小泉純一郎「人生いろいろ、会社もいろいろ」発言(2004)を生んだ「2人の女」とは―人生いろいろ(2)

こんにちは。

Wikipedia「人生いろいろ」に書かれていないところを追いかけていく、誰と戦っているんだシリーズ「《人生いろいろ》いろいろ」です。

今回追いかけるのは

2004年には当時内閣総理大臣の小泉純一郎が衆議院決算行政監視委員会で「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」と、本曲を使って答弁した。

この先です。

俗に「歴史の陰に女あり」などと申しますが、まさにぴったりの案件でした。

人生いろいろ!

要約:Executive Summary

2004年、小泉純一郎首相(当時)が

人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろです。

と国会で答弁したことで、ひとしきり話題となりました。「炎上」に近い状態だったと記憶しています。

いまさらの話ですが、小泉さんのこの「人生いろいろ」発言の陰には「2人の女」が存在します。

1人目はもちろん、《人生いろいろ》(1987)の島倉千代子。

人生いろいろ
島倉千代子
¥250

そしてもう1人、国会会議録から浮かんできたのが、山谷えり子衆議院議員(当時)です。

20150721_g7004013

山谷 えり子(やまたに えりこ)|議員情報|参議院より

その前年(2003年)に、衆議院本会議で「人生いろいろ」発言をしているからです。

国会会議録の「人生いろいろ」(抜粋)

国会会議録検索システムで「人生いろいろ」を検索すると、44件ヒットします(2015/07/21現在)。

日本国憲法の下で開かれた国会では、「人生いろいろ」と発言があった会議が44件あるという意味になります。

ちなみに、「人生いろいろ」国会の

  • 1回目は昭和29(1954)年
  • 2回目が24年後の昭和53(1978)年
  • 3回目はその19年後、平成10(1998)年

です。3回目でも《人生いろいろ》の発売(1987)から11年経っていますから、曲のヒットによる影響はなかったようです。

という具合に、過去全44回あった「人生いろいろ」国会の議事録すべてに目を通し、「人生いろいろ」の前後を読んでおりましたら、面白いことがわかりました。

小泉純一郎さんの「人生いろいろ、会社もいろいろ」発言には、「元ネタ」があったのです。

以下に当該の発言とともに並べておきます。なお、記載の所属政党、役職などはすべて当時のものです。

#08:2004年の「人生いろいろ」by 小泉純一郎

まず、確認の意味も込めて、2004年の小泉発言をふり返っておきましょう。

小泉さんの「人生いろいろ」は、現行国会における8番目の「人生いろいろ」です。

次の質問に対する答弁で出てきました。質問者は、民主党の岡田克也委員です。

関連するくだりのみを抜粋します。

○岡田委員 (略)時間が限られておりますから、最後、総理、数日来、総理御自身の厚生年金の問題が取り上げられています。
私は、総理はこの際ちゃんと謝った方がいいと思うんですよ。いろいろ言いわけしているのは見苦しいですよ、日本国総理大臣として。普通の人ならいいですよ。日本国総理大臣が厚生年金制度を、実態はないのに、それを利用して、年金としての資格に入っていた、やがては給付も受ける。やはりこれはどう考えてもまずいですよ。ですから、私はちゃんと謝られた方がいいと思いますよ。いかがですか。

○小泉内閣総理大臣 三十五年ほど前の、しかも議員になる前のことで、私は、何がおかしいのか、いまだにこれを問題にする方がおかしいと思っています。何のために私が謝らなきゃいけないのかも理解に苦しんでおります。

からの

(中略)そして、社員はこうだと言いますけれども、人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろです

でした。

答弁はこう続きます。

全部社員が同じように、一定の時間に会社に出て、一定の時間に会社を退出して、そして机を並べている社員も多いでしょう。しかし、うちにいてもいいよ、あるいは、海外旅行してもいいですよという会社もあるんです。それでも社員です。恐らく岡田さんの関係の会社だって、全部社員が同じように働いているという社員ばかりじゃないと思いますよ。

私が落選中に極めて太っ腹の人情味のある社長さんにめぐり会って、ああ、小泉君、一回ぐらい選挙に落ちてくじけちゃだめだ、私も応援してあげるからと、そういうことで、あなたの仕事は次の選挙で当選することだと言って、極めてありがたい言葉をもらって、熱心に応援してくれたんです。そういう極めて善意の、見返りを求めない貴重な人々の支援があったからこそ私の今日があるのであって、今でも私はその社長さんに感謝しております。

こういうことについて、何らやましいこともないし、何で謝らなきゃなんないのか。しかも、三十五年前のことが今のこの国会でそんなに議論しなきゃならない問題なのか、私は理解に苦しんでおります。

これに対し、岡田克也委員は

だけれども、これは、厚生年金制度という国の立派な制度を、それを活用して、そして本来入ってはならない人が入ったという事件ですよ。

もし、総理がそういうふうに開き直れば、これから同じような、日本国民がこういった厚生年金制度を利用して、例えば、自営業の人が籍だけ会社に置いて厚生年金に入る、入りたい人はいっぱいいますよ、有利ですから。そういうことに対してノーと言えるんですか。国の制度の根幹が揺らぎますよ。それが総理大臣の言うことですか。

と食い下がりますが、残念ながらここで時間となってしまいました。

出典:衆議院・第159回国会 決算行政監視委員会 第7号(2004/06/02)

この「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」発言が盛大に「炎上」したのは記憶に新しいところです。国会会議録でも実に2年半ほど、火種を残してくすぶり続けていました。気が向いたら別途詳述します。

#06:2003年の「人生いろいろ」 by 山谷えり子

実は既に、小泉版「人生いろいろ」からさかのぼること1年ばかり、2003年5月に、衆議院の本会議で「人生いろいろ」発言をしている人がいました。

保守新党の山谷えり子衆議院議員です。

戦後6番目の「人生いろいろ」国会会議録からです。

本法案では、有期労働契約の契約期間の上限について、原則一年を三年に延長し、高度で専門的な知識等を有する労働者等については五年とするとともに、厚生労働大臣が有期労働契約の締結及び更新・雇いどめに関する基準を定めることとしております。

有期労働契約で仕事についておられる方々も、その理由はさまざまであります。私自身が働く方々の生の声をお聞きした中でも、本当は正社員になりたいと思いながらも有期労働契約で働いている方もおられる一方で、有期契約という働き方を積極的に選んでいる方も多くいらっしゃいます。

からの

まことに、人生いろいろ、働き方もいろいろの時代です。

でした。

出典:衆議院・第156回国会 本会議 第26号(2003/05/06)

先ほど見た小泉さんの発言「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」にそっくりです。

質問要旨

山谷議員の質問の主旨をまとめておくと

    <労働基準法の一部を改正する法律案に対して>

  • 解雇に関する基本的なルールについて、規定を創設することの意義
  • 解雇に関する裁判において労働者側に不利に働くのではないかとの懸念
  • 有期労働契約の契約期間の上限を延長するに際しても、合理的な理由もなく期間の定めのない社員を有期労働契約に切りかえることのないようにすることが必要

これらを質し、見解を問う内容の質問でした。

「人生いろいろ」パクった疑い

山谷えり子議員の質問をうけて答弁に立ったのが、この男です。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山谷議員にお答えいたします。
雇用のあり方についてでございます。

人生いろいろ!

まとめ

くり返しとなりますが、まとめておきます。

小泉純一郎さんの2004年6月の国会答弁

  • 人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ

には、「元ネタ」がありました。

2003年5月の衆議院本会議での山谷えり子議員の質疑に出てくる

  • まことに、人生いろいろ、働き方もいろいろの時代

です。

人生いろいろ!!

ご当地駅メロディー 京急青物横丁駅(下り)「人生いろいろ」|ご当地メロディー資料館(2013/08/04付)

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