」

「過程を大切に、結果までたどりつくように2人で、もしくはまあ、リーダーズと私でやっていくっていう感じですかね、はい」

そうすると選手は、いいメンタルコーチについてメンタルのトレーニングができると、自分でできるようになっていくんですか

「それが最終的な目標で、私がいなくても自分でいろんなことを進めていく、自立してもらうっていうのが最終的な目標ですから。ずーっとそのキャリアを通じて、ある一定の選手とかチームのメンタルコーチをやるってことは理想ではないと思います」

荒木選手には?

――荒木さんが選手だったときに、荒木さんのようなメンタルコーチがいたらどうでしょう

荒木「日本一になれてましたかね。ははははは。でもまあ、準備のしかたをもう少し工夫すればうまく走れたでしょうから、はい」

何が足りなかった

「身長?(笑) わからなかったですし、なんでしょうね。足りなかったことは……自信もそうですかね。しっかり走れていても、もっと速くならないといけないとか、もっともっとって要求をされるので周りから。これじゃダメだこれじゃダメだっていう感じできてるので、それじゃ不安が募るばかりで、うまくいかないですよね、はい、はい」

タイムマシンがあればね

「そうですね。見てみたいですね、はい」


つづく

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