サービスを選ぶコツ「オレンジジュース・テスト」を知ってますか?―スペックワーク問題を考える・外伝

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こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

「オレンジジュース・テスト」って知ってますか? 知っていると、捗りますよ。ぜひ覚えて帰ってください。

直接の関連は薄いですが、スペックワークの問題で思い出したので書きました。

要約:Executive Summary

  1. 「オレンジジュース・テスト」を知っていると、人生が1%ばかり(※当社比)うまくいって、生きやすくなります。なぜなら、どんなサービスを選ぶ場合にも、ダメな連中をある程度排除することができるからです。
  2. 「オレンジジュース・テスト」の話は、G.M.ワインバーグさんの著書『コンサルタントの秘密』(1990, 原著1985)に載っています。
  3. デザイン業も含め、およそ知的生産・サービスに携わっているんなら、お前らいっぺん『コンサルタントの秘密』読んどけ。いやほんとマジで。

「オレンジジュース・テスト」とは

何かのサービスを選ぶとき、こちら側の条件・要望に対して、こう答える相手を選びましょう。

できます。これだけかかります。

これが、『コンサルタントの秘密』でいうところの「オレンジジュース・テスト(the Orange Juice Test)」の合格回答です。

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「不合格」回答―選ぶべきでない相手

「できます」だけで、「これだけかかる(コスト)」に触れない相手は、選ぶべきではありません。

もちろん、「できません」と言う相手も選んではいけません。

いずれも「オレンジジュース・テスト」不合格です。

これで、「駄目な連中をある程度排除でき」ます。ちなみに原書では「you can eliminate some of the losers」です。

名称の由来

ここまででおわかりのとおり、「オレンジジュース・テスト」は、オレンジジュースそのものには大して関係ありません。

「オレンジジュース・テスト」の名前は、「社員700人が一堂に会する大会(コンベンション)で、午前7時に全員に絞りたてのオレンジジュースを」という要望にどんな答えを返すかで、会場となるホテルの宴会場(バンケット)を選んだ、という、依頼主が著者のワインバーグさんに話したエピソードが由来となっています。

詳しくは同書または他のサイトの説明に譲ります。

めっちゃ使える!

何かのサービスをどこに頼もうかというとき、「オレンジジュース・テスト」はめちゃくちゃ役立ちます。使えます。

『コンサルタントの秘密』にもこう書かれています。

私はこのテストを毎日利用している。何らかのサービスをしてもらいたいと思ったときには、私は相手に何をしてほしいかを告げる。そしてそれが私にとって値打ちがあるかは私が決める。(p.37)

これにならって、私も何か業者さんに発注するときは、「オレンジジュース・テスト」を意識して自身の要望を伝えます。そして同じく、相手の提供するサービス内容が私にとって値打ちがあるかは私が決めています。

同じく『コンサルタントの秘密』p.37、つづきです。

オレンジジュース・テストのお蔭で私は、見当はずれの相手と押し問答してつぶしたはずの時間を何百時間も節約した。

定量的な効果測定はしていませんが、私も知らなかった頃より要らぬストレスを増やさずに済んでいる気がします。

私はそれをガソリンスタンドで使う。仕事場でも使う。レストランでも使う。ホテルを選ぶときにさえ使う。

同じく今月使ったばかりです。後ほど詳しく説明します。

思い出した経緯は、「スペックワーク問題」

この記事を書くに至った経緯を記します。

選び直しとなった東京五輪エンブレムを一般公募していることに関して、米国のAIGAが森喜朗大会組織委員長に宛てたオープンレター:

を紹介した記事:

をきっかけに、「スペックワーク」の問題が耳目を集めています。「スペックワーク」の定義は「支払いが約束されていないのに、サービスを提供する仕事」というのが、目下の私の理解です。

と語る私も、この言葉を先月(11月)知ったばかりです。

で、この機会に「スペックワーク」を考えようとしたとき、たどり着いた本が3冊ありました。『コンサルタントの秘密』は、そのひとつです。

読み方は「エー・アイ・ジー・エー」のようだ

ちなみに「AIGA」の読み方ですが、アルファベット1つずつを粒読みするのが本式のようです。

Webサイトの「About > How to say our name」にこうありました。※下線は引用者

Founded in 1914 as the American Institute of Graphic Arts, AIGA is now known simply as “AIGA, the professional association for design.” When referring to us, “AIGA” will do the trick—not “the American Institute of Graphic Arts,” not “the AIGA,” and not AIGA pronounced as a word (“Ay-guh” or “ā-gə”). You only need four little letters to spell one big design community. Say it with us now: A-I-G-A.

「エーアイジーエーと言ってね」と理解しました。もし読み違いがあればご指摘ください。

「オレンジジュース・テスト」の適用事例:自転車古タイヤ回収

参考に、ちょっとした用件をどこに頼むかを決めるのに私が「オレンジジュース・テスト」を使った最近の例を紹介します。

対象のサービスは「自転車の古タイヤの回収」です。

ぼくは家財を9割手放すことにした機会に乗じて、引き取り先を探すことにしました。

背景

うちに、捨てたい自転車のタイヤが4本あります。

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しかし私の住む自治体では、ごみの日にタイヤを出すことができません。「販売店などで引き取ってもらってください」となっています。

ゴム自体は燃えるごみに出せるので、自転車タイヤなら切り刻んで出すのも一案ですが、あいにく円周部分にワイヤーが入っているため、それも面倒で困難です。そんなこんなで後回しになっていました。

コストを積極的に尋ねる、「セミ」テスト

ただし今回私のやったことは、正確には「オレンジジュース・テスト」ではなく、テストの「半歩先」です。

この種の問い合わせの場合、私は積極的に「必要なコスト」を尋ねるようにしていますので。

テスト結果は?

「古いタイヤが4本あるんやけど、そっちで引き取ってもらえる?」

と、自宅から近い順に、近隣の自転車屋さん数店に電話して問い合わせた結果は、次のとおりです。

結論を先に述べます。こんどC店に持っていくことにしました。

A店の場合:

できます。1本400円(税別)です。

「テスト」は合格です。でも高いです。ほかもあたってみました。

B店の場合:

(1分(コール20回)鳴らしても出てきません)

定休日でも営業時間外でもないはずですが、忙しいのかね。不合格です。

店舗にとって不運な状況だったのかもしれません。今回は残念でした。

C店の場合:

最初の回答は、こうでした。

タイヤだけっていうのは、やってないですね。

――お金も出すけど、ダメ?

はい、申し訳ありませんが。

これだけでは「不合格」に聞こえます。

しかし結論を出すのはまだ早い。

タイヤ「だけ」の言葉じりをとらえて、こう確認してみました。これまで数限りなく嫁と重ねてきた口論の経験をここで生かさない手はありません。

――確認やけど、「タイヤだけ」はやってない、ってことは、ほかに何か引き取ってもらえるもんはあるって意味?

古い自転車なら、1台1000円で回収してるんですけど。

――あ、そうなんや。

新情報が出てきました。乗っかってプランを提案します。

――そしたらね、もし、自転車1台持っていって「古いタイヤも4本あんねんけど一緒に引き取ってもらえるかな?」ってお願いしたら、やってくれはんの?

それでしたら、はい。大丈夫ですよ。

――へぇー。で、そんときの回収料はなんぼ?

1000円です。

――あ、一緒なんや。

はい。

――ほんまに?

ええ。

――ふーん。変なの。

でも決まりです。こう伝えて話を終えました。

――わかったありがとう。そちらへ持っていくことにしたらまた連絡さしてもらいますわ。

ということで、自宅アパートを退去するときに、こっちで嫁の使うセカンドバイク(8000円で買った中古)1台と一緒に持っていくことにします。

「古タイヤ処分プロジェクト」は未完の状態ですが、体験できた「カスタマー・エクスペリエンス」としては、十分満足できるレベルの結果でした。

余談:使用言語について

余談ですが、このような場面で、私は関西弁を好んで使います。フランクに話を進めやすい関西弁は、標準の日本語よりも適した言語だと思います。

コストを尋ねるのに、心なしかスカして聞こえる「いくらしますか?」よりも、ゲーセワな「なんぼしますの?」の方が、私は気軽に言いやすいですし。

せやから関西の言葉って「商売」に向いてるなーって思うねんな。知らんけど。

まとめ:スペックワーク問題と『コンサルタントの秘密』と

話を戻して、まとめます。

スペックワークの問題を考えるにあたり、私の脳裏には3冊の本が浮かびました。そのひとつが、冒頭で述べた『コンサルタントの秘密』でした。

くり返しますが、あらゆる知的生産・サービスに携わる人にとって、必ずや得るところのある1冊だと請け合います。既に邦訳の刊行からも四半世紀、原著なら30年が経っていますけれども、同書に書かれていることの価値は、今なお失われていません。いやほんまにマジで。

ということでまずこの記事では、「外伝」的にスペックワークからは離れた遠めのところの話をしました。

五輪組織委員会を憐れむ歌

私の勝手な決めつけですが、東京2020オリンピック競技大会組織委員会の人らはきっと、『コンサルタントの秘密』を

  • 読んでいないか、
  • 読んでいても何も残っていないか、
  • 残っていても生かす術を持っていないか

のどれかだと思います。かわいそうに。

「オレンジジュース・テスト」のくだりには、こんな記述もあります。

私はまたそれを(略)、何の代償もなしに何かをもたらすような計画を考えたがるという、われわれ相互の間に発生する最適化症を治療するのにも使う。(p.37)

大ざっぱに述べると、TOKYO 2020をめぐる動きって、なんか「何の代償もなしに何かをもたらすような計画」に見えてしまっているのですよね。

もっと雑に言うと、あれこれ虫が良すぎて、ダサいんです。

あちこちからもれ伝わってくる大会組織委員会の皆さんの言動からも、「オリンピック」を葵の印籠にして無体を押し通すかのような、虫の良い発想と行動原理が透けて見えています。

いずれにせよ、五輪エンブレムをめぐる諸問題は、ものを考えるのに本当にいい題材であります。

付記:「その先」は

オレンジジュース・テストの「その先」の議論については、こちらのブログ記事のコメント欄が参考になります。

具体的にいうと、

傲慢な言い方かもしれませんが「このテストは、(ワインバーグの基準で使うなら)優秀な下請け業者を見つけるテストにはなっても、優秀なビジネスパートナーやコンサルタントは見つけられない詰まらないテストだな」という感想しか持ちませんでした。
(2013/03/12付コメントより)

あたりからの議論です。でもそこは後回しです。

ひとまず「オレンジジュース・テスト」の話は以上です。残りの2冊もまた別の記事で。

原書&ブログ紹介&

最後に参考まで。原書だとKindle版があります。

本日(12/13)時点の価格は3ケタ(792円)でした。お得です。

ワインバーグさんによる、ほぼ同名のブログもあります。英語です。

Weinberg’s Secrets of Writing and Consulting

つづく予定

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