【ダイジェスト】百田尚樹と対決!(2)(林修先生の今やる!ハイスクール 2013年12月13日OA)

こんばんは。林修ナイトの時間です。

「林修先生の今やる!ハイスクール」のスペシャルのダイジェストです。(1)のつづきです。

「書店に平置きされても平均で1週間」から「作家にとって書店員は命」という話です。

百田尚樹が教える「百田流・ベストセラー小説の作り方講座」(つづき)

作家にとって書店員は命

ナレーション)打ちひしがれる林君に、うれしい情報が

百田「ですからね、書店員も、やっぱりねみんな本が好きな人ですからね。売れる本はもちろん並べたい。それとはまた別に、この本は売れにくいかもしれないけど、私はこの本を売りたいと、この本の良さを読者に届けたいと、そういう熱い思いの書店員の方たくさんいらっしゃるんで、そういう書店員に巡り会うと、平台に置かれる可能性が高いですね」

百田「いま全国でね、カリスマ書店員という方がいらっしゃいまして、書店員のあいだでけっこう有名な書店員とかね、あるいはほんとにすごい本の好きな人、書評家とかから、あの何々書店の何々さんは有名やとかね、そういうカリスマ書店員なんかががんばってね、この本はいいって熱いポップを書いてくれたりして、ボーンてやると、それで売れたりするんですね」

百田「たとえば岩手県にさわや書店ちゅう書店、小さな書店があるんですよ。そこは全国で売れなかった本を、この本がいいんだゆうて、その本を自分とこの店で大々的に宣伝して売りまくって、そっから火がついて全国的なベストセラーになったっていうような、そんな店もあるんですよ」

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松久淳+田中渉『天国の本屋』がその1つみたいです。

2000年12月の発売後、びた一文反応がなかったのですが、2002年夏、この本を気に入ってくださった、盛岡にある「さわや書店」の伊藤店長の後押しから火がついて、おかげさまでたくさんの方に読んでいただいています。

松久淳オフィシャルサイト>「天国の本屋」より

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百田「そうすると、50万部100万部売った本の中にも、実はその大もとを正せば、1人の書店員が積極的に売って売って売って売りまくって、それがどんどんどんどん火が広がるようにして売れて、50万100万になったいう本もあるんです」

「本屋界の野村再生工場みたいですね」

伊集院「その書店員の方のリストいただけませんか。全員にお中元を、お歳暮と」

百田「終わってから」

今やる!課外授業 “本の再生工場”さわや書店に潜入

さわや書店フェザン店(岩手県盛岡市)へ

ナレーション)まずは、本が売れないという今の出版業界について聞いてみた

店長・田口幹人さん「売れないんじゃないんですよね。売ってないだけなんですよ。店頭で出会うってほんとに、ある意味ちょっとした奇跡みたいな感じなんですよね」

ナレーション)店長は、365日、毎日欠かさず本を読みまくる。そして、これは面白いと思った本は、徹底的に宣伝する。その象徴となるのが、この巨大POP。いかに面白いかを説明しようとすると、ついつい、こんなPOPになってしまうんだとか。そもそも、『永遠の0』も、ヒットする前から、さわや書店さんは大々的に宣伝していたんです。こんな熱いPOPを見ると、確かに、買って読んでみたくなる気持ちが、よーくわかります

田口さん「本って、全部そうだと思うんですけども、必要とされていない本なんてほとんどないんだと思いますね。いつか、誰かがこの本を必要としてくれるんだと、僕らは信じて、本を売ってますね」

書店ではPOPも要チェック

林くんの質問:小説家自身も営業活動をする?

「先生はご自身が、営業とかされたんですか?」

百田「私今でも営業しますよ。はい。私はだから本を書くより営業の方が多いかなっていうぐらい、営業する」

伊集院「どんなことするんですか?」

百田「あのねぇ、僕がいちばん最初『永遠の0』を出したときは、出版社がプルーフって見本本を作ってくれたんです。これを持って、東京と大阪の書店に回って、実は私今度こういうもんで、こんな本を出すことになりまして、よかったら読んでくださいいうて、一生懸命いろんなとこ回って、書店員に本の説明をして、なんとか話を聞いてくださいいうて、読んでもらったんですよ」

百田「ほんでね、本(のところ)に行ってなんぼでもサインしますってぶわー全部サインしてね、サインした本は返本できませんからね」

「あ、そうか。なるほど」

百田「そうそう。サインしたら返本できない。だから私なんか1回行ったらもうとことんサインしますからね」

「今日いちばん参考になった情報です。ありがとうございます」

作家とお金:3)本の値段の決め方を学びましょう

印税だけで生活するのは厳しい…

百田「実は、本屋っていうのは、基本的にはね、重版されないもんだとみな思って出してるんです。ですからほとんどは、最初本を出すときには初版で勝負なんですね。で初版でだいたい7割ぐらい売れたら、なんとか損益分岐点をクリアということで。そうすると、7割売れた時点でなんとかクリアできる、その値段を付けるんです」

百田「林君なんかも、本をいっぱい出されてますけど、次の本を出すためには、今の本を売らなあかんのです。今の本が売れないと、次の本の初版が減らされるんです」

「たしかにそんな気配は感じてます」

百田「だから1回1回が勝負なんですよ。厳しい」

伊集院くんの質問:百田先生の初版発行部数はどれくらい?

百田「そうですね、今月私、『幸福な生活』っていう文庫が出るんですけど、この初版は23万部」

伊集院「これすごいんですよ。ほんとにすごいんです。僕こないだ出したやつ、お願いだからって言って4000やっとですから。それでもいい方ですよタレント本で4千5千刷ってもらうって」

ナレーション)本の値段は、初版部数の数で決まります

4)定価1500円の本の印税は 150円

ナレーション)ではここから、実際に作家さんの取り分、印税について学んでいきましょう

百田「でもね、この10%ではね、作家生活できないですよ。ほんとに。伊集院君がね、先ほどがんばって4000と言いましたね。定価なんぼですか? まあ1000円としましょう。そうすると、100円ですから、4000部刷ると40万円ですよね。厳しいですよね40万じゃね」

伊集院「それがもし本業ならば。僕はタレント業がメインだからまだいいですけど」

百田「その本書くのに3か月間仕事さぼってやったら、えらいことになりますよね。嫁さんに怒られますよね」

ナレーション)現在、本は1万部売れれば大ヒットと言われている。しかし、1万部売れたとしても、作家の手元に入る印税は100万円。これだけで生活するのは厳しいのが現状

ナレーション)そこで、作家として生計を立てるのに重要なポイントとなってくるのが、雑誌などでの連載のギャラ

百田「平均するとです。平均すると文芸誌の場合は、1枚あたり5000円ぐらいとみてください。そうするとね1か月に1回月刊誌に連載すると、1回50枚書いたとしたら、だいたい25万ぐらい入ります。1年続けるとかける12やから300万円入ります。でこの300万円ていうのは、作家にとってはものすごく大きいんです。ところが厄介なのは、連載は有名作家でないとやらせてもらえないとこなんです」

伊集院「その立場まで行くのがもう大変と」

林くんの質問:賞を取れば爆発的に売れる?

「先生本屋大賞も取られましたけど、賞を取るとやっぱりバーンていくもんですか?」

百田「賞を取ると、はっきり言って売れます。今いちばん売れるのは、本屋大賞です。私もこの今回『海賊と呼ばれた男』これで今年の本屋大賞いただいたんですけど、いま本屋大賞取ると、だいたい100万部売れます」

百田「以前はね、いちばん売れる賞は直木賞やったんです。でも今直木賞を取っても10万部から4、50万部というとこですかね」

百田「ただね、この賞なんですけど、賞に騙されてほしくないっちゅうのがあってね、実は、文学賞というのはからくりがありまして、この受賞作はほとんどは、その文学賞を主催している出版社の作品なんです。ですからたとえばこの10年間でね、見ますと、直木賞は文藝春秋がやってますけど、文藝春秋社の作品の受賞率が5割8分3厘。全部で24作品受賞してるんですが、そのうち文春の本が14作取ってるんです」

百田「賞を取ると売れる。ですから、今本がどんどんどんどん売れなくなってるんで、出版社も、自社本に賞を与えるわけです。そうすると売れますからね。僕こんなこと言うたらね、2度と、賞をもらえません」

林くんの質問:映画化された時の原作料はいくら?

「もうひとついいですか。映画化されると、そのときの原作料ってのはどのぐらいになるんですかね?」

百田「これが低い。これがもう情けないぐらい低い。これがハリウッドですとね、原作料だけで1億円2億円です。ところが、ほんまに日本の場合はね、言えないですけど、びっくりするぐらい安いですわ」

「じゃあおっしゃってください」

百田「そうですね、数十万から200万300万の間ですね」

宇佐美「なんでそんなに安いんですか?」

百田「あのねぇ、映画は、リスクも高い。1億2億の映画でもコケる場合もありますから、そういうときに原作にまでお金を払ってられないという事情もあります。あともうひとつはね、日本の場合は、映画化されると、あるいはドラマ化されると、それで本がすっごい売れるんです。最近では半沢直樹ね。あの『(オレたち)バブル入行組』それから『オレたち花のバブル(組)』、あれもね今から10年以上前に文庫になっているんですけど、言うたら悪いんですけど、それほどは売れてなかったんです、ずっとね。ところが、ドラマ半沢直樹が当たったとたんに、いきなり100万部ですわ。バーン。わずか1か月で100万部」

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「10年以上前」は不正確です。books.bunshun.jp によると、発売年月は次のとおりでした。

池井戸潤『オレたちバブル入行組』
単行本:2004年12月 文庫本:2007年12月

池井戸潤『オレたち花のバブル組』
単行本:2008年6月 文庫本:2010年12月
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百田「出版社も著者も、映画化してもらえると売れるんで、ありがとうございましたーいうてね」

2.百田流!売れる一行目の書き方

百田「これはね、私自身もいまだに正解出ないんですけど、とにかく小説は、一行目がもうすっごい大事です。テレビでもそうです。最初のアバン(=アバンタイトル)、これでつかめなかったら視聴率が取れない」

百田「読者は本屋で立ち読みしたときにね、最初のページをパッと開いて、その最初の一行目で魅力がなかったら、そのあと手にとってもらえないとこがあるんで」

「僕授業でも文学とか出てくるんで、生徒に言うんですけど、一行目は作家が命がけで書いてくるからまずそれを受け止めろと、そこでズバンとくるやつを読みなさいと」

百田「そうですね。ほんとにもう一行目はそういう意味ではほんとに考えます。全部書き終えてからもっかい一行目直すときありますから」

ナレーション)小説は冒頭が面白くなければ読んでもらえない、というのが百田流の書き方

実際の冒頭

『永遠の0』(2006)

ナレーション)百田先生は、死を覚悟した鬼気迫る零戦パイロットの執念を冒頭で伝えたかった。その冒頭がこちら

 あれはたしか終戦直前だった。正確な日付は覚えていない。しかしあのゼロだけは忘れない。悪魔のようなゼロだった。

ナレーション)生き残った米軍兵士の言葉から始めることで、インパクトをつけたのだ

『影法師』(2010)

百田「一発目にやっぱり読者にショックを与えたい。そうしたときに主人公がね、最初の一行目で死んでたと、いうふうにして、そっから物語が始まっている。いったいなんで死んだんだ」

「磯貝彦四郎殿は亡くなっておられました」

『モンスター』(2010)を例題に冒頭を書こう

あらすじ)醜い容姿の女が整形を繰り返し絶世の美女に 生まれ育った町に戻り、復讐を遂げていく

ナレーション)実際の冒頭は、美しく変身した女性が町に戻ってくるシーンから始まる。このシーンを描写した百田先生の冒頭がこちら

 女が屋根のないプラットホームに降り立った時、ホームで水を打っていた中年の駅長は思わず手を止めて女を見た。

百田「ですからね、女の描写は一切ないんです。ただ駅長が、は、と手を止めて見てると。まずそこに一切女の、どういう容姿か書いていないんですが、そこで読者は、どんな女やろこれはと、なぜ手を止めたんだろうと。そして22年間ずーっといろんな人の顔を見てるけど、はじめて見るなあ、というそういうミステリアスな雰囲気を出そうとしたんです」

「なるほどー。主人公をあえて主語に持ってこないって、これでも冒険ですよね」

『モンスター』の冒頭に挑戦する2人

伊集院光の『モンスター』

駅員は私を見ていた
20年前もそうしていたが
意味は真逆だ
あの時はこう思っていたはず…
「醜い女め
早く私の前から消えろ」
同じ頃、同じ視線を
刺してきたこの町の連中に
裁きを下すために私は帰ったのだ

百田「いやいや、いいじゃないですか」

伊集院「勉強の方法として、自分の知ってるストーリーの頭をキャッチーに書いてみようみたいのって、勉強になりそうですね」

百田「そうですね。発想の転換になりますわね。新たな、ふだん使わない脳みそ使いますよね」

「…僕ね文章書くときはほんと真剣になるんですよ」

百田「わかります。顔つきがもう全然違います。さっきはええ加減に仕事しとりましたけどね」

林修の『モンスター』

久々のホームに
驚くほど懐かしさを感じなかった
ホームの空気は
変わったのだろうか…
駅員が自分を見ている
軽く微笑み返す
その下にうまく隠した
氷を意識した

百田「うまー。いや、うまい」

百田「お二人とも僕よりうまい。お二人の本はいきなりね、僕よりストレートにズーンと入ってくるんで」

「いえいえいえ。完敗です」

百田「最初から復讐のにおいがお二人ともするんで。今の短いので、物語の構造が全部見えましたね」

つづく

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