アンドレ・モロワの「初恋」(1956)、現代日本の二次元ブームと熟女ブームを予言か?

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こんにちは。出典調査報告から記事を分けました。

ひとつ前の【出典情報#1】初恋は、男の一生を左右する(アンドレ・モロワ)から派生した、スピンオフ記事の位置づけです。

「初恋」とは

上の記事のくり返しとなりますが、1956年に出版されたアンドレ・モロワのエッセイ集『Lettres à l’inconnue』に収められている一編です。原題は「Le Premier Amour」です。

この冒頭に、「初恋は、男の一生を左右する(Le premier amour marque un homme pour la vie.)」という「名言」があります。

ある意味予言だった「初恋」

この「初恋」ですが、50年以上前に書かれたにもかかわらず、一部はとても現代的でした。

現代日本の風潮に近づけた読み方をすると、あたかもモロワが、昨今の「二次元しか愛せない男」や、「熟女好きの男」「年下好きの女」の台頭を予見していたかのようです。

面白かったくだりを引用します。引用元のテキストは、アンドレ・モーロワ『愛に生きるとき―未知の女性への手紙』です(谷長茂訳)。

「二次元」に走る男

 初恋で不幸な目にあった男はおうおうにして、詩的で愛情がこまやかで、生娘(きむすめ)でありながら母性的で、かわゆくて官能的でもあり、ものわかりがよくて従順な、そんな女性を生涯夢みがちです。(p.244)

現実の、不完全な、複雑ではあるがいきいきとした女を受けいれないで、かれはロマン派の詩人の口にするような天使をもとめ、野獣と化しているのです。(p.244)

そうした男の受け皿役は、今日び「二次元」の業界が担っているように思われます。

「熟女好き」の男・「年下好き」の女

また、こんなくだりもありました。

 ときには、おなじ年ごろの女性に失望した青年が四十女のほうへむかうことがあります。(p.244)

「あるある」ですね。

ただし僕自身は、単に当事者が顕在化させていなかっただけで、好んで「四十女のほうへむかう」青年層は当時も一定数存在していたとみています。

前にはこんな記事も書きました。

今よりもアブノーマルな嗜好と見なされる傾向が強かったために、本音では「おなじ年ごろの女性」など、はなから相手にしたくないにもかかわらず、同世代の異性に希望を持っているフリをしていたのが実状だったのではなかろうか。そんな見立てです。

けっこうなツンデレ

話を戻します。引用つづきです。

彼女の恋には、母性愛のえも言われない要素が混りこんでいるところから、青年をやさしく迎えてくれることでしょう。また、年うえであり、すぐにも老年に到達する運命を自覚している彼女は、青年をひきとめるためにはたいへんな努力を払うことでしょうから、やさしくないはずはありません。(p.244)

さらっとしたトーンで書いてありますが、読み方によっては、過酷な現実を突きつけていて、相当に身もふたもないです。

でもって、

三十五歳か四十歳の女性は、世間のことも自分の障害物のことにも無知な若い娘より、人生においては、はるかに安定したガイドであることを付言しておきましょう。(p.245)

と、いったんは持ち上げておいてからの、

 だが、こういった男女の仲での均衡は、のちのちまでも維持してゆくには困難をともないます。幸福という点からしますと、ほぼ同世代で、男のほうがすこし年上で、ふたりとも誠実に、(略)どちらにも腹臓(ふくぞう)のない夫婦にまさるものはありません。(p.245)

という着地です。

はじめは「男の一生を左右する」話だったはずが、いつのまにか、「四十女」に対しての結構なツンデレとなっておりました。

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