久生十蘭のおすすめ小説なら「猪鹿蝶」一択

こんにちは。「DJチャーチャのはりきりTuesday」今週のチャーチャランキングの発表です。

と、偽DJネタから始めてみました。用件はタイトルのとおりです。

Googleで「久生十蘭 おすすめ」と検索しても全然出てこないのが納得いかず、「だったら猪鹿蝶しかないだろ」と確信しているおっさんが書いておくことにしました。

20160315_8_photo04

久生十蘭(ひさお じゅうらん)(1902-1957)from 鎌倉文学館 via commons.wikimedia.org

要約:Executive Summary

  1. 久生十蘭のおすすめ小説なら「猪鹿蝶」(1951)一択です。
  2. 「猪鹿蝶」をいちばんおすすめしたい人(読んでほしい人)なら、横澤夏子さん一択です。

書誌情報

書籍では、岩波文庫の『久生十蘭短篇選』に収録されています。

オンラインでなら、青空文庫版「猪鹿蝶」で全文読めます。

ちなみに、全文コピペして文字数カウントさせたら11000字あまりでした(Microsoft Word 調べ)。400字詰め原稿用紙換算で28枚弱の作品となります。

一文引用:イントロ&エンディング

「猪鹿蝶」の書き出しはこうです。

いつお帰りになって? 昨夜? よかったわ、間にあって……ちょいと咲子さん、昨日、大阪から久能志貴子がやってきたの。

でもって11000字近くいろいろあって、最後の一文はこうなっています。

そのことについて、ご相談したいと思いますから、これからすぐいらっしゃらない?

ここで小説は終わりです。

今回また全編読み直しました。いやはや、あらためてほんとにすごい。

「一択」の理由

いずれも「読めばわかる」という話ではありますが、説明しておきます。

なぜ「猪鹿蝶」か

小説として非常に特殊な文体で書かれており、かつ、それが成功しているからです。「文体マジシャン」との呼び声高い(らしい)久生十蘭の異能ぶりが存分に味わえます。

「小説でこんなことができるとは!」とびっくりできます。

【未解決】なぜタイトルが「猪鹿蝶」なのか?

ところで、なぜにこの文体・構成・ストーリーで、題名が「猪鹿蝶」なんでしょう? そんな疑問も起こります。結論から言えば、わかりません。

花札の絵柄や遊び方周辺にあたりをつけていろいろ探ってみましたが、結局めぼしい手がかりは得られませんでした。

なぜ「横澤夏子さんにおすすめ」か

「猪鹿蝶」のことを、ここまで「小説」と書いてきました。しかし私の中での分類は違います。

「コント」だから

「猪鹿蝶」のテキストは、私には「コント台本」です。それも、非常に優れた一人コントの台本です。

たとえ「台本」とはいえ、イッセー尾形、モロ師岡、バカリズム、女性では楠美津香、友近、柳原可奈子(以上敬称略)ら幾多のタレントが開発し演じてきた「一人芝居コント」を、既に彼ら彼女らよりはるか昔の昭和26(1951)年の段階で「もうやっていたとは」と驚けます。

めちゃめちゃ「鼻につく」から

一人芝居コント「猪鹿蝶」で特筆すべきは、中に登場するある女(物語の実質上の主役)のウザさ加減です。その鼻につき具合ときたら、えげつない輝きを放つ「極み」レベルに達しています。

で、近ごろ「鼻につく女」の「一人芝居コント」といえば、横澤夏子さんです。最近ではR-1ぐらんぷり2016(3/6)の決勝に進出し、「優勝候補」との下馬評もありましたが惜しくも敗退されました。

今年は優勝者のハリウッドザコシショウさんが強烈すぎましたので致し方ない気もいたします。次回の雪辱に期待しています。

ちなみに、上のツイートに一緒に添付されているポスター画像は、ルミネの広告のようです。

【参考】2016年春広告メイキング ~幸せだけ女って上手に隠せない | Ad Making|LUMINE MAGAZINE(2016/02/01更新)

ウザい。

出会わせたい「猪鹿蝶」vs.「横澤夏子」

とまあそんなこんなで、以来「猪鹿蝶」を横澤夏子さんが朗読するラジオドラマを聞いてみたいなと、妄想が止まりません。

「猪鹿蝶」で描かれている女たちのえげつなさ加減を知ると、横澤さんがネタ中で演じる女性の鼻につくウザさ具合など、全然かわいく見えてきます。3つ4つ格が違う気がいたします。

おっさんが若い人相手にやりがちのクソバイス(クソのようなアドバイス)そのもので本当に申し訳ないので直接お伝え申し上げるには二の足を踏んでしまいますが、横澤さんにおかれましては捲土重来のためにぜひとも「猪鹿蝶」を知っていただき、ご自身の血肉としてほしいところであります。

付記:もうラジオドラマになっていた

くり返しますと、久生十蘭の「猪鹿蝶」は、私には一人コントの台本なのです。初めて読んで以来「猪鹿蝶って、ラジオで朗読するだけで絶対面白いはず」と思っていました。

今回調べてみたら、NHKラジオ第1の「ラジオ文芸館」でもうやっていました。

…挑戦的なスタイル。久生十蘭の計算され尽くした短編の美技を朗読で味わう。

と紹介されていました。

ただ朗読を担当された大沼ひろみアナウンサーのお声を存じ上げないため、仕上がり具合がさっぱり想像つきません。聞いてみたいのですが、オンデマンドでは過去の放送にアクセスできないようです。良コンテンツが死蔵していてもったいない。

再(々)放送を待つことにします。余談でした。

まとめ

あたしの気持、お察しになれます?……パンセ・ヴゥ(お察しねがう)ってとこよ。

まとめます。個人の見解です。

  • 久生十蘭のおすすめ小説なら「猪鹿蝶」一択です。
  • 「猪鹿蝶」は、私の中では「一人芝居コントの台本」です。
  • 2016年のいま、一人芝居コント「猪鹿蝶」の演者としていちばんふさわしいのは、横澤夏子さんです。
  • もし横澤夏子さんの持ちネタに「猪鹿蝶2016」が加わったら、彼女はR-1ぐらんぷり2017に優勝できると思います。

幸せ~

ふざけてなんかいるもんですか。大まじめよ。

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました