日本人なら知っておきたいネットしぐさ:「削除」の巻

こんにちは。マナー講師をしております、ヤシ川禮子です。

まじめな話をでたらめに語る試みです。

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歌川国芳「暑中の夕立」(ca. 1850) commons.wikimedia.org

はじめに

江戸の昔から伝わる「ネットしぐさ」にこそ、日本人はすごいと外国人に思わせる他人への思いやり、真ごころにあふれる心遣いの真実があります。

この記事では、削除に関するネットしぐさ「けしずみ残し」を紹介します。

解説:ネットしぐさ「けしずみ残し」

江戸っ子のあいだでは、古くからネットでの削除に関して、このようなマナーが言い伝えられてきました。

1.消すべからず

まず大原則として、一度ネットに書き込んだものは、消すべきではありません。それが江戸から代々伝えられてきたネットマナーでした。

一度ネットの世界に放たれた言葉を後から削除して「なかったもの」にするという行為は、人生を貧しく、人を不幸せにします。

「消す」ではなく「足す」で

もし「そのまま」の状態がまずいならば、「消す」のではなく、追加訂正情報、補足説明など「足す」方向で対処を考える。

それが、江戸の昔から人と人とが気持ちよく暮らせるための知恵でした。

2.消すなら「けしずみ残し」を

しかしそれでも、削除した方が妥当と判断されるケースも生じるでしょう。

たとえその場合でも、削除すると同時に「削除した」というその事実を残すことが江戸の粋なマナー、心遣いとされてきました。

このネットしぐさは、「けしずみ残し」と呼ばれています。薪や炭の火を途中で消して作る「消し炭」になぞらえた名前です。

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3.マナー講師ヤシ川の基準

ヤシ川自身が、追加訂正ではなく「削除」を選択肢に入れる基準は、次のとおりです

  • 事実関係に重大な誤りがあったとき
  • (補足・追加説明付きでも)公開を続けることによる公共の不利益が、利益を上回ると考えられるとき

後者についてひとつ補足しておきます。考慮すべきは公共の利益または不利益であって、決して「自分の」利益・不利益ではありません。

そこはくれぐれも取り違えませんように。

削除の「ネットしぐさ」・良い例

削除に関するネットしぐさ「けしずみ残し」が守れているかという観点から、当代の良い例と悪い例を挙げておきます。

先に良い例からです。

これらは満点でないにしても、合格点の対応です。

NHK「クローズアップ現代」

NHK総合の番組「クローズアップ現代」のトップページには、

というリンクがあります。

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ある回の放送での「やらせ」指摘に応じたものです。

問題となった、

も、アーカイブとして残っています。ただし、他の放送日にある「放送まるごとチェック」の段はありません。

総合して言えば、

  • まるごと削除はしていないこと
  • 削除したことを示す記述はないながらも、元の情報よりも後の「足し」「残し」を目立たせていること

から、合格点の対応だと言えます。

圧巻のアーカイブ

それより圧巻なのは、これまでの放送から、1993年4月の第1回分から、全3700回(9/3放送まで)にのぼる放送内容がすべて参照できることです。

問題が皆無とは思いませんが、これらの事実から、私は「クローズアップ現代」を基本的に信頼しています。

飯間浩明さん

個人の例もひとつ挙げておきます。飯間浩明さんです。

訂正後にはじめて目にした私には、なんのことかわかりません。

たぶん、この数字を最初間違えていたのかなとは思いますが。

それでも、何かものを言う者として責任を取っている姿勢に、信頼が置けます。

削除の「ネットしぐさ」・悪い例

悪い例を、記憶に新しい事例から述べます。対象とするのは、「盗作」疑惑が持ち上がった結果、発表後1か月あまりで使用中止となったオリンピックの公式エンブレムの一件です。

ここでは、「けしずみ残し」のネットしぐさに反したふるまいが数多く観察されました。

デザイン界隈の方々

具体的には挙げませんが、都合が悪くなるとツイートなり記事なりアカウントなりを削除する例が多々あったようです。

これらの例がまずいのは、削除すること自体のみならず、削除したその事実に関して、何の表明もしていないことです。

そのような行為は「逃亡」と称され、新たな攻撃材料とされるのがオチです。「消し炭」とならず、火がついたままになっています。

一般ツイート人も

あるいは今般の例に限らず、Twitterでは、思わぬ反響の大きさに元のツイートを削除してしまう一般人の例もしばしば見られます。

これも一種の「逃亡」です。ネットしぐさをわきまえた江戸っ子のあいだでは、心底軽蔑される行為です。

最悪の例:東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会

そして、ネットしぐさ的評価からは最悪であるのが、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の運営サイトです。

以下、単に「組織委員会」とします。

はっきり言って最悪のクズです。

最悪その1

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組織委員会のサイト・tokyo2020.jp/jp/では、9月に入って

のニュースページを含め、tokyo2020.jp/jp/emblem/ 配下のコンテンツが、ごっそりまるごとなくなりました。

記事執筆日(9/6)現在、サイト内でその経緯が把握できる情報は、私の見る限り

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、
本日、大会エンブレムの取り下げを発表いたしました。新エンブレムの作成方針に関しては、詳細が決まり次第お知らせします。

ニュース > 東京2020エンブレムについて(2015/09/01付)

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というページだけです。

クズ対応です。

ひどいクズ対応ぶり

何がクズかというと、関連のコンテンツを削除した事実と経緯を既存のURLに示していない点です。

この事実は、ネットしぐさ的観点からすると、組織委員会が自分たちの言動に責任を取らない、取る気がないという宣言に受け取れます。

重ねて申し上げます。クズです。

最悪その2

組織委員会のWebでの情報発信体制のクズぶりは、その前からでした。

たとえば、

2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会エンブレムデザインを募集|マイナビニュース(2014/09/19付)

に記載されていたエンブレムデザインの募集要項のページ:

は、7月末に「疑惑」が生じた時点では既に存在していませんでした。いつ削除したかの情報も、どこにも見当たりません。

まるで、外部からの検証を拒絶しているかのようです。実際、しているんだと思いますが。

クズです。

「ネットしぐさ」からわかる組織委員会のクズぶり

これらから言えるのは、組織委員会はtokyo2020.jpに、自分自身に都合のいい情報しか載せる気がないということです。

由緒ある「ネットしぐさ」をわきまえておらず、最悪です。クズ運営です。

まとめ

以上、マナー講師のヤシ川が、削除に関する由緒あるネットしぐさ「けしずみ残し」についてお届けしました。

若干言葉足らずの部分を補足しますと、個人にせよ組織体にせよ、なにも、都合の悪い情報も進んで何から何まで全部公開しろということではありません。

そうではなく、いったん自己の判断でネットの世に出したものを、後から都合が悪くなると、削除して「なかったこと」にして「逃げる」のは違うだろうという話です。そのようなマネは人の道に背くクズがやることだと、江戸の庶民のあいだでも言い伝えられてきました。

申し上げたいのは、たとえ「逃げる」にしても、思いやりの心にあふれた、世界に誇れる日本人らしい逃げ方があるのだということです。知らないけど。

おわりに

最後にひとつ、念のため申し添えておきます。

当記事が元ネタにしている「江戸しぐさ」は、まったくの虚偽、フィクションです。

【著者インタビュー】虚偽で形づくられた「江戸しぐさ」の正体とは|WEB第三文明(2014/12/27付)

などをご覧ください。

お間違えになりませんよう、重ねてお願い申し上げます。

おわり

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