英文精読「オリンピックのやめ方」―IOC開催都市契約・11章

こんにちは。英文読みますデザイン芸人、ヤシロです。

しばらくぶりにじっくり読んでみました。

読んでみたのは、2020年東京オリンピックの「やめ方」が書かれた文書です。

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※写真と本文は関係あります

以下にやめ方のポイントをまとめておきましたので、適宜ご活用くださいませ。

要約:Executive Summary

オリンピックのやめ方は、IOCが大会開催地と結ぶ「開催都市契約」の第11章「XI. Termination」に書いてあります。東京都・JOCが一方の契約当事者である2020年版(テンプレート)では、Section 66(66条)にあたります。

やめ方のポイント

簡単に言えば、何らかの意味で「日本やべえ」「東京やべえ」とIOCが判断すれば、東京でのオリンピック開催はやめられます。

開催の返上・中止を認めるかどうかの判断は、すべてIOCの一存です。そういう契約です。

「日本/東京ヤバくね?」というIOCの判断により、「オリンピック競技大会開催権の剥奪/返上」「東京開催の中止」が決まります。

ちなみに冬季五輪での前例から言えば、ここまでのプロセスで代替開催地の検討は必須ではありません。記録を読むと返上後にIOCが決め直していました。この件はまた別途。

原文ファイル:HOST CITY CONTRACT

今回じっくり読んでみたのは、こちらの第11章「XI. Termination」です。

HOST CITY CONTRACT Games of the XXXII Olympiad in 2020 [template](PDF)|teamusa.org

USOC statement regarding the release of the 2020 Host City Contract template|teamusa.org(2015/05/14付) からリンクされています。

USOC(米国オリンピック委員会)のサイトで公開されている、2020年版「都市開催契約」のテンプレートです。

2016年版は「rio2016.com」から

リオデジャネイロ五輪に適用されている2016年版(PDF)は、rio2016.com配下で公表されています。こちらでは65条となります。

※2016年版「Host City Contract」を含む各種開示文書は、http://www.rio2016.com/en/transparency/documents からダウンロードできます。

ジャイアンIOC健在

こちらと比べてみたところ、2020年版では「IOCの一存で決める」旨が明確となるように、項目ならびに語句が追加されていました。まさに、ジャイアンぶりの強化であります。

IOCの「オレ様」規定、ますます盤石でございます。

東京都「非開示」のまっ暗闇

この「開催都市契約」、前述のとおりリオデジャネイロの組織委員会は公開しているんですが、あいにく東京都は開示していなんですよね。

古いやつだとお思いでしょうが、まるでこの歌そのまんまじゃあござんせんか。

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非開示決定文書には

IOCとの信頼関係を著しく害し、オリンピック計画・開催に多大な支障をきたすおそれが

とかなんとか理由が書いてありました。※強調は引用者


出典:情報公開審査会(新規諮問 第871号)|東京都(2013/12/03付)

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from commons.wikimedia.org

「非開示でも支障きたしてるよねー」って、私なんぞは思ってしまいますけどね。たとえばまあ、こちら方面ですわ。

どうでしょうか。差し支えてはいませんでしょうか?

というようなことを以前、「非開示」東京都は黙殺?「Rio 2016」不都合な真実(2015/12/28)に詳しく書きました。ご興味がありましたらそちらへお願いいたします。

上のリンク先と重複しますがもう一度。非開示に徹するんなら、たとえ署名前のテンプレートとはいえUSOCの「米リークス」案件に東京都も厳重に抗議しなきゃいけないはずです。ところが、いまなお都の側から抗議をした形跡は認められません。変なの。プリンシプルはないのか。ないか。

ジャイアンIOCの「オリンピックのやめ方」for 2020【抜粋】

IOCが「日本やべえ」「東京やべえ」をどこで判断するか?というポイントに絞り、要点を抜粋しておきます。

具体的には、Section 66 a) の規定の要旨です。

忠実な逐語訳ではありません。「ジャイアン語版」とご理解ください。

iTunes Storeにこんなカバーがありました。ボエ~

おれはジャイアンさまだ!
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その66「契約の終わりかた」

♪お~れはジャイア~ン IOC~

「おれはIOCさまだ!」は、こう言いました。

a)これで「やべえ」→「オリンピック終了」

もしこんなことになったら「やべえ」からな。「オリンピック終了」かもしれないぞ。

  • 情勢不安
    • 戦争、または交戦状態
    • 暴動
    • 海外との取引、輸出入の制限・禁止措置の発動
    • その他参加者の安全が保証できない状態
  • 契約不履行
  • 開催能力の問題(2020年の実施は無理)
  • 法令上の義務違反
  • 現存する法規定の侵害

b)「やべえ」から「もうやめよう」の流れ

もし「やべえな」とオレ様が思ったら、こうやるぞ。

  • 東京都・JOC・組織委員会に、送達確認できる形で文書送るぞ。郵便かFAXか宅配だな。
  • で、どうにかしろって言うわ。言うだけ。お前らが何とかしろ。
  • 改善期限は、開会120日前までなら60日以内。120日を切ったら「残り日数の半分」だ。どんどん短くなるぞ。
  • 期限内に改善されなかったら「オリンピック終了」だ。
  • 言っておくが「もう一回お願いします!」とかのくだりはないぞ。オレ様は耳貸さない。とんねるずの特番じゃないんだから。

あ、どれも判断はみんなオレ様のさじ加減だから。よろしくな!

ジャイアンっぷり全開だねぇ~

精読:66条 a)―IOC開催都市契約

こちらでは「開催都市契約」の66条 a)にポイントを絞り、丁寧にみていきます。

<凡例>

日本語(拙訳)

*対応する原文 Taiou suru gembun

のスタイルで記述します。適宜補足はします。

引用文の差分情報

ちなみに引用原文の強調は、「2016年版には存在せず、2020年版で新たに加わった/差し替えられた文言」です。

66. Termination of Contract(契約の終了)

a)次のような場合に、IOCは本契約を終了し、開催都市から競技大会の開催を剥奪する権限を与えられているものとする。

a) The IOC shall be entitled to terminate this Contract and to withdraw the Games
from the City if:

(補注:具体的には、次の5つの条件のいずれかとなります)

1)情勢不安

開催前、大会期間中を問わず、開催国が次の状態にある。

  • 戦争(war)
  • 市民の暴動(civil disorder)
  • 国際社会による取引制限(boycott)、禁輸措置(embargo)の発動
  • 交戦状態(belligerence)にあると公式に認定された状況
  • または、IOCがその裁量において、大会参加者の安全が、いかなる理由であれ重大な脅威または危険に晒されていると信じられるだけの合理的根拠がある

(それぞれ判定は任意の時点で可能)

*原文

i) the Host Country is at any time, whether before the Opening Ceremony or during the Games, in a state of war, civil disorder, boycott, embargo decreed by the international community or in a situation officially recognised as one of belligerence or if the IOC has reasonable grounds to believe, in its sole discretion, that the safety of participants in the Games would be seriously threatened or jeopardised for any reason whatsoever;

2)契約不履行

政府の契約条項(本契約書5条で定義)がどれか1つでも遵守されていない。

ii) any covenant of the Government (as referred to in Section 5 of this Contract) is not respected;

3)開催能力

大会が2020年のあいだに挙行されない。

iii) the Games are not celebrated during the year 2020;

4)法令上の義務違反

東京都・JOC・大会組織委員会に、開催都市契約、オリンピック憲章、または任意の関連法令で重大な義務違反がある。

iv) there is a violation by the City, the NOC or the OCOG of any material obligation pursuant to this Contract, the Olympic Charter or under any applicable law; or if

5)現存する法規定の侵害

本契約72条(法令の制定・改正・施行)に関する重大かつ回復不能な侵害がある。

v) there is any material uncured breach of Section 72 of this Contract.

72条では「制定・改正・施行された法令が、既存のルールを侵害しない」旨が定められています。

要するに「後出しじゃんけん禁止」です。2020年版で新たに追加された項目です。

だいたいこんなところです。

おまけ:ジャイアンIOCへ

おまけです。1枚スクリーンショットを貼っておきます。

藤子・F・不二雄先生のメッセージにはっとして、いいおっさんが居ずまいを正されました。

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出典:ドラえもん(1)【期間限定 無料お試し版】 (てんとう虫コミックス) 「一生に一度は百点を…」p.139

Kindle無料お試し版の「ドラえもん」、コンテンツは5月31日まで有効です。

ジャイアンIOCにも

百点なんか
こりごりだい!!

とかコンピューターペンシル放り投げて言わせたい。てか言え。みんなまとめて成敗されてしまえ。

まとめ:「66」の金言

まとめます。ここまでIOC「開催都市契約」の66条に絞って、その内容をみてきました。

「66」で思い出すのはこの名手。

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牧田知丈さん
第9回・細かすぎて伝わらないモノマネ選手権(2006/09/28 OA)決勝

「オープン戦で雪が降ってきてしまい審判にコールドゲームを要求する落合博満選手」

この名セリフです。

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もうやめよう

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おわり

コメント

  1. KIM GOH より:

    今回オリンッピク開催入札後大幅に予算金額が変更されましたがこれは入札に応じた他国を騙した事になりますがIOCは契約違反でなぜ日本側を訴えないのですか?

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