CM「新しくなったWindows 研修医篇」の引っかかる日本語・トップ4

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こんにちは。

日本の田舎者がコップの中で嵐を起こす試みです。

この記事ですること

マイクロソフト「新しくなったWindows 研修医篇」のCMについて、「引っかかる日本語フレーズ」をカウントダウン方式で紹介します。全部で4つあります。

このCMに引っかかる点についての、最もレベルの低い議論です。

はじめに

「新しくなったWindows」のCMシリーズが、ツイッターでは不評の嵐らしいです。

僕は特に不快感は覚えませんが、不自然なセリフ回しへの違和感はあります。

そこでこの記事では、最も低レベルな話として、シリーズの「研修医篇」から引っかかる日本語フレーズを取り上げます。

なおネタばらしするのもダサダサですけれども、この記事も当該CMのセリフの組み立てと同じスタイルを意識的に取り入れて書いてみました。(伝わっている気はしませんが)

「研修医篇」文字起こし

検討対象はこちらです。

YouTube にある動画をベースに、「研修医篇」のセリフを文字テキストにしてみました。※下線は引用者

新しくなった Windows: 「研修医」篇(2013/12/15)

正直緊急事態でした。

医学部の研修に、Office が使えるキーボード付きのラップトップが必要で。でもSNS用にタブレットも欲しい。お金だってない

2014-01-05_1241

それでこの2 in 1 にしたの。

新しいWindows も入っていて、まさに一つ二役、同時にだって使えちゃう。これがあれば、仕事も遊びも余裕です。

(呼び出し音)行かなくちゃ

引っかかるのは、下線を引いた4か所です。

引っかかる日本語カウントダウン

以下、カウントダウン方式で自分の違和感を説明します。

第4位「キーボード付きのラップトップ」

冗長に感じます。僕の常識では、ラップトップには全てキーボードが付いているからです。

キーボードの付いていないラップトップを、僕は知りません。

第3位「医学部の研修」

医療関係者とおぼしき方の「こんな言葉は使わない」というツッコミをネットで見かけました。

医学部に近い人にとって非現実な語法なのかもしれませんが、僕にとってこのフレーズ自体は問題ありません。僕が知らないだけかもしれず、その意味ではあってもいいフレーズだからです。

問題なのは、映像との不一致です。

この映像では、話し手が医学部生にも見えないし、大学病院だとか何か医学部と関わりのありそうなポジションに就いている人だと想像するのも難しいです。

ということで、セリフが人物と合っていません。

第2位「一つ二役」

「一つ」という数詞が抽象的すぎて、引っかかります。「一台二役」と言えばいいのに。

「一?二役」を考える

「一?二役」という形式の語句で、現段階で僕が違和感なく見聞きできるものを挙げると、この2つです。

  • 一人二役
  • 一台二役

「二役」がどういうものか、具体的ではないながら一定の範囲内で想像できるからです。

それは「人」なら何らかの役柄であり、「台」なら何らかの機能・役割です。

他の用例を探してみた

日本語話者は、ほかに「一?二役」の「一?」に何を入れているんだろうか。そう思って用例を探してみると、検索結果の上位何十件の中にこんなのもありました。

  • 一枚二役
  • 一皿二役
  • 一本二役

もやもやする

使い方として間違っているわけではありません。しかし、どこかもやもやします。

なんでもやっとするのか考えてみました。なぜならそれは、表現として「人」「台」と比較したとき、形式上は同じであるにもかかわらず、情報量がえらく少ないからです。

それが何らかの「二役」を果たすからそう書いているのでしょうけれども、僕はその2つが何なのか、これだけではまったく想像がつきません。

「一?二役」っていうけど、その二役ってなに?

そんな、もやもやする具体的な用例へのリンクを張っておきます。

これらの文言から、「二役」の正体をうかがい知ることはできませんでした。

ただし最後の例は、よく読めば「二役」が「ライト」と「傘」であるとわかりました。すぐに読み取れなかったのは、きっと取り合わせが斬新すぎたせいです。

あとの例も、リンク先をもっと読めばわかるのかもしれませんが、未読です。

おことわり

なお、「枚」「本」と数えている物体が何であるかが具体的に示されていたことで、「二役」が想像できた用例があったことも付け加えておきます。ここでは意図的に除外しております。

「一つ二役」のわかりにくさ

さて、「一つ二役」です。使っている数詞が個数を表す「つ」です。

自分にとって「一?二役」に入ることに何ら違和感のない「人」「台」はむろんのこと、いまひとつ情報量に乏しい「枚」「皿」「本」と比べても、使用範囲が広いゆえに一段と抽象的です。

そのため、「一つ」に対してはことさら「二役」のイメージがしづらいです。

ここではWindows 搭載機器のことを言っているのですから、ベタに「台」でいいと思うのです。

第1位「お金だってない」

いちばんおかしいです。あとの3つは言いがかりと片づける人がいてもいいですが、これだけは譲れません。

日本語として論理が狂っています。ここでなにゆえに、「お金」と「ない」を「だって」でつなぐのでしょうか。

せめて「お金もない」と言ってほしいです。

「お金もない」でも文脈上の不自然さはまだ残りますが、辛うじて容認できます。正直そう思います。

「同時にだって使えちゃう」は問題ない

このCMには、もう1か所「だって」が使われています。「同時にだって使えちゃう」です。こちらは特に問題ありません。

2 in 1の一般的と思われる使い方、すなわち、同じ1台を仕事用・遊び用みたいに切り替えて使うだけでなく、「同時にだって使えちゃう」という意味だろうからです。

「それってセキュリティ的にどうなのよ」みたいな使い方としての是非は別問題として、意味は通じます。

「だって」を辞書で引いてみた

「お金だってない」が日本語として成立しうるのか疑問に感じ、いくつかの国語辞典で「だって」を引いてみました。

「だって」はいくつかの品詞に分類でき、それぞれに意味と使い方があります。

しかしそのどれを選んでも、「お金だってない」の意味は通じません。

意味が通じません(1)

その登場する位置と前後の語句のつながりから判断すれば、ここでの「だって」は、副助詞としての次の説明が最も近いと思われます。

4)《最小を表す語に付いて、下に打ち消しの語を伴って》全面的否定を表す。…も。(略)「わずかだってミスは許されない」(明鏡国語辞典)

ですがここに、《下に打ち消しの語を伴って》いる「お金だってない」を当てはめて考えてみると、おかしなことになります。

この用例での「お金」が、《最小を表す語》ではないからです。

もっとランクの高い制約では?

「お金だってない」と言明した場合、この話し手にとって

  • お金は「ない」ものの1つである。
  • お金だけでなく、ほかにも「ない」ものがたくさんある。

そういう含意があります。

しかし、デバイスを選ぶ場合の制約条件として考えるならば、「お金」は間違っても最小最低ランクのものではないはずです。

お金があれば、少なくとも現代の日本ではどんな端末でも手に入るでしょうし、極論すれば、お金があるのなら、あとの「ない」ものもたいてい何とかなります。

したがって「お金だってない」では意味が通じません。

意味が通じません(2)

あるいは別の辞書では、こう説明されています。
※用例は一部のみをピックアップしています。また、省略表記を「だって」に復元しました。

二)[疑問・(最小単位)を表わす語に付いて]例外無くそうであることを表わす。「彼はいつだって家に居ない・一日だって休んだことは無い・一円だって借りはしない」(新明解国語辞典 第四版)

こちらの意味を「お金だってない」に当てはめようとしても、おかしなことになります。《例外無くそうである》ことが何なのか、意味不明になるからです。

そうであるのは「お金がない」こと? 例外なく?? 意味不明です。

そして「お金だってない」を「一円も持っていない」といった「一文なし」的な意味に解釈するのにも、無理があります。

以上のように、辞書にいくつかある「だって」の説明のうち、最も近いと思われるもの「だって」、「お金だってない」に当てはめると論理が狂い、意味が通じなくなります。

この文脈での「お金だってない」は狂った日本語です。

最大限好意的にとっても、言葉足らずすぎる

どうしても「お金だってない」を使いたいなら、たとえば、

ラップトップとタブレットの両方持てばいいって? そんないっぺんに持ち歩けない。置く場所もない。お金だってない。

のような具合にすれば、「お金だってない」でも意味は通じます。こう使えば、「だって」がこちらの意味にスライドするからです。

3)《高い価値を表す語に付いて》反論の気持ちを伴って、文意を強める。…(さえ)も。(略)「うそだ、決定的な証拠だってあるぞ」(明鏡国語辞典)

作例での文脈ならば、「お金」が《高い価値を表す語》になります。岸部四郎さんの「カネしかないな!」をこの世の至言と崇めている僕にとって、非常にナチュラルです。

しかし受け手側に、元のセリフから上の作例に挙げたような情報まで補ってやる義務はありません。

言葉が足りなすぎます。

(2014/01/12 追記)伏線は「緊急事態」

ツイッターでこのようなリプライをいただきました。

なるほどそう読めば意味は通じますね。少し楽になりました。ありがとうございます。

緊急企画:「緊急事態」を考える

自分がなぜそう読めなかったのか、少し考えてみました。

どうやら「緊急事態」という言葉の「事態」の側の重さに惑わされていたからだと言えそうです。

「緊急事態」は「時間がない」

言われてみれば、「緊急事態」を緊急事態たらしめている要件は「時間がないこと」です。

仮に「緊急事態」という事態から「時間がない」を取り去ってみましょう。

よくよく考えてみると、それは「緊急事態」ではありません。

しかし今までの自分は、そんな「時間ならある」事態も緊急事態の範囲に入れていたように思います。

考察:「緊急事態」とは「時間がないこと」なのか?

「緊急事態」から「時間がない」を除くと「緊急事態」ではなくなります。

では「緊急事態」とは「時間がない」ことなのでしょうか。

どうもそうではなさそうです。「時間がない」だけでは、緊急事態にはなりづらいからです。

緊急事態と言いづらい例:卓球

卓球を例に考えるとわかります。

松下浩二選手や福原愛選手クラスから、へっぽこ温泉卓球まで、レベルに大きな開きはありますが、やって来た球を「今」打ち返さなければいけないことは同じです。

正直緊急事態です。

しかし僕はそれを、緊急事態と思ったことはありません。

「緊急事態」まとめ

以上から、このように言えそうです。

「緊急事態」の特徴
  1. 緊急事態を緊急事態たらしめているのは「時間がない」。
  2. しかし「時間がない」だけでは緊急事態ではない。
「緊急事態」の条件
  1. 時間がないこと
  2. 加えて、何か重大な事態が存在すること

改善私案

正直緊急事態でした。

という冒頭のセリフは、伏線として「時間がない」を示唆する役目があるようです。

しかしその後で「事態」の説明ばかり続くため、僕は大事なのは「緊急」ではなく「事態」と無意識に解釈して、「お金だってない」にまでその伏線がつながってきませんでした。

あるいは「お金だってない」も、緊急事態の一部、その「事態」のひとつと受け取っていたとも言えそうです。

伏線としての「時間がない」を「お金だってない」と対比させるならば、個人的には冒頭で「事態」には触れずに

正直緊急でした。

にしておくと、まだ「お金だってない」へのつながりを感じ取れるようになるかなという気がします。

以上緊急にまとめてみました。
(2014/01/12 追記 ここまで)

まとめ

というわけで、「新しくなったWindows 研修医篇」のCMは、日本語の言葉遣いがいろいろおかしいです。

以上、レベルの低い議論でした。

次回予告的な+関連記事紹介

さしずめ、ひとり模擬法廷のリーガル・ハイごっこになりそうですが、別記事で「弁護側の陳述」を行う予定でいます。

なおこのCMに関するハイレベルな議論については、意外!マイクロソフト「新しくなったWindows」のCMがアレな理由を調べてみたら、想像以上だった(2014/01/03)に書いております。よろしければそちらもご参照ください。

つづく。

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コメント

  1. GDN より:

    あんたの批判の方が日本語としてもっとおかしい。

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