【出典情報#13】女は初めて出来た恋人をいつまでも離すまいとする。第二の恋人が出来ない限り。(ラ・ロシュフコー)

9月15日「あすなろラボ」での林修さんの恋愛論授業で使われた名言・格言の出典調査報告です。

一覧はポータルページにまとめています。他の名言はそちらからどうぞ。

名言(整理番号 13)

女は初めて出来た恋人をいつまでも離すまいとする。第二の恋人が出来ない限り。

フランスの文学者 ラ・ロシュフコー/La Rochefoucauld(1613-1680)

出典

授業内であったとおり『箴言集』にあります。箴言の396番目がそうです。

ただ、最も入手しやすい岩波文庫版を参照したところ、言い回しが違っていました。

この岩波文庫版(二宮フサ訳)から、該当の箴言を引用しておきます。

396. 女は最初の恋人を長いあいだ確保しておく、二人目を作らない限り。

ロシュフコーの箴言集には、ほかにも角川文庫版(吉川浩訳)など数パターンの翻訳があります。
(参考:翻訳作品集成>ラ・ロシュフコー

同一の文言がないか、追ってそれらにもあたります。

(2013/10/10追記)参考:その他の版での日本語訳

図書館を回って他の版も見てきました。元の文言に一番近いのはこれかなと思います。

女ははじめて想いをかけた男を、いつまでも離すまいとする、第二の恋人ができない限り
―『ラ・ロシュフコオ 箴言と考察』(内藤濯訳)

その他確認できたものを列挙しておきます。

女は長くその最初のひとをまもっている。第二の人ができない限り
―『格言集』(関根秀雄訳)

女は初恋の人をいつまでも離さぬ。二番目ができるまでは。
―『運と気まぐれに支配される人たち―ラ・ロシュフコー箴言集』(吉川浩訳)

女性は最初の恋人を離すまいとする。しかし、二人目の相手が現れてからは、次々と恋をするようになる。
―『新訳 ラ・ロシュフコー 賢者の言葉』(住友進訳)  

外国語版はニュアンスが違った

英訳、さらにフランス語の原文にあたると、ニュアンスが若干違っていました。日本語訳は「女」へ寄りすぎとも思えます。 

英訳

まず、英訳版です。Project Gutenberg「Reflections; or Sentences and Moral Maxims」からです。

396.—We keep our first lover for a long time—if we do not get a second.

直訳すると「われわれは最初の恋人を長いあいだキープする。二人目を得なければだが。」となります。

主語はWe です。「人はみな」という一般論のニュアンスで使っており、女性に限ってはいません。 

原文

Project Gutenberg の「RÉFLEXIONS OU SENTENCES ET MAXIMES MORALES(1664)」からです。

396

On garde longtemps son premier amant, quand on n’en prend point de second.

僕はあいにくフランス語をほとんど解しません。Google での仏英翻訳の結果からすると、「われわれは二人目を得ないときは、最初の恋人を長く確保する」ぐらいの意味でしょうか。

「女」に限定していいかは、やや疑問

日本語訳が「女」となったのは、原文でのamant(恋人)がフランス語では男性を意味するからなのでしょう。その人物が女性である場合は別の単語(maîtresse)を使うそうです。
(参考:仏和検索

けれども、英語のman が「男性」だけでなく、特に古い用法では「人間一般」をも意味するのと同じように(というか語源的にはそちらが先)、ここでのamant が、男女関係なく広く一般の「恋人」を意味している可能性はないのでしょうか。

そこは疑問が残ります。

検証するには、他の「女」が出てくる箴言についても原文と照らし合わしてみる必要がありそうです。しかし解明は後回しにして、現段階では疑問点を提示するのみにしておきます。

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