シンガポール「Black Tidings」のネタ帳【取材メモ】

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

はじめに:この記事について

以前に書いた2つの記事:

これらの制作過程で、最終的に本文に使えなかった取材メモが残ってしまっていました。その残骸を捨ててしまうのが忍びなくて、ここで残骸のまま記事化するというダメっぷりを発揮しております。

五輪エンブレムの白紙撤回後に、デザイン入りの名刺と紙袋を使い切ろうとした、東京都の舛添知事と同様のメソッドでございます。
参考:エンブレム紙袋や名刺、一転使いません 舛添都知事(松沢憲司)|朝日新聞デジタル(2015/09/04付)

補説1.玉木雄一郎議員の国会質問

「Black Tidingsはヒンディー語でうんぬん」という風説が国内ネット界で一段と拡散されたきっかけは、5月16日に衆議院予算委員会で質問に立った玉木雄一郎議員(民進党)の発言としていいでしょう。

採録しておきました。

2016-05-17_2032

報告書のなかの注意書きに面白い記述を見つけました。この「Black Tidings」っていうのは、英語をそのまま訳すと黒い文書とか情報とか通知っていうことだと思いますが、そのヒンディー語がですね「黒いカネを洗浄する」という意味だそうです。

映像で確認したい方は、2016年5月16日 衆議院予算委員会|衆議院インターネット審議中継 をどうぞ。問題のくだりは「3:18:00」あたりからです。

いちおう補足しておきますと、「報告書」というのは、今年(2016年)1月に出ているWADA(世界反ドーピング機関)独立委員会によるレポートのことです。

ツイートも出ていた

5月17日朝のタイムスタンプで、玉木さんご本人のTwitterアカウントからも同様の情報発信がされていました。

こちらでもわかるとおり、玉木さんは典拠を示して、

  • 「裏マーケティング」または「裏金を洗浄する」という意味らしい

としています。

この情報は、トンネル会社を経由して転がした(←適当)「横流し」物件だとわかります。

長っ尻も無粋なので、示されている出典に向かいました。

補説2.Twitterの疑問の声

どんなにうかつでテキトーでいいかげんであっても、ネット世間の声は侮れないものです。Twitter世間を覗きますと、中にちらほら、私と近い視点からの疑問が上がっておりました。

みんな「せやな」です。「英語」と「ヒンディー語」との関係がどうもうまく整いません。

ほんと、どっから出てきたんでしょうかねえ。

出典が気になって、それを考えだすと夜も眠れません。

地下鉄の電車はあれ、どっから入れたんでしょうかねえ? って古すぎ!

補説3.まさに『コンサルタントの秘密』案件!

それで気づいたんですけどね、これってまさに『コンサルタントの秘密』案件ではありませんか!

話を急ぎすぎました。

『コンサルタントの秘密』とは、不肖のデザイン芸人が生涯のバイブルとしているG.M.ワインバーグさん不朽の名著なのであります。

でもって本件は、その第5章にある「不調和の洞察」

言葉と音楽が合っていなかったら、そこに欠けた要素がある。(p.93)

そして、「ブラウンのすばらしき遺産」

言葉が役に立つこともあるが、音楽にはいつも耳を傾ける価値がある。心の中の音楽は特にそうだ。

を、そのまま適用できるのです。

なお後者の訳文は、続編の『コンサルタントの道具箱』p.170に出てくる方を使いました。元の訳書より日本語としてわかりやすいと思っています。

余談でした。

とまあそんなこんなでガチで眠れなくなってしまいました。

補説4.元ネタ第一発見者

覗いていたツイートのなかにヒントがありました。こちらです。

さっそく提示のリンクを見てみました。

BLACK TIDINGS Sentence, Usage and Examples,वाक्य, उदाहरण और उपयोग|raftaar.in

驚きました。見事に「役者」が揃っていました。

くり返します。総じてうかつでテキトーでいいかげんであっても、ネット世間の声は侮れないのであります。

悔し~い!

補説5.悔しい、でも怪しい

悔しいというより、怪しいと思いませんか?

―杉下右京/ 劇場版相棒II(2009)

dialog S-126
池 頼広
¥250

ここから、先ほどのツイートにあったように
ブラックタイディング[ス](黒い便り)という英語をヒンディー語に訳すと資金洗浄という意味になる」んですかねえ?

20160519_news003

相棒DS|tecmo.co.jp(2009/03/12付)より

さあ……

細かいことが気になってしまうのが、僕の悪い癖(←まるパクり)

まとめ(おわりに)

Black Tidings=ヒンディー語の「黒いカネを洗浄」とかいう話の出元は、インドのオンライン辞書の読み違いだったと推定できる。

この事実が示すことは何でしょうか?

そうであることと、誰かが「そうである」と言うこととは、似ているようでまったく違うということです。詳しくはこちらに書きました。

そうであることと「そうである」と言うこととの関係(2014/12/11)

他人を簡単に信用しないのは正直しんどいですが、それ以上に勉強になります。

玉木雄一郎さんの光と影

本件がそうだという意味でなく、一般論として述べます。

面白そうなネタにうかつに食いつくと、往々にしてそれが命取りとなります。中には巧妙に仕組まれた「釣り餌」の可能性だってあるわけです。気をつけましょう。

詳しくは書きませんが、かつてガセネタに食いついて、最終的に命を落とした代議士だって実際いたわけです。

これからも玉木さんをニヤニヤと見守ることにします。

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました