理化学研究所が2005年に定めた「不正行為への対応方針」を読んでみた

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こんにちは。用件はタイトルのとおりです。

序・『背信の科学者たち』を読み返して発見

時事ネタに乗っかり、ブルーバックスの『背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか』(ブロード/ウェイド 牧野賢治訳, 2006)を読み返していました。

同書の末尾に「訳者解説」として「刊行後のミスコンダクト事情」というパートがあります。「ミスコンダクト」とは、科学研究における不正行為を指す言葉です。

そこに「理化学研究所事件」としてこんな記述がありました(pp.329-330)。以前は読み飛ばしてたか、読んだのに忘れてたかして、へぇーとなりました。

理化学研究所事件―「訳者解説」より

補足等をはさみながら引用します。

 日本を代表する大規模な研究機関であり、かつて「科学者の楽園」とまでいわれた理化学研究所でもミスコンダクトは起こった。

マジすか。てか、部外者には理化学研究所に対するこの形容のされ方も新鮮。

そのショックは大きく、同研究所がすばやい対応策を講じたのは当然であった。

<不正の概要>

 二〇〇四年一二月二四日の理研の発表によると、データが改ざんされたのは、研究員二人(略)が関わった研究論文三本(略)。アメリカの科学誌に掲載された血液の血小板の形成メカニズムに関する論文などだった。

※注 ただしこの記者発表は、裁判での和解により2010年に取り消されています。(Wikipedia 理化学研究所による)

<発覚後の経過>

所内の調査委員会に対して二人は改ざんを認めた。二人は辞職し、論文は取り下げられた。

<組織としての対応1>

 この事件を契機に、同研究所は二〇〇五年四月、所内に論文不正など不祥事を扱う「監査・コンプライアンス室」を新設した。

この組織は現在も存続しているようです。理化学研究所のサイトを見てみると「公的研究費の不正行為に関する通報窓口」(http://www.riken.jp/about/reports/guidelines/ より)となっていました。

ただリンク先を見てみたらもっぱらカネの話で、研究自体の不正とは若干スコープが違っていそうです。

<組織としての対応2>

二〇〇五年一一月には、(略)「科学研究における不正行為とその防止に対する」声明を発表

さらに同年一二月には「科学研究上の不正行為の基本的対応方針」を制定した。

へぇーそうなんだ。

文書拾い読みシリーズ:理化学研究所編

というわけで読んでみました。

抜粋して引用します。文書整形目的の改行は取っています。

出所に関しては後述します。

理化学研究所「科学研究上の不正行為の基本的対応方針」(2005)

「1.はじめに」より

科学研究上の不正行為は、科学者として倫理にもとる行為であり、それゆえ、これを行った研究者は倫理的に非難される。しかも、これにとどまらず、独立行政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)に所属する研究者が不正行為を行うことは、職員の体面を汚すとともに、研究所に対する名誉と信用を著しく傷つけることにより、研究所に重大な損害を与えるものである。

「2.研究不正」より

「研究不正」とは、科学研究上の不正行為であり、研究の提案、実行、見直し及び研究結果を報告する場合における、次に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は研究不正に含まないものとする。

これに続く記述で触れられていますが、米国の科学技術政策局(OSTP:Office of Science and Technology Policy)による定義に準じています。具体的には次のとおりです。

(1)捏造(fabrication):データや実験結果を作り上げ、それらを記録または報告すること。
(2)改ざん(falsification):研究試料・機材・過程に小細工を加えたり、データや研究結果を変えたり省略することにより、研究を正しく行わないこと。
(3)盗用(plagiarism):他人の考え、作業内容、結果や文章を適切な了承なしに流用すること。

うん。これはいかんよね。

「6-5 研究不正が認定された場合の対応措置」より

6-5-1 研究不正の認定を受けた者の処分
理事長は、調査委員会の調査結果に基づき、被疑者の研究不正の事実を認定したときは、所内規程に基づき設置された懲戒委員会の議を経て、研究不正の認定を受けた者(以下「不正認定者」という。)の処分を決定する。

理研にはぜひとも、この規定を発動させてほしいところであります。

理化学研究所「科学研究における不正行為とその防止に関する声明」(2005)

研究における不正行為は、研究者に社会が託した夢と信頼を裏切る行為であり、科学に対する裏切り行為であるとともに、研究者自身の自殺的行為であると極言できる。

そうですね。

理化学研究所の研究者一人ひとりが、このような不正行為に陥ることのないよう、厳しく自らを律するとともに、他者にその疑いがある場合に、すみやかに適切な対応をなし、不正行為を未然に防ぐ努力をなすべきである。

科学研究の不正は科学者に対して社会から託された夢と希望を自ら踏みにじる行為であること

ほんとだね。そのとおりだね。

出所・その他関連情報

出所

こちらです。

文書タイトルをサイト内検索して、ようやく見つけられました。

いいこと書いてある文書なのに、理研のサイトのトップからはたどれませんでした。

関連情報

昨今話題の案件に関する僕の情報源は、ほぼ全部こちらです。

小保方晴子 (おぼかたはるこ、1983年生 )氏は、日本の細胞生物学者。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・細胞リプログラミング研究ユニット・ユニットリーダー。弱酸などの外部刺激で体細胞を初期化することにより、胎盤組織を含む全ての生体組織分化できる多能性を持った細胞(STAP細胞)の作製方法を世界で初めて発表した。しかし、彼女の論文には不適切なデータの処理・加工・流用、そして、文章の剽窃などが認められることから、その研究内容の正確性に疑惑が向けられている。

心証として、これらで指摘されているとおりなのだろうなという感想を持っています。細かく理解する努力はしていません。

私の雑な科学論

悪を予言することではなく、よりよい世界のために戦うことがわれわれの義務である。

カール・R・ポパー(1902-1994)

フレームワークの神話―科学と合理性の擁護』(1998)の序文にある言葉です。

僕にとって科学とは、全能ではなくとも、相当程度に信頼を置けるものです。そこではポパーの言う「反証可能性」が担保されているからです。

上のポパーの言葉の限りにおいて、僕は「われわれ」の一員です。科学者ですし、科学者でいたいです。

ですから、科学研究の内容(コンテンツ)は間違っていてもいいですが、方法(メソッド)や手続き(プロシージャー)に不正があることは致命的です。

不備だらけのおぼこい方法で生み出されたコンテンツは無価値です。時にむしろ有害です。

「不備だらけのおぼこい方法」、当ブログではこれを略して、おぼ方と呼んでおきます。

ご静聴ありがとうございました。

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